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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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魔法W杯 全日本編  第17章

大会まであと3日。

 俺たち正選手5人は、自主トレだけの休養日をもらい、サポーターとの意見交換日になった。

 デバイスを最終確認する作業もあるからだそうだ。

やっと、亜里沙と明の顔を見ることができた。八神絢人やがみけんとくんも一緒にいる。


「元気だったのか?亜里沙、明」

「もちろん。やんごとないことでカンヅメになってただけよ」

「僕もだ」

 よかった。声を聞く限りでは元気そうだ。

3人のサポーターは、僕たち5人と個々に話しあい、デバイスの調子を探っている。

 俺のデバイスは、マルチミラーとショットガンについては作製してもらったばかりだし、自分では違和感を感じなかったのだが、八神くんはショットガンに触るなり、首を捻った。

「八朔くん、これで充分?」

「うん、レギュラー魔法陣も撃てるしラナウェイでの足元攻撃も難無くできてる」

 

 八神くんは亜里沙に一声かけた。

「これ、見て」

「あらほんとだ。いつの間に」

「とにかく、早急に修正しないと。僕がやるから」

「お願い、あたしら今日もカンヅメだし」


 意味の分からない会話だが、どうやら俺のショットガンに修正個所が見つかったらしい。なので、ショットガンを八神くんに預けることにした。

「明日までには直すから。試射しないといけないし」

「分かった」

そういうと、八神くんはショットガンをカバンに仕舞った。その後、皆のデバイスを確認し終わってから、明が2個のゴールドバングルをカバンから出し、俺に手渡す。

「ほら、プラチナチェイスで使えよ」

 飛行魔法のための不可欠要素。

「ありがとう、今まで生徒会の物を使ってたから肩身が狭くて」

「一応実験済みだけど、お前に合うかどうか。今から外に出て飛んでみよう」

 俺と明はグラウンドに出た。

「今までのデバイスよりも高性能だから、具合悪くなるまで飛ぶなよ」

 

 俺は頷き、バングルを2個右腕に装着すると人さし指を下から上になぞった。

 ふわり。

 今までのデバイスよりも自然に、窮屈な感じもなく浮き上がれた。

 指を右に、左にと動かすと、身体が浮いたまま指先の方向に移動する。回転、上昇、下降、全て文句の付けどころが無いチューニング。


「ありがとう、明。これまでの物より俺に合ってる」

「海斗専用にチューニングしてあるから」

「八神くんがプログラミングしたのか?それともお前が?」

「先輩たちだよ」


 明は微かに笑みを漏らす。

 実のところ、明がこういう笑みを漏らす時は嘘をついていることが多い。どうやら自分の仕事内容を悟られたくなくて笑っているらしい。

 なぜ今日も嘘をつくのか不思議だったけど、まあ、あとでゆっくり聞けばいいだろう。


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 大会開会式は3日後だが、開会式前日に宿舎入りしあとは調整だけになるため、本格的な練習は明日が最後になる。

 午前1コマのプラチナチェイスの陣形を、あらためて確認しなければならない。午前2コマのアシストボールは、俺は補欠なのでそばから見ているだけだ。

あとの種目は個人戦に近いので特段何をするわけでもない。

あ、午後3コマ目で練習するラナウェイは個人種目っぽくないけれど、俺は陽動作戦隊と決まっている。如何に逃げ切るか、ただそれだけを考えればいいと。

ただ、競技自体ベスト16から始めるため、卵策戦は起動するなとも言われている。いつ魔法を解除されるかわからないから。


 なんつーか、今まで運動ヘタレだったからこういう場に出場することが皆無だったので、緊張しているのが自分でもわかる。

 心臓はバクバクと音を立てて俺を襲うし、心なしか手足も震えているように感じる。

 こんなんで、大丈夫か?。


 また岩泉くんが隣に寄ってきて、俺に話しかけた。来ないでオーラを振り撒くわけにもいかないし・・・。

 と考えている間に、隣にちょこんと座った岩泉くん。

「初めての大会って緊張するね」

 話は合わせとかないと、後々面倒だ。

「そうだね、僕も緊張してるよ」

「それならこれを飲むといい。気分をリラックスさせるサプリだから」


 ほらきた。

 瀬戸さんから言われた通り、手に取るものの、飲まないでお茶をにごす。

「ありがとう。でも今お腹の調子が良くないから、寮に帰ってゆっくりしたら飲ませてもらうよ」

「そうか。大変だね、大丈夫?お腹の薬もあるけど」

 今度はその手できたか。

「僕、薬アレルギーなんだ。だから薬は滅多なことでは飲めなくて。ごめん」

 岩泉くんは悲しそうな顔をして、薬を引っ込めた。


 ふう。

 薬アレルギーなんて、ないだろ、普通。

嘘をつくのは苦手だ。一度ついた嘘は消えないから。次々と塗り固めなくちゃいけない。そこにひとつでもほころびがあれば、嘘の壁は瞬く間に崩れ去っていくことだろう。


なーんて。学校行かないで両親に大嘘ついてる俺がいえたことじゃないよね。


 岩泉くんには申し訳ないけど、大会開始後、抜き打ち検査で薬物陽性反応なんて笑えない冗談はよしてほしい。

 いくら第3Gでいつでもこの世界とおさらばできる人種とはいえ、俺はそんなカッコ悪い退場の仕方はいやなんだ。

 どうせなら、やるだけやって勝てませんでしたの方が、俺的にはまだしこりが残らない。あれ、でも、俺が退場した方が岩泉くんか他の1年生が出場の機会に恵まれるわけだから。いやいや、薬はダメでしょ。俺のデバイスを作製してくれた人たちにお詫びのしようもない。

  

 周囲はどう思ってるか知らないけど。

 入間川先輩みたいな人は、俺が薬物で引っ掛かった方が嬉しいのかもしれない。

そういえば、魔法科から普通科に替わったと聞いた。退学したんだろうか。

六月一日健翔くさかけんしょう先輩が入間川先輩の代わりに生徒会副会長を務めることになったとも聞いた。


俺は、今はもう生徒会室にも出入りしてなくて、そう、DVDを見なくなったから六月一日先輩と親しく話す機会はない。でも六月一日先輩は人格者という話なので、ああいう場面でも第3Gを大切に扱ってくれるような気がする。俺の後任の第3Gは嫌な思いをせずに済むだろう。


ただ単に、入間川先輩は運動神経マイナスの俺が嫌いだっただけかもしれないが。


 

◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 翌日。

午前1コマ。

 軽く流す程度に動きながら、プラチナチェイスの動き、陣形を確認する俺たち。明がくれたデバイスはとても俺の肌に合った作りをしていて、右手を少しかざすだけで飛行魔法が掛かり易くなった。


 チェイサーの瀬戸さん、動きがいつにもまして切れ味がいい。

 他の3人も、与えられた仕事をそつなくこなしている。


 眼下に広がるグラウンドの中で、岩泉くんや五月七日つゆりさんが俺たちの方を見上げているのが見える。

 岩泉くんはやや悔しそうな目で観ていたし、五月七日さんはまるで子猫が遊びを覚えたように、目をキラキラさせていた。



 午前2コマ。

 アシストボールで、俺はベンチにいるから疲労回復にはちょうど良い。

 四月一日くん、国分くん、瀬戸さんは、2コマ続けて動きの激しい競技だから体力も相当消耗しているだろう。南園さんはGKという難しい役割だけど、やはりそつなくこなしている。

 

 横を見ると、岩泉くんが何やらまたドリンクの準備をしている。

 懲りないなあと思う。

 疑われていることに気が付いていないのだろうか。

 今や内部告発だってあるんだから、あからさまなやり方は“僕が犯人です、見つけてください”と言っているようなものだ。

 万が一彼が純粋な心でドリンクを準備していたとしても、瀬戸さんがいうとおり本当に噂があるのなら、誰もドリンクを飲もうとはしないと思うのだが。

 だんだん、岩泉くんが気の毒になってきた。もらったドリンク類は飲まないけど。


 午後3コマ・4コマは、皆、軽く流してラナウェイとマジックガンショットの練習をする。身体に覚え込ませるために、ゆっくりと繰り返しレギュラー魔法陣を見つける練習、ラナウェイでは敵を視認する練習を繰り返す。

 


 遠くで四月一日くんが俺を呼んでいる。

 四月一日くんがいる場所まで走っていった。

「今日はもう練習を止めよう。少し休むのも大切だから」

「了解。明日は移動日だったよね」

「そう。今日の夜はゆっくり休んで。1年はただでさえ初めてのゲームで緊張しかねないから」

「僕は今から緊張しっ放しだ」


 そこに南園さんと瀬戸さんが走り寄ってきた。

「私と瀬戸さんはこれから少しだけデッドクライミングの練習していくから。明日、宿舎で会いましょう」

 四月一日くんが周りをきょろきょろしていたが、お目当ての人か物が見つからなかったらしい。たぶん、同じくデッドクライミングに出場する国分くんの意向を聞きたかったのだろう。国分くんはトイレにでも行ったのか、現れなかった。

居残りするという南園さんと瀬戸さんに宿舎で会おうと挨拶をして、俺たちは女子と別れた。


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