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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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魔法W杯 全日本編  第15章

大会まで2週間。

今日の授業は、珍しく座学だった。

 身体バキバキの俺には・・・助かった・・・。


 午前の1コマは各種目における戦術の最終確認。

 明日からはまた、その戦術に基づいた実践練習が大会開催まで続けられるという。


 1日に2種目が行われる新人戦の各競技。

 2年生の競技終了後に行われる新人戦。新人戦が終わると、メインとなる3年生へと競技は続いていく。

 2年生、あるいは3年生の実力は他の高校でもデータ化して知る所であるから、中間で行われる新人戦でのインパクトが総合優勝に大きく関わってくることになるのだそうだ。

 反対に、新人である1年生はただでさえ緊張する。

 昔は1年、2年、3年と競技を行っていたそうだが、全くの新人である1年生にかかる負担軽減のため、今は2年、1年、3年の順に競技を行っているのだそうだ。


47都道府県の生徒たちが一堂に会するとなると、生徒数も試合回数も膨大な量になる。

だから、出場できるのは47校中、16校に絞られている。

以前にもさらりと三枝先輩から聞いてはいたが、昨年の実績をかんがみてシード校を8校指名し、シードから漏れた都道府県が予選会を開催し残りの出場枠8を争うことになる。

で、16校からの準々決勝形式で競技が行われるという仕組みだ。

俺は三枝先輩から教えられたことを曲解して覚えていたかもしれない。


競技は、年次ごとに3日間で争われる。プラチナチェイスだけは、最後の1日で1年から3年までの競技がある。

大会そのものは開会式と閉会式、予備日を合わせ、全13日間という日程が組まれている。

いずれ、紅薔薇高校は昨年総合優勝の肩書を持ったシード校として試合に臨むことになる。


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 新人戦の1日目第1種目は、ロストラビリンス。

先日知ったことなのだが、俺は簡単に透視に成功していたものの、どうやら瀬戸さんは透視が大の苦手らしい。

南園さんはオールマイティらしく、特に困っていた様子はない。

 ということで、俺と瀬戸さんが一緒に迷路に入って進むことが我が高1年の戦術として決定した。

 自校の選手と一緒なら、獲得できる点数は減らない。

 別々の入り口から入る他校がどういった陣形を組んでくるのかわからない、というところがちょっと不安ではあるが、瀬戸さんの魔法力と実戦能力を考えれば、紅薔薇に圧倒的有利となろう。


 新人戦の1日目第2種目は、マジックガンショット。

 俺は以前よりも注入できる魔法力が増加した。

 単純に、走り込みを続けた成果だと思う。

 魔法力が枯渇しない限り、レギュラー魔法陣を見つけショットガンを撃ちこむ処理能力は速くなった。

一応、ショットガンを2つ持ちして南園さん、四月一日くんとともに試合に出場する。

 出場順も決められている。

 南園さんが最初に。

 俺は2番手。

 最後を締めるのが四月一日くん。


 

新人戦の2日目第1種目はデッドクライミング。

 俺は出場しないしエントリーすらされていないから、一番気軽に観戦できる種目だ。

 我が高1年でこの種目を一番得意としているのは瀬戸さん。

 国分くんも中々の好タイムで練習を終えているようだ。南園さんに至っては、文句の付け所が無い。

 たぶん、この種目に関しては、新人戦の中でもパーフェクトでワン、ツー、スリーを独占できそうな勢いだ。

 出場順は、南園さんが一番手。

 国分くんが間を守って、最後瀬戸さんが怒涛の勢いで競技を締める。そんな感じで進みそうだ。


新人戦の2日目第2種目はアシストボール。

プラチナチェイス同様ひたすら動き回る競技なので、持久力がないと酸欠になる。

我が高で持久力に定評のある1年は、四月一日くんと国分くん、瀬戸さん、南園さん。

俺は一応サブ=補欠としてエントリーされているのだが、3人に比べると格段に魔法力も持久力も落ちる。

ま、この3人のうち、誰かが入れ替えになることなど起こりえないだろうから、左団扇ひだりうちわでベンチ観戦していられるだろう。



新人戦最終日の3日目、第1種目はラナウェイ。

四月一日くんと国分くん、俺が出場するのだが、他の2人よりも持久力で劣る。だから素早く相手を倒さなければならない。

ショットガンとマルチミラーをデバイスとして装備するから、俺自身の戦術としては、ミラーを駆使しながらのショットガン操作になるだろう。

あるいは、ミスリード。

四月一日くんや国分くんに敵の目がいった時に、ここにもいるぞと相手を引きつける。

いずれ、この競技は本当に気が抜けない。


新人戦最後の種目は、プラチナチェイス。

2チーム対抗で競技は行われ、全員が飛行魔法を使う。遊撃の俺と南園さん、瀬戸さんはどちらかといえば体力を消耗しやすい。

特にチェイサーの瀬戸さんは、ビュンビュン飛び跳ねるボールを逃さないようにしなくてはならないので、気も遣うし体力も相当使うだろう。

1学年6種目のうち最後の競技でもあり人気の高い競技であるがゆえに、選手に選ばれるということが、この世界の高校生としての誇りになるのも良くわかる気がする。


なんで5人の中に選ばれてしまったんだか・・・。

いまだにわからない。

謎だ。


大会前最後の座学授業は、戦術の講義で終わった。


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・◇


 そういえば、1年の選手は5名なのだが、サブ=補欠の選手も何名かいるようだった。

 その中でも岩泉聡いわいずみさとるくんは、四月一日くんに比べれば一歩劣るものの、国分くんには勝るとも劣らぬ実力の持ち主だった。

 なぜ俺が正選手で岩泉くんがサブなのか、理解不能。

 第3Gを出さなければいけないルールもないだろうし、正規の魔法力を駆使した岩泉くんは、実戦練習の相手としても不足がない。


 しかし岩泉くんは、嫉妬するどころか、非常に優しい。

 そして気が回る。

 練習が終わればタオルを持ってきてくれたり、ドリンクをくれたりする。

 ドリンクはその場で飲むことができなくて、いつも部屋に持ち帰っていたけど。

 こんなにデキる人間がサブというのも、勿体もったい無い話だ。


 そんな中、瀬戸さんと俺は二人でマッサージを受けに行ったわけだが、隣で簡易ベッドに寝そべった瀬戸さんが、顔だけ俺の方を向いた時のこと。


「岩泉には気を付けなさい」

「え?どうして?」

俺は瀬戸さんがいう意味がよくわからなかった。

「正選手になってもいいほどの実力あるし、それでいて優しいし」

「あいつの手、なのよ」

「手?」

「そう。あいつは優しくなんかない。もしかして、ドリンクとか寄越したりしない?」

「もらったことある。たまたま息が上がりすぎてて飲めなくて寮にあるけど」

「それ、捨てなさい」

「どうしたの、一体」

「魔法W杯、抜き打ちで薬物検査があるの、知ってる?」

「薬物検査?知らなかった。そんなこと授業じゃ教わってないよね」

「だからこその抜き打ち。持久力増したり、瞬発力をつけるために薬物を使う生徒がいるの。あるとないとじゃ大違いみたい。プラチナチェイスなんて最後の最後でしょ、もう体力も気力もあっぷあっぷの状態だから使いたくもなるけど」

「うん、かなりわかる」

「でもそこで薬物に頼られちゃ、使用してない生徒から見たら不公平じゃない」

「だから抜き打ちでやるのか」

「そう」

「で、岩泉くんとどう関係があるの?」

「あいつ自身は薬物やってないけど、ドリンクに薬物混ぜて1年の有望株連中に渡してた、って噂がまことしやかに流れてんのよ」

「えっ。抜き打ちで薬物陽性になったらどうなるの」

「厳しいところは強制退学。緩いところでも、もう大会の類いには出られない」

「紅薔薇は?」

「普通科に転科させられる。何かやらかして魔法科から普通科に転科なんて、みっともなくて自主退学する人が多いそうだけど」

「うわー、激しい」

「第3Gもターゲットになり得るの。ううん、第3Gだからこそ、ターゲットにする」


 俺は首を曲げて疑問形を表した。

「そこで第3Gが出てくるのはどうして」

「あいつは入学早々、自分が1年のエースだと自慢していたの。そしたら、四月一日がいたでしょう、全然能力では敵わない」

「言っちゃ悪いけど、そうだね」

「で、自分が入り込むスペースを確保したいと思ってんのよ」

「第3Gなら魔法のことも学内や魔法W杯のことも良く知らない。例え落選しても仕方ないか―で終わるって寸法なわけ?」

「そう。あいつはすごく嫉妬心も強いし、自分ができないってことを認めたくないから次々とターゲットを変えるそうよ。ドリンクや風邪薬って渡されたものは、スポーツをやるものとしてあり得ないから飲まない人が多いけど、その辺りから足がついてるみたい」

「瀬戸さんはもらったの?」

「あたしは一度きりだったわ。だから、あいつには気を抜かないで接しなさい」

「教えてくれてありがとう」


 

おっかねー!!


(前にも言ったが、俺は純東北人で、おっかないは方言。標準語にすると“おそろしい”になるようだ)


幼稚園児じゃあるまいし、嫉妬心のかたまりなわけーーーーーーーーー?

薬物飲ませるって、一体どういうことですかーーーーーーーー?

 あほくさーーーーーーーーーー!!

 そんなに正選手になりたいなら自分で、自分の手でもぎ取れよ。

 運動神経マイナスの俺でさえ、走りたくないのに毎日走って、反復横跳び苦手なのに毎日やらされて、もう心も身体もバキバキだってのに。


 いるんだよな、どこの世界にも。

中学のとき、女子だけどいたよ。

 対して勉強もできないし人のハートを大事にする性格でもないのに、そこかしこで金品ばら撒いて生徒会長になろうとした女子。結局金品の話がばれて、生徒会役員にすらなれなかったっけ。

 

 そういえば、岩泉くんは、毎週のように俺にドリンクをくれていた。

 よほど5位以内の地位に食い込みたいのだろうか。

 

 サブ=補欠として扱われることが彼にとっては屈辱に違いない。

 笑って皆に接しながら裏では・・・怖ーい。

 近づかないように・・・と思うのだが、いかんせん、向こうが寄ってくる。

 第3Gも舐められたものですな。

向こうにしてみりゃ、俺よりは正選手として実力があるといいたいのかもしれない。

 まあ、舐められても仕方のない運動神経マイナス男がここに約1名。

 

 いや、こんなことでどうする!

 実力ではないけれど、どうしてかは知らないけど、俺は一応選手に選ばれた。選手としての自覚を持ち、その任を果たせ!


 まるで沢渡会長の言葉だな。なんか可笑しくなった。


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