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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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世界選手権-世界選手権新人戦  第18章

その夜は、世界選手権と世界選手権新人戦に出場した学生とサポーター400名が一堂に会し、夕方6時から立食パーティーが行われることになっていた。

 もちろん世界選手権が終わり直帰で国に帰った学生もいたので、実質300名程度がパーティーに参加していたと思われるが、それでも会場の中は熱気に包まれ、そこかしこで挨拶代わりにグラスを傾ける音が聴こえてくる。


 俺としてはホームズを迎えに行って一緒に寮に戻りたかったんだが、新人戦優勝という立場がそれを許さないという雰囲気の中、畏まってパーティーが終わるのを待っていた。

 色々な人が俺の近くにやってきて、おめでとうと一言声を掛けてくれた。

俺は『バルトガンショット』でも優勝したので総合1位の座も勝ち取っていて、皆が2つのメダルを見せて欲しいと頼み込んでくる。

メダルを2つ手渡すと、丁寧に扱う人がほとんどだったが、中には嫌味交じりに落とすような真似をする不届き者もいたのは確かだ。

でも、気にしない。

ホームズにこのメダルを見せられれば、それでいい。


 ホームズに会いたい俺としては、もう試合が終わったという、そして総合優勝できたという満足感でいっぱいで早くこのパーティーが終わらないかなと揉み手しながらいつものように壁の方に近づいた。

 壁際から皆を見渡す。

 日本勢の女子は皆一緒に集まっていたようだが、サラなどはあちこち移動して自分をPRしている。

日本とアメリカの風土の違いか。海外の女子選手はフランクだ。

 いや、決して日本の女子が悪いとは言ってない。そういう環境が全く違うだけだ。


 沢渡元会長を初めとした日本男子も、どちらかといえば皆で固まっていたが、光里(みさと)会長は海外の知り合いも多いらしく、流暢な英語を駆使して海外選手との親交を深めていた。

 サトルは英語話せるはずなのに、あまりにもシャイだから話しかけられたときにしか英語で返さない。もっと堂々とみんなの輪の中に入っていけばいいのに。

 でも乾杯後、譲司がサトルに何か囁き、サトルは意を決して海外の選手にも話しかけているのが見える。


 あれ、逍遥(しょうよう)の姿が見当たらない。どこを探してもいない。

 もしかして、魔法部隊に行ったか。十分に有り得る話だ。


ワン・チャンホの姿はどこにもなかった。キム・ボーファンの姿も。そう言えば乾杯の前から影も形もなかった。


 俺の第六感が、危険モードを察知していた。

 北京共和国のやつらは、そう遠くない未来に併合戦争を仕掛けてくる。

 その前にホームズを安全な場所に移動させなくては。でも、安全な場所ってどこだ?

魔法部隊の本拠地ですら敵の攻撃対象になり得る今、ホームズをどうしたらいいんだろうと考える。今いるペットホテルが最上かもしれない。寮に戻っても俺たちは最悪全員が招集される恐れだってある。

 ホームズを1人にはしておけない。

 あ、国分くんの家がどうだろう。

 お母さんは専業主婦だったはずだし。

 でも、調子を崩した猫を預かったところで負担は増すばかりでメリットなんかない。

 やっぱりペットホテルが一番か。

 

 このパーティーも2時間ほどでお開きになるはずだ。

 それまで待つか、それとも一度抜け出してペットホテルに様子を見に行くか。


 しかし、危険モードを察知した俺にとって、戦闘状態に突入することは最早避けられない情勢のモノになりつつあった。未来予知とまではいかないが、たぶん、外国選手が出国した後2,3日中に北京共和国は動いてくるはずだ。

もしこのまま併合戦争に巻き込まれたらホームズの顔を見るのがいつになってしまうかもわからない。

悩む俺のところにサトルと譲司がやってきた。


「海斗、おめでとう」

「ありがとう、サトル」

「その割には表情が暗いけど、どうしたの」

「ああ、俺の第六感があと少しで戦闘が始まる、って危険モードを察知したのさ。もちろん、ほんとに来るかどうかはわかんないけど」

「いや、くる」

 サトルが頷くと同時に譲司も話し出した。

「実は沢渡元会長が絢人(けんと)に魔法をかけて取り調べて真実を話させたんだ。北京魔法軍を引きいれる場所は口を割らせたんだが、日程は教えてもらえなかったらしい」

「どこにくるんだ?」

「横浜港の埠頭だと聞いてるそうだよ。魔法軍では瞬間移動する者がほとんどだろうが、陸軍も来るとなれば船を接岸しないといけないだろ」

「へえ、札幌や新潟じゃなかったんだ」


 サトルが不思議そうな顔をする。

「どうしてそう思ったの」

 頭を掻きながら俺はサトルの問いに答えた。

「夢で見たことあるからさ。夢の中では、札幌や石川県、新潟の海沿いに船接岸して争いが始まったんだ」

「なるほど。絢人(けんと)には嘘を伝えて、実際にはそちら、という線も考えられなくはない」

 うーん。たぶん、俺の見た夢の中のストーリーは違うと思う。

「ワンやキムがまだこの辺にいるとすれば横浜で間違いないと思うけど、どう思う?」

「そうだね、国に帰った形跡はないし、まだこの辺にいるのは確かだ」

 サトルは遠隔透視をして、俺の問いに対する答えを導き出していた。

「やっぱりそうか」


 俺がそう呟いた時だった。

地震のような激しい揺れに、ホテル大広間の電気が一斉に消え、女子の叫び声やそれを鎮めようと叫ぶ男子の声、ドアの方に逃げようとする足音、押し倒されて痛みを覚える声などが部屋中に巻き起こった。300人もの学生が恐怖に陥ったのだから無理もない。

俺は足がすくんでしまって、壁際から一歩も動くことができなかった。

「静まれ!!」

その一言で会場内は静寂になり、声の主を皆が振り返った。

「紅薔薇高校生徒会元会長の沢渡だ。今照明をつける、静まれ」


 沢渡元会長は天井に向けて右手を翳し、ぼんやりと薄暗い照明が付いた。

 そこに、光里(みさと)会長が右手を翳し、明るさがいくらか増していく。

 サトルや譲司、そして外国勢の2,3年が一緒に右手を翳す。

 大広間は、照明が消える前の明るさに戻った。


栗花落(つゆり)、若林と一緒に停電の原因を調べろ」

 沢渡元会長の言葉を聞きつけ若林先輩が俺たちのほうに走ってきた。

栗花落(つゆり)、行くぞ」

「はい!」

 電源設備を管理する電気室には配電設備や通信設備が格納されているらしい。

 若林先輩はそっち方面に詳しいようで、この地震と停電がホテル全体のものなのか、それとも大広間だけが何者かの仕業によって停電したのか調べるために、譲司を引き連れ地下にあるであろう電気室に向かうため瞬間移動で姿を消した。


 サトルと俺はそのまま壁際にいたのだが、俺は何か嫌な予感がして数馬に離話を飛ばした。

 数馬は離話に出たはずなのだが、ノイズが酷く、また透視もできず言葉を交わすことはできなかった。逍遥(しょうよう)聖人(まさと)さんにも離話してみるが、まるでこの大広間だけがスクランブルをかけられ魔法を遮断されているような感覚に、外部との連絡方法を断たれた俺は焦りを禁じ得ないというのが正直なところだった。

「ダメだ、サトル。どこにも通じない」

 サトルも知り合いや父親に離話してみるが、通じなかったという。

「何が起こってるんだろう、海斗。停電もただの停電じゃないような気がする」

「しっ、聞えたら周りがまたパニックになるかも」


 俺が予想した通り、外部に向かって離話を始めようとした学生は多かったらしく、スクランブルをかけられて繋がらない状況に気付いたようで、ひそひそ話から段々と声は大きくなってきて、沢渡元会長に面と向かって騒ぎ出す学生が現れた。

「静まれっ!!」

 沢渡元会長はその学生に向かって右手を翳し、その学生は気を失ってよろよろとその場に崩れ落ち、周囲の友人らしき学生に支えられて俺たちがいるところとは反対側の壁際に運ばれた。

 それを見た他の生徒は、大声こそ出さなかったものの沢渡元会長に背を向け悪口を言っているように見受けられた。

 いや、悪口言ったところでこのヤバイ状況を抜けきることはできないって。


 若林先輩と譲司が大広間に戻ってきた。

 すぐに沢渡元会長の元に走り、何か報告している。口唇術で動きを読むと、どうやら電気室の機器を見ても、どこも停電している階はないという内容だった。

 であれば、誰かが魔法で強制的にこの大広間を揺らし停電させたというのだろうか。

 俺は強制的な魔法を良く知らないけど、たぶん、あるのかもしれない。

それも、時間差で掛けたとしか思えない。

会場の中で掛ければ、魔法の痕跡が残って誰がやったか解ってしまう。

 だから、ここにいない人物によって時間差強制魔法を部屋全体に掛けたのだろう。


「まずいな、これは北京共和国の仕業に違いない」

 沢渡元会長の表情がキツくなってきた。

「この連中を外に出すべきか、迷っている」

 光里(みさと)会長は、国ごとに並ばせ廊下に出すべきだというが、廊下でも何らかの魔法攻撃を受けることだろう。

 世界選手権及び新人戦開催国の日本としては、魔法攻撃による怪我人や最悪死者を出したら相当なバッシングを浴びるのは必至だ。それを避けるために、沢渡元会長や光里(みさと)会長は腕組みしながら今後の方針を考えていたようだった。

  

 全員がこの魔法を使えるのかわからなかったが、俺は生徒会の連中が集ってるところに行って、瞬間移動魔法でどこか安全なところに皆を誘導することを提案した。

 ただ、300人ほどの人間がゆったりと立っていられるホテルを探すのは一苦労であり気温からして夜を明かすには無謀な策戦でもあることは確かで、柔らかな物腰と口調ではあったが沢渡元会長は俺の提案を却下した。


 どこかに移るか、このまま大広間にいるか、その2択。

 沢渡元会長は目を瞑って考えに(ふけ)っていたが、10秒ほどで目を見開いた。

「一旦はここに留まるが、移る場所が見つかり次第、順番に移動魔法を使い移動する。皆、防御魔法を自分に重ね掛けするように」

 そういうと、自分自身に防御魔法を掛けた沢渡元会長は、大広間全体に魔法をかけた。

 他者修復魔法の亜種といった感じで、なんだか安心感に包まれるような、そんな気分になる。俺の他にもそう感じた学生は多いようで、悪口やひそひそ話は減り、各国で連隊を組み自国の選手同士で、あるいは5つのエリアで区切って選手を集めているところもあった。最終的にはGリーグで分けられている5エリアで選手が集まることになり、選手たちは使用可能な魔法を選んでまさかの事態に備えていた。


 俺はアジアエリアの集合体に属したんだが、もちろん、ワンもキムもいない。

 この停電はやつらの置き土産か?

 紅薔薇生徒会は大会事務局に全面協力する形で、なんでか俺まで駆り出された。

 中途半端な技しか覚えてないし、戦力になるのか。この俺が。

  

 そう言えば、ライブをするような大きな会場とかないのかな。ほら、野球場とかで屋根が付いてたりする場所。あれなら何万人と人が入るはずで、300人などすっぽり入る計算だ。

 俺は早速サトルを呼んでライブ会場に打診するよう働きかけてみた。


 サトルが言うには、横浜には何万もの人を収容できるライブ会場はなかったが、地元の野球場とサッカー場が各2つある。そのうちひとつの野球場は可動式の屋根が付いていて、今日は運よく空いているという情報が流れてきた。

 大会事務局では沢渡元会長たちに相談することなく、野球場に学生300人を移動させることを決めた。

エリアごとにおよそ50~70人の学生たちを集合させ、移動魔法を使って野球場に移動していく。移動魔法が使えないサポーター(ほとんどいなかったが)等は、魔法を使える学生がボールを包み込むような形で移動させた。前に数馬が日本から海外までバランスボールを移動させたように。


 だが、俺たち紅薔薇高校生徒会はホテルに留まるか否かで意見が割れた。

 沢渡元会長や若林先輩は、大会事務局と最後まで一緒に行動すべきと諭したが、光里(みさと)会長以下2年の選手やサポーターは、野球場に万が一敵が現れた際の行動について疑問を呈しており、紅薔薇の学生を2つの組織に割り振ってホテルと野球場に各々派遣すべきと訴えた。

 

 結局、折れたのは沢渡元会長と若林先輩だった。

 沢渡元会長と逍遥(しょうよう)、俺、サトルの4名は1組になってホテルに残り大会事務局の連中と行動を共にし、敵からの攻撃に備えるシフトを採った。

 光里(みさと)会長をリーダーとするもう1組は、外国人選手たちが無事に母国に瞬間移動できるように取り計らうことを第一の目的として野球場に飛んだ。

 ホテルの中では、まだスクランブルが掛かっていて外部との連絡は取れなかった。

 沢渡元会長は、紅薔薇高校に移動し講堂を本拠地として動くことを大会事務局に助言した。

 だが、大会事務局では海外の選手たちを無事に母国に戻すことを理由に、自分たちが野球場へ移動することを申し出た。


 なんでそうややこしいことするかな。だったら最初から自分たちが野球場に行くって言えばよかったのに。

俺はその話を聞いて、少しどころじゃない、大いに呆れ憤慨した。

高校生だからって舐めてないか?俺たちを。


それでも沢渡元会長は即座に同意し、光里(みさと)会長以下野球場に向かった学生を紅薔薇高校の講堂に呼び戻したのだった。若林先輩だけは、野球場の方がどのように動いているか報告するため、野球場に1人残ることになった。


光里(みさと)、ご苦労。向こうにいる学生はどうだ、パニックを起こしていなかったか」

 沢渡元会長の懸念は、ほぼほぼ当たっていたと見える。

「いやあ、エリアごとに分れるはずがまたバラバラになったりで大変でした。大会事務局であれを交通整理するのは大変だと思いますよ」

「そうか。帰国が長引くようなら我々が行って手伝うほかあるまい」

「そうですね」


 俺は数馬に離話を送っていた。

 よし。

 今度は繋がった。

「数馬、俺、海斗。どこいんの?」

「紅薔薇の体育館」

「じゃ講堂にくれば。こっちもみんな揃ってるし」

「んー、わかった。こっちにいる全員、講堂に移るから」


 それから5秒もしないうちに、数馬と聖人(まさと)さん、亜里沙と(とおる)が講堂に現れた。

「みんな一緒だったんだ」

「魔法部隊からの命令待ちだったのよ」

 亜里沙が澄ました顔で言う。

「ホテルの停電騒ぎ、知ってたのか?」

「海斗、あたしらを見くびってもらっちゃ困るわ。あんたたちでどうしようもない時は行こうって決めてたけど、沢渡くんが働いてくれたからね」


 その“沢渡くん”って、いつ聞いても慣れない。

 当の沢渡元会長は恐縮した態度で亜里沙を見ている。

「とんでもないことです、山桜さん」

「ところで沢渡くん、野球場の方は今どうなってるの」

 沢渡元会長は若林先輩に離話を送って現在の状況を亜里沙に報告した。

「5エリアのうち4つまでは瞬間移動が終わったとのことでした。ただ・・・」

「ただ?」

「戦闘になったら参加するといっている学生がいるようで、エリアの集合体から抜け出ているそうです」

「名前を聞いてちょうだい、各国の魔法軍に所属しているかもしれないから」

「承知しました」


 沢渡元会長は若林先輩と密に連絡を取り合いながら、大会事務局とも連携して残った学生が誰なのか割り出しを進めていた。


 それを横目に、何かあった場合の選択魔法を話し合っていた俺たち1年組。

「海斗、君ショットガン持ってきた?」

「持ってるよ」

「君はたまに間が抜けてるからねえ、忘れたらホテルに逆戻りだったよ。ホテルじゃ今頃北京共和国の連中が僕らのキャリーバッグ漁ってるはずさ」

「余計なこと言わないでくれ、逍遥(しょうよう)。キャリー漁ってるって誰が?」

「向こうの雑魚キャラ。ワンやキムは今回の戦闘について指導的立場にいるとみていいから」

「あの2人はそんなに偉いのか」

「たぶんね、見ただろう、ワンの『デュークアーチェリー』」

「凄い記録だった」

「そこが問題なんじゃない。あの競技は殺傷能力を高めることができる、ということなんだ」

「『プレースリジット』や『エリミネイトオーラ』のように?」

「そう。ワンは『バルトガンショット』には然程興味が無かったみたいだけど、あれだってマージを使えば殺傷能力は格段に上がるだろう?」


言われて見れば逍遥(しょうよう)の言う通りかもしれない。

 矢を撃ち込める、あるいはクレーを粉砕するということは、何かしらの攻撃で相手を攻撃できるということ。それも高速で。相手が動いてることを加味しても、クレー粉砕を考えれば、魔法を使用する側の能力が高いほど殺傷力が格段に上がるのは目に見えている。

 GPSやGPFでの『デュークアーチェリー』は、30分で50枚から80枚程度の的を射るというお遊びのようなものだったが、新人戦においては十分にその能力を発揮する可能性すらある競技だった。 

なんでどちらの競技も急に記録が一桁になったのか俺にはわからなかったが、1年でも殺傷能力を高める競技にするために各国の威信にかけた魔法を盛り込んであそこまで記録が伸びたという内々の実情があったのかもしれない。

 何のことはない、数馬や聖人(まさと)さんは初めからすべて知っていた。こうなることまでお見通しだったというわけだ。


 なら、少しくらい話してくれても良かったのに・・・。

 数馬が真面目な顔で俺を指さす。

「君が余計なところでお喋りしないように隠してたんだ。それでなくても読心術に引っ掛かり易いんだから」

 ・・・とほほ。

ええ、そうですとも。

俺はお喋りな上に読心術に引っ掛かり易い人間ですよ。それが何か?

「開き直ってもダメ。ただ、君の演武は最高だったし、万が一敵と遭っても敵を倒していける。でも、ショットガンでは冷や冷やするから人さし指デバイスを使ってくれ」

「なんで」

「君に“目を瞑ってクレーを撃つ”と言われた時の僕の心配がわかるかい?目を瞑った瞬間に敵がどこにいるか判らなくなるじゃないか」

「そうだな、クレーのように何か発射されればまだしも」

「ショットガンで遠隔透視しながらマージを使えば君でも敵は倒せるから大丈夫だとは思うけど」

「使ったこと無い」

「唱えて撃つだけで効力が発揮されるから安心して」

「じゃ、それと一緒に破壊魔法とか消去魔法使っても構わない?」

「やり方知ってるなら、いざという時は使って構わない」


 聖人(まさと)さんも数馬に同調する。

「お前さんは本当の戦闘を経験してないからなあ、ビビるなよ」

「いや、十分にあり得るし」

「ビビった時は後方支援に回れ」

「いいの?」

「身体張って余計な魔法受けるよりよっぽどいいだろ」


 亜里沙は俺を心配しているようで、戦闘には参加しなくていいと言って聞かない。

何のために俺ここにいるんだよ。そんなら海外組と一緒に野球場に行った方がよかったってか?

 亜里沙の心配はわかるが、皆が盾になり併合戦争を防ごうとしている中で、俺だけが安穏と胡坐をかいているわけにはいかないじゃないか。


 その時だった。

 ヒョイ、と人影が見えて、俺たちは一瞬で全員がショットガンを持ち戦闘態勢に入った。

「オー、チガウチガウ、ボクダヨ、タコー」

 それはルイとリュカだった。

「ボクタチカエロウトシタケド、タスケテモラッタ、ダカラタタカウ」

 俺は2人の近くに寄って行く。

「危ないよ、国に帰った方がいい」

「ダイジョブ、マージトクイ」

「ショットガン持ってるの?」

「モッテルヨ」

「でも、危なすぎる」

「タコ、ボクラ、グンタイショゾク。キミヨリツヨイ」

「え?2人ともフランスの軍隊所属なの?ならなんでクロードにやられてんのさ」

「カクシテルカラ」


 そこに数馬がしゃしゃり出てくる。

逍遥(しょうよう)や山桜さん、長谷部さんと同じさ。軍隊所属を隠して学校に通う例は多いって言わなかったっけ」

「聞いたっけ、そんなこと」

「さて、言ったような気もするけど、まあいい。援護部隊が増えたのは嬉しい限りじゃないか」

「ほんとに大丈夫?ルイ、リュカ」

「マカセテー」


 亜里沙が横に入ってきた。

「いつ敵が襲ってくるかもしれないって時にあんたってば脳天気ね」

「言い過ぎだ」

「この2人なら大丈夫。あたしも会ったことあるもの」

「オー、アリサ!ヒサシブリ!」

「相変わらず変な日本語話してるのね。ルイ、リュカ」

「ヒドイヨ、アリサ、クチワルイ」

「さて、あとはどこで敵を迎え撃つのか、そこね」


 俺は突然、ホームズのことを思い出した。一時も早く会いたい。俺は近くにいた亜里沙の腕を掴む。

「ホームズを迎えに行っちゃダメか?」

 亜里沙が上目づかいで俺のことを睨んでいる。

「あんた馬鹿?ホームズがここに着たら魔法使うに決まってんでしょ。早死にさせたいの?」

「あ・・・そうか」

「冷静になりなさい、海斗。ここで敵をこてんぱんにしてしまえば日本は救われる。そうすればホームズと平和に暮らせる。OK?」

「わかったよ、今は戦闘のことだけに集中する」


 若林先輩から沢渡元会長に報告が着たようだ。

5エリア全ての学生を母国に移動させる作業は滞りなく終わった。

 大会事務局の人間が俺たちと一緒に行動することはないらしい。事務局本部のあるイタリアのミラノに帰るそうだ。

 元々大会事務局の手を借りようなどとは思っていないと沢渡元会長が呟いたと同時に、若林先輩や外国勢で戦闘要員として残った学生たちが講堂に集まってきた。

 ほとんどは2,3年。

 人数を数えてみると、50名ほどいただろうか。

 俺は顔も名前も知らない学生ばかりだったが、沢渡元会長や光里(みさと)会長は顔見知りらしく、親しげに言葉を交わしていた。


ここからは、亜里沙が指揮をとって紅薔薇高校の生徒たちと各国の学生たちを纏め、戦闘準備に入るという。

え??亜里沙で大丈夫なのか?

「海斗、あんた失礼なやつね。これでも魔法部隊ではそれなりの活躍してんのよ、あたしは」

 あはは。俺の心はまるまる聞こえている。

 ごめん、亜里沙。


講堂の中に移動してきた外国勢の学生の中に、サラがいたので俺は驚いた。サラはアメリカ軍の関係者だったのか。

 スペインのホセとカナダのアルベールも姿を見せている。2人も軍の関係者に違いないと思う。

 みんな、今年から各高校に通い始めたというわけか。

 ホセとアルベールは、ワンの『デュークアーチェリー』を見てすっかり考えを改めたそうだ。


 そりゃまあ、あそこまでの魔法力を見せつけられたらワンの力を認めないわけにはいかない。

 でもなあ、『バルトガンショット』では全然目立った活躍をしなかったのに、どうして『デュークアーチェリー』では3位につけるように演武したんだろう。それだけの力量があるのだから、最初から飛ばしても良かったはずだ。

 キムも同じ。全然本来の力を出していなかったと思われる。キムの場合、沢渡元会長を潰すことだけに注力したから仕方ないのかも。


 逍遥(しょうよう)がちょっと呆れた顔をして俺を見ている。

「最初は大人しくして日本人の成績を見たかったんだろう。言ったよね、僕」

「聞いたっけ、俺」

「海斗、君かなり忘れっぽい性格だねえ。でもね、少し考えればあの動きも解析できるというものさ」


 逍遥(しょうよう)の言葉を半ば無視して、絢人(けんと)のことを考えていた俺。

「なあ、絢人(けんと)って今どこにいるの」

俺が唐突に尋ねたので、口ごもってしまった逍遥(しょうよう)

光里(みさと)会長に聞けばわかるんじゃない?」


 そうか、取り調べたのは生徒会で、言葉を引き出させたのは沢渡元会長だ。

 俺は早足で光里(みさと)会長の隣に立つと、またもや突然話を振る。

「八神絢人(けんと)は、今どこにいるんですか」

「魔法部隊に引き渡してある。向こうではもっと厳しい取調べが行われているはずだ」

「話すの拒否っているんでしょうか」

「俺たちにさえも黙秘し続けたからな、最終的には沢渡元会長の魔法であらかたのことは聞けたが」

「嘘はない、と」

「沢渡元会長の魔法を受けて嘘を語れる人間は、まずいないだろう」

「そうですか・・・」

「心配なのか?」

「いえ、そういうわけではないのですが」

「横浜港の埠頭に船が着岸すると同時に、魔法師は瞬間移動魔法で日本に来て、ここ横浜を壊滅させる気らしい」

「それはまた、綱渡りの計画ですね」

「いつこちらにくるのかがわからない。だから内心冷や冷やしてるさ。でも埠頭にはこちらの警察や魔法師が常駐して見張っている」

「でも、魔法師はいつどこに現れるか皆目見当がつかない・・・」

 光里(みさと)会長は口持ちをキュッと結び直し、姿勢を正した。

「これから俺たちは何人かで一組のグループになって飛行魔法で市内を巡回しながら魔法師の到着を阻止することになるだろうな」


 俺の脳裏に突然閃いたものがあった。敵の魔法師が映り込み、朝日に照らされ魔法師たちは陽の陰になり戦闘になる様子さえもが、くっきりと浮かび上がった。

 場所は分からない。

 でも、屋内ではない。辺り一面が白に覆われている。雪か?その場所は市内が一望でき、地平線の彼方に日の出が見えた。


「朝、そう、夜明けです。敵が来るのは夜明けじゃないでしょうか。場所は、地平線から日の出が見えるところかと。そして、辺りは真っ白な雪のようなものに覆われてました」

 俺の言葉を聞いた光里(みさと)会長は、沢渡元会長の元に駆け寄ると、何やら2人で話し始めた。


 沢渡元会長が壇上にあがり大声で皆を呼ぶ。

「皆、話を聞いてくれ」

 講堂のそこかしこでグループを作り戦闘態勢に入っていた紅薔薇高校の皆や外国人勢は、壇上にあがった沢渡元会長の声に耳を傾けた。

「未来予知の力がある複数の者から敵の襲来に関して情報があった。敵の船や魔法師たちがこちらに着くのは夜明け。船の着岸は横浜港だが、魔法師は札幌大倉山のジャンプ場及びその付近に現れるらしい。陸軍の上陸だが、横浜の埠頭には現在警察と魔法部隊の魔法師たちが張り付いているから心配は要らない。これから全員に紅薔薇のジャンパーを配る。半分に分れて、埠頭と札幌に行ってくれ」


 譲司やサトルがバタバタと動き出す。走って講堂を出た2人は、大きな段ボール箱を2つ、台車に載せ瞬間移動で戻ってきた。

 ものの5分もしないうちにダンボール箱が空になり、譲司もサトルもまた台車とともに瞬間移動で消えた。

 そこに、瞬間移動で来たのだろう、南園さんが顔を出した。

「私もお手伝いします」

 それだけ言うと、講堂から瞬間移動してどこかに行った。

 2,3分してから、新しいダンボールとともに3人が一緒に現れ、まだジャンパーの行き渡らない学生に配りだす。

 10分後、全員がジャンパーを着て講堂に立っていた。

 ベンチコートの方がよほど温かいよなあ、と思っていたら、知らぬ間に隣に来てた逍遥(しょうよう)が釘を刺す。

「ベンチコートじゃ思うように動けない。これが最善の策なんだ」

「札幌、寒いと思うんだけど」

「アドレナリンが出るから寒くは感じないさ。寒く感じるとしたら、そりゃ君、サボってる証拠だろう」

「手厳しいな。そこまではわかったけど、なんでみんな同じ服装するんだ?」

「味方と敵の区別をつけるためだと思うよ。まさか敵がこんな紅色のジャンパー着てると思うかい?」

「なるほど。向こうがチャイナ色の紅服を着ていないことを祈るよ」



 沢渡元会長からの指示はまだ出なかった。

 横浜ランドマークタワー付近の情景を見た外国勢がいたからだ。

「相手は二手に分かれるつもりなのか。八神絢人(けんと)はフェイクニュースを日本側に流す役割だったわけだ」

 光里(みさと)会長が眉を(ひそ)め沢渡元会長に耳打ちしている。

「沢渡会長、3カ所に分かれますか?」

「ああ。俺は横浜ランドマークタワーに行く。光里(みさと)、天候的に厳しいがお前は札幌に飛んでくれ。埠頭には主に外国勢を。あそこは魔法部隊がいるからな。それから、ここ紅薔薇にも情報管理役がいるだろう。三枝、南園と黄薔薇の(めぐみ)設楽(したら)を生徒会に残すので全体の調整を行うように」

「承知しました」

 俺は沢渡元会長と光里(みさと)会長との会話を読んでしまった。

 キムとワンたちが3カ所に分れてくることは間違いなさそうだ。


 誰が札幌に飛ぶんだろう。

 日本勢では、光里(みさと)会長、数馬、蘇芳先輩が1チーム、聖人(まさと)さん、サトル、逍遥(しょうよう)が1チーム。俺と亜里沙と(とおる)が1チーム、沢渡元会長、若林先輩、譲司、が1チームを組むことになり、光里(みさと)会長のチームと俺のチームが札幌に向かうことになった。

 

 外国勢では、国ごとにチームを組んでもらうのが一番適しているだろうという話になり、3人で1チーム、計4チームが横浜港埠頭と横浜ランドマークタワー、そして札幌に分れて飛ぶことになりそうだ。

気候的なモノもあるのだろうが、アルベールが札幌行きにいち早く手をあげ、フランスとスペインの学生は横浜に残ることになった。



 札幌に向かうチームの総指揮は光里(みさと)会長が取ることになり、札幌大倉山ジャンプ場を目指し、俺たちや数馬たち、カナダ勢は次々と瞬間移動魔法を使い、講堂を後にした。

 数馬が英語もフランス語も話せるから助かる―。

 観光旅行じゃないのは知ってるよ、ただ全然言葉が通じなかったら連携が取れないじゃないか。


 横浜組はサトルと若林先輩が語学に強いらしく、聖人(まさと)さんもフランス語が話せる。ルイやリュカと話したくらいだから。

若林先輩はスペイン語やポルトガル語が堪能で、両国の文化にも造詣が深いという。

スペインの本場フラメンコは、一度見たら虜になってしまうらしく、道端で踊る小学生くらいの男の子を見てフラメンコのファンになり、以来若林先輩はスペイン語やフラメンコを猛勉強して度々スペインに足を運んでいると蘇芳先輩から聞いた。


 札幌に着き、初めに横浜組と連絡がつくかどうかテストする。

 亜里沙と聖人(まさと)さん、アルベールとルイが遠隔透視と離話を試みた。

 透視した相手の顔も見えるし、周囲の景色も見える。話もスクランブルをかけられることなく通常モード。亜里沙とアルベールは笑って連絡を終えた。

 よし。

 

 でも、俺には札幌はやはり寒い。

 仙台は雪国と思われがちだけど、そんなに寒くないんだよね。

 雪も少ないし。

 ま、俺のことはどうでもいい。

 こっちに敵が来るのはいつなんだ。


 数馬が俺を呼んでいる。何か用があるらしい。

「海斗、君に鏡魔法教えたっけ、浄化魔法も」

 はて。

「忘れた」

「何とも頼りにならないな。ま、いい。これから教えるから聞いてくれ」

 数馬は俺の横に立って、「クラシス」と念じて両手をクロスさせてそのまま前につき出すんだとわざわざ説明する。

「これが鏡魔法。反射魔法ともいう、とにかく魔法を跳ね返せるものだから忘れないで」

「了解」

 返事をしつつ、俺の脳内はあの夢が交錯して、数馬の話を話半分で聞いていた。

今度は「カタルシス」と念じて両手を左胸に当てるのだと力説する数馬。

「海斗、これが浄化魔法だ。万が一相手の魔法が当たってしまったら使うと良い」

 海外勢も先程から俺たちの周りに寄ってきて、鏡魔法と浄化魔法の使用方法を聞きながら真似している。

 

 10人ほど人で防ぎきれるくらいの魔法師が来るのか、もし多勢に無勢となったとき、俺たちはどう行動すればいいのか。

 そんなことばかり俺は考えている。

 その俺の後頭部を思いっきり平手打ちした人物がいた。

「いでーーーーーーーーーーーっ、誰だよ、急に」

 (とおる)だった。

「海斗、お前数馬の話聞いてなかっただろ」

「え、まあ、うん」

「それで自分を防ぎきれるか?防御魔法で通用する相手じゃないぞ」

「・・・ごめん」

「もう一度教えてあげるから」


 俺は(とおる)にもう一度鏡魔法と浄化魔法、防御魔法を教わり、前線に立った。

 なるべく外国勢の学生たちを守りながら敵を攻撃しなくてはならない。


 札幌の夜は芯から冷えて、もう、寒いなんてもんじゃない。

 でも、夜明けには必ず敵がここにやってくる。

予知とは違うかもしれないけど、俺の第六感は冴えていたように思う。

 人はこれを予知と呼ぶのかもしれない。


 札幌の大倉山ジャンプ場とスキー場はナイターも行っていたのでまだ灯りが煌々と灯されていた。ナイターは9時までだったが、亜里沙が経営筋に掛け合い一晩中灯りを点けてもらえることになった。

 あとは、俺の予知が当たっていれば明け方に敵が襲来する。

 それまでの間にチームごとにつかの間の休養が与えられた。ジャンプ場の近くに2階建ての建物があるのだが、昔オリンピックで使用した選手宿舎を改造し、今はレストランになっているという。食事を摂り2階で仮眠するのにはうってつけの場所だった。


 今は午後9時前。

 ジャンプ場及びスキー場が閉まるのが午後9時。施設の人には申し訳ないことをしたが、食事だけ作ってもらい、あとは光里(みさと)会長が俺たちに細かい指示を飛ばしてチームごとの動きを把握していた。


 スキー場には世界各地から人が来ているんだろうな、と思ったんだが、施設の人曰く北京共和国や香港民主国の人が多いのだという。札幌界隈は交通の便も良いし、何よりパウダースノーで雪質がいいらしい。

 へえ、向こうからねえ。


 俺のアンテナがピピピ、と動く。

 まさか、この中に入り込んで客のふりをしていないだろうな。

 咄嗟に俺はいつも先輩たちがやってるように、スキー客目掛けて右手を翳した。

「数馬!見て!」

 その中には複数、紅くチカチカと光る人間が見えたのだった。

 数馬は俺の口を塞ぐように右手を顔に近づける。

「たぶんあいつらはそうだろう。ただ、向こうが何もしない限り僕たちから手を出すわけにはいかない」

「捕まえられないってこと?」

「ああ。あいつらはたぶん魔法軍の軍人だ。魔法軍も軍隊の一部だから治外法権を盾に逃げられるだろう」

「ここまでわかってて捕まえられないなんて・・・」

「あいつらは絶対夜明けに動き出す、そこを撃破すればいい」


 俺は納得がいかない、という表情をしていたらしい。亜里沙が寄ってきて俺の肩を叩く。

「あんたも少し仮眠取りなさい、海斗」

「寝てる場合じゃないような気がして眠れねー」

「明日のために力を蓄えなさい。あんたの取柄は体力だけなんだから」

「そうはっきりいうなよ」

「あんたが大人しく仮眠取ってくれればここまで言わない。あんた、猪突猛進型だからね」


 亜里沙の言い分はわからないでもないが、すぐそこに敵と思しき奴らを見たのに、捕まえられないというジレンマが俺を眠りに誘わないのは当たり前のことで、ベッドに入っても中々俺は寝付けなかった。

 とはいえ、仮眠は仮眠。

 夜中の2時過ぎになると俺は数馬に起こされた。

「海斗、海斗。起きられるか。一旦交代だ」

「ああ、数馬か。わかった、今起きる」


 幸いにも雪は降っていなかった。吹雪に邪魔されたら相手の立ち位置が見えなくて、俺のようなペーペー魔法師は魔法を相手に当てることができない。


 当てるといえば、『デュークアーチェリー』でのワンの演武は本当に持てる力を最大限引き出したものだったのか。逍遥(しょうよう)にもそれは当てはまるのだが。

『バルトガンショット』だって俺は出来る限りの力を出したけど、あの2人が本気で試合に臨んだかどうかなんて誰にもわからない。

金メダルに拘らなかったとすれば、自分の力を全て見せないための逆パフォーマンス、大いにあり得るじゃないか。


俺は寒い中で白い息を吐きながら身体を動かして寒さ対策を行っていた。

それでも、凍てつく空気はすぐに水分を凍らせてしまう。身体から出た汗さえも凍るような気がして、俺は汗をかかないようなストレッチに切り替えて身体を動かし続けた。


俺たちを縛り付けていた夜の(とばり)は段々とその色を変え、いくらか空が白んできた。仮眠を取っていた人たちが次々と起きてきて「Hello」と互いに挨拶している。

光里(みさと)会長が皆を集めて大声で叫ぶ。

「相手が危ない魔法を使う際には、破壊魔法や消去魔法も致し方ないとの結論に至っている。皆、自分の命だけは絶対に守るように」

俺たちはジャンプ場の上空で飛行魔法と隠匿魔法を使って身を隠しながら、いつ敵が姿を現しても平常心で戦えるよう魔法の訓練を行う。さすがに破壊魔法と消去魔法は無理だったが。



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