GPS-GPF編 第9章 イタリア大会~GPF 第12幕
目を開けるとそこにはホームズがいた。ロープに繋がれたまま。
周りを見回すと、そこは紛れもない俺の部屋の中だった。
「ニャー」
ひときわ大きな声で鳴くホームズ。彼の目の色は、普段の黄色系に戻っていた。
思わず独り言が口をついて出る。
「ホームズ、全日本の時は浮遊して国分くんのとこにいったんだ。瞬間移動じゃない」
またもや大きく鳴くホームズ。
まるで、「そうか」と肯定し返事してるかのような鳴き声。
ホームズ。
可哀想だけど、魔法無しでこの部屋にいるときはロープに繋いでおくよ。必要になったら瞬間移動すればいい。
ごめんな。
俺は餌場と水を確認後、また学校に戻ることにした。
『紅薔薇の中庭に行く』
ホームズの方を向きながら低い声で呟くと、また風が俺を襲った。ホームズは風に巻き込まれていない。それを確認して俺はまた目を閉じる。
目を開けた瞬間、俺の前に広がった風景はやはり学校の中庭だった。
ここなら人通りもほとんどないし、急に現れたからと驚く向きも少ないだろ。なんつったって、魔法科高校なんだから。
俺が思うに、EVの中で亜里沙やサトルが使った魔法、俺がリアル世界から戻るときに使った魔法とは少し違う気もするけど、これで、自由自在とまでは行かなくても、ある程度は自由に動ける。聖人さんや数馬のように世界を股にかけるにはまだ魔法力が足りないから無理かも知んないけど。
いつの日かもっと魔法力が付けば世界中を飛び回ることも不可能ではないはずだ。
俺は昇降口から校舎に入り、生徒会室へと歩いて行った。
サトルに離話すればそれでいいかなとも思ったが、GPFのためにお願いすることだから直接生徒会室に出向き、理由を説明すべきだろうと考えたんだ。
GPFが行われる札幌への移動日まであと10日。
俺に残された時間は少ない。
生徒会室に行くと、サトルが笑顔で迎えてくれた。
譲司もサトルと一緒にアリーナの予約をしてくれていたようだが、南園さんと絢人はいなかった。
そうか、GPF組の沢渡元会長、光里会長、南園さんは練習に励んでいるんだ
市立アリーナの予約時間までサトルと譲司が時間を割いてくれて、俺たち3人は井戸端会議しながら『デュークアーチェリー』の姿勢を見てくれた。
話題は、今時季旬なGPSとGPFのこと。
ロシアのアレクセイとフランスのクロードが、禁止魔法使用やの他者への禁止薬物投与で失格になり俺は5位でGPSを通過した。
決してGPSの成績が芳しかった訳でもないが、サトルも譲司もすごく喜んでくれた。
逍遥の1位通過は皆が期待していたところだし、南園さんのGPS通過も妥当といわれる中、俺だけがみんなの心配の種だったらしい。
そりゃまあ、魔法を始めて7~8か月でGPFというビッグタイトルに片足突っこめるのは光栄なことだし、自信にも繋がったのは事実だ。
ただ、7位からの繰り上がりだから決して自慢できることではなく、幸運が重なっただけだという俺の意見に2人は異論を唱えなかった。
そんな井戸端会議の序でに、譲司は俺を生徒会室のソファに転がして肩甲骨のマッサージまでしてくれた。
何ともこれが夢見心地。
俺がバランスボールを日課としているからか、筋肉のつきかたが変わってきたと譲司が驚いていた。なんでも、上半身と下半身のバランスが整ってきたんだとか。
俺自身はそんなに違いを感じていないんだが。
でもソフトを使用した昨日の練習ではコンスタントに20分で50枚を超えるようになったし、バランスボールの成果が上がっているのかもしれない。
数馬がそばにいないのは多少気になるけど、俺の周囲には何人もの応援者がいてくれる。心強い応援団。彼らの応援は確実に俺のメンタルに効いていて、それだけで頑張ろうという気力をキープできる。
今日の生徒会室での井戸端会議が新たな俺の活力になり、また前に進む原動力になったのは間違いない。
俺は二人と別れ生徒会室を出ると再び中庭に行き、瞬間移動魔法で市立アリーナへ向かうべく、低い声で口にした。
『市立アリーナのロビーに行く』
またしても竜巻のような風に守られ、俺の身体は市立アリーナのロビーに降り立った。
うん、横浜市内ならどこでも瞬間移動できそうだ。
俺が降り立った周囲には誰もいなかった。良かった。人間の姿が急に姿が現れるなんて傍目には何のミステリーかと訝られてしまうだろう。それとも、この世界では瞬間移動が当たり前で、急に人間が姿を現したとて誰も怪事とは思わないのかもしれない。
GPFが終わったら、どこまで行けるか数馬や逍遥と練習してみよう。今はまだ。GPFの練習が先だ。
ソフトが必要なのかと思ったら、市立アリーナでは『デュークアーチェリー』の練習施設が完備されていた。今時季は世界選手権の新人戦を志す者たちの練習の場でもあるらしい。競技日程としてはGPFが先行するため、俺の場合、優先的に予約を取れたらしい。
アリーナの受付に名前を伝えると、スタッフさんが練習場まで俺を案内してくれて、頑張ってと激励の言葉をもらった。
練習場でも、俺が着くなり前に練習していた人が場所を譲ってくれた。
好奇の目で見られるのかと思いきや、皆、俺に対し応援の言葉こそあれど、紅薔薇の生徒のような敵意は全く感じられなかった。皆、紅薔薇よりよほど親切だ。紅薔薇では、俺は贔屓された第3Gの生き残りだから。
だからこそ、こうして俺を応援してくれる人のためにも俺は結果を残さなければならない。
円の中に入り、出てきた的に対し姿勢を整える。
第1の矢を人さし指デバイスから的へと放つ。
ドンッ!
重々しい音を立てて、矢は的のど真ん中を射た。
周囲から漏れ聞こえるおおーっという歓声と溜息が入り混じり、練習場内に拍手が起こった。
その拍手に応えるかのように、次々と的が現れ俺の放つ矢はその度にど真ん中へと突き刺さる。
10分間で約30本。矢は全てど真ん中に入った。
自分でも初めての成果なので俺も少し興奮していて、よっしゃ!と小さく拳を握りガッツポーズする。
最初から見ていた人もいれば、後から加わった人もいたのだろう。ギャラリーから大きな拍手が再度巻き起こり、俺はへへっと頭を掻きながら四方に向かって頭を下げた。
でも、こんな枚数でスペインのホセに近づけるとは思わない。
俺はもう一度、今度は20分でどれくらい行けるか、姿勢の良し悪しを自分で認識しながら、また挑戦した。
10分までは完璧な姿勢で50枚連続ど真ん中に刺さった矢。
しかし10分を過ぎると、俺の悪い癖が出始めることも承知。
ギャラリーも静まり返り俺の演武を見つめていてなんだか恥ずかしいのだが、それはGPFも同じことで、GPFのギャラリーの方が数は多いはずで。
明に言われた指示をアレンジして10分経ったところで姿勢を直し、あとは肩に力を入れないように、上から撃ち下ろすように演武を続けた。
20分で90枚ど真ん中。ど真ん中を外すたびに心無いギャラリーは騒ぎ立てる。この騒音ともいうべき音を自分の中で受け止めて流す気力も同時に持ち合わせなければ。
度重なる試合で俺が得た教訓でもある。
今日の練習は30分と決まっているので、俺は帰り支度をして練習場から出ようとした。
「明日も来るのか!頑張れよ!」
俺は思わずうるっとして後ろを振り返れずにいたが、涙をようやく堪えて声のした方を振り向いた。そちらには笑った顔がたくさんあって、手を振っている。俺も手を振りながら何度も頭を下げた。
応援の声に見送られながら、俺はアリーナの受付まで戻った。
スタッフさんも俺の練習を見てたようで、興奮して握手を求めてくる。
あの・・・俺、まだまだだから。まだGPFで勝ち抜いたわけじゃないから、また練習に来ます。
それにしても、GPS大会は日本中に発信されていて、みんながそれを見ているのだということを再認識した。
学校で練習してる分には集中できる環境ではあるけれど、それは多分かごの中での練習であって、今日のような本当に見知らぬギャラリーがたくさん集まるのがGPSなりGPFという試合だと思う。
俺はアリーナから外に出ると、『紅薔薇の生徒会の隣のトイレに行く』と瞬間移動魔法を唱えた。
そのとおり、一瞬にして俺は広瀬同化魔法でみんなが大騒ぎしたあのトイレに移動した。トイレに移動するのも聊か笑いの種には間違いないんだが、離話するよりは正式に依頼した方がいいことだ。
何を依頼するかって?
市立アリーナや県立体育館での練習場のキープだよ。
見知らぬギャラリーが多い方が実戦として与しやすい。
ソフト使うより以前に、練習場が準備してあるし。
かえって、アリーナの練習場が取れない時に紅薔薇の体育館を使う方が理に適ってるように思うんだ。
間違ってないだろ?
数馬はおそらく何かの準備に遑が無いのはわかってる。それは決して数馬自身のためではなく、俺のためだろう。GPFには出場決定であり、あとはGPFで何位になるかの違いだから。
それにGPFが何位でも、世界選手権や新人戦は予選会があるって噂だし。
数馬の魔法力からして、彼が出てもおかしくないと俺は思ってるけどね、本人が魔法力を否定してるから、大会に出る気はないんだろう。
とにもかくにも、ひとりでも気負いなく練習し、成果を出せるようにすることが今の俺には必要なのだと思う。
アリーナで本気で練習したあとだったから、ぼーっとしながら生徒会のドアを思いっきり開けると、目の前に見えたのは沢渡元会長の顔だった・・・。
さーっと冷や汗が出る。
生徒会では会議を行っていたらしく、皆揃い踏み。
ヤバイ。
どんな理由つけてこの場をやり過ごそうか。
あ、そうだよ、アリーナの予約をできる限り入れて欲しいってことだ。
「申し訳ございませんでした」
俺は深々と頭を下げ、一旦廊下に出ようとした。
「待て」
沢渡元会長は俺のことになると興味を出す。ってか、亜里沙と明がお目付け役として沢渡元会長を選んだのかもしれない。
「どうした、八朔」
「いえ、大したことではないのですが。そもそも、生徒会にお願いするべきことではありませんので」
「それでもここに来たには訳があるのだろう?どうした」
「あの・・・GPFに向けて、市立アリーナと県立体育館の予約をできる限り取って欲しいと思いまして」
「大前は何をしている。本来なら彼の役目だろう」
「数馬は今、別の視点からGPFなど俺の魔法力を総合的に検討しています。それでこちらに伺った次第です」
沢渡元会長は少しだけ笑みを浮かべた。でも、目が笑ってない・・・。数馬に対し、良い印象を持っていないのだろうか。ちょっと心配になった。
「いいだろう、もう10日しかないしな。岩泉、栗花落、手分けしてアリーナの予約をできるだけ取ってくれ」
サトルも譲司も、事務的に返答する。
「承知しました」
俺はその、承知しましたという言葉が好きではないが、いまここでどーのこーの言える立場ではない。
サトルは市立アリーナ、譲司は県立体育館にスケジュール確認してくれたが、県立体育館は練習場こそあるものの先着順を優先し、GPFのためという理由は通らなかった。一方市立アリーナは今日のように30分ほど毎日、時間を取ってくれた。
「市立アリーナ、10日後のGPF開始まで毎日取れました」
サトルの言葉に、生徒会の室内からほっとし雰囲気が見て取れた。
県はケチだなあと思ってしまった俺だが、県立体育館で練習している連中も、市立アリーナで練習してる連中も、1月に行われる世界選手権や新人戦出場に必要になるかもしれない予選会のために練習しているのだということを瞬時に思い起こした俺は、市立アリーナを選んだ連中に申し訳ない気がした。
「すみません、ここにきてあの者たちの練習時間を削ってしまいました」
俺は心から反省したのだが、沢渡元会長はそっけない。
「何、あの連中にもいい勉強になるだろう。県立で練習している連中は、いい手本を見損なったわけだ」
「自分は手本になるような魔法の使い手ではありません」
「それより、1月に予定されている予選会は何やら不穏な空気が漂っていると聞く。今練習しているのは、皆50m先の的だろう?」
あ、やっぱり1月に予選会あるんだ。
「はい、そうです」
「新人戦の『デュークアーチェリー』の的は100m先になるという噂があるのだ」
「えっ」
驚きのあまり、声を詰まらせる俺。
50m先でさえ的外すのに、100m先なんて矢が届かないよ。
「心配することは無い。今のは噂段階だからな。とにかくお前は今の練習法を続け、GPFに乗り込め」
「はい、承知しました!」
なんだかんだで、俺も承知しました、なんて言葉使ってるし。
これ以上何か考えたら読心術の矢が乱れ飛びそうなので、俺は早々に逃げることにした。
「ありがとうございます」
回れ右して出ようとする俺の手をとり、サトルが立ち上がった。
「GPFでも選手やサポーター、生徒会が合同で移動します。のちほど詳細を発表しますので」
わかった、とアイコンタクトでサトルに返事をした俺は、そのまま生徒会室から廊下に出た。
ああ、もうめんどくさい。
学校内で魔法使うとバレるって聞いたことはあるけど、今日はもう疲れた。中庭から瞬間移動魔法で部屋に戻ろ。
やっとこさ中庭に着いた俺は、いつものとおり低い声で行き先を呟いた。
『紅薔薇魔法科寮へ行く』
前はホームズが一緒だったから寮という呟きで済んだけど、どこの寮か言わなかったら他の寮に行く可能性だってあるよね。
と頭で考えてる間に、身体は寮の玄関に戻っていた。そうか、前は部屋を指定したんだっけ?
ま、いいや。
寮の廊下をちんたらと歩き、自分の部屋に着いた。
ホームズ、抜け出してないよな。疲れていながらもそれだけは心配になる。
鍵を使って部屋を開けて中に入り、また閉めたドアの鍵をかける。
「ホームズ、ホームズ」
「なんだよー」
目の前に現れたホームズは、またもやオッドアイになっていた。ぬぬ、魔法使ってなにしてんだよ。
「これからここに客が来る。俺のオッドアイのことは絶対言うなよ」
そういうとにこやかに笑い、元の目の色に戻りニャオーンと鳴く。
なんだ、誰が来るんだ。
ホームズの言葉を聞いて俺が着替えないでその場に立ち尽くしていると、部屋をノックする音がした。
「はーい、誰~」
「僕だよ、数馬」
久しぶりの数馬の声。
俺はすぐにドアを開錠し数馬を迎え入れた。
「忙しいのはわかるけど、学校くらい顔見せればいいのに」
「悪い悪い。ちょっと学校にも行ってなくて」
「そんなにハードなことなの?」
なるほど、ろくに飯も食ってないのか、顎のあたりがまたシャープになった気がする。数馬は元々痩せてるから、これ以上痩せたらスケルトン。骸骨になるよ。
数馬は少し上機嫌で口笛なんぞ吹きながら、部屋を見回した。
「猫を譲られた、って聞いたけど。名前、ホームズだっけ」
「あれ、言わなかったっけ」
「聞いてない」
俺はホームズを数馬に紹介しようとベッド界隈を探した。
「ホームズ、ホームズ」
呼びながら気付いた。猫の名前をホームズと口にしたのは、数馬だ。俺が言う前に。
はて。何で知らんふりする。
そのとき、ホームズがベッドの毛布から顔を出した。
見た目はとっても可愛いハチワレ猫だ。
「ホームズ、おいで」
俺が呼ぶとホームズは起き上がったが、数馬を見た瞬間、物凄い勢いで威嚇し始めた。
こないだの逍遥なんてもんじゃない。
数馬は近づこうとしたんだけど、ホームズはバリバリと爪とぎに懸命になっている。ああ、先週買った爪とぎがもう使えなくなった・・・。
でも変だ。ホームズなりの意志表示か、来るな触るなと爪を立てているのがわかる。
俺ですら抱っこできない。
ホームズがこんなに怒ったのは初めて見た。
「ご機嫌斜めのようだね」
「うーん。逍遥くらいのモンなんだけどな。フーシャー威嚇されてんの」
「猫にも好き嫌いはあるのかもね。それとも、僕が嫌な臭いつけてるのかな。病院とかさ」
「そうなの?」
「うん、大体の猫は病院の臭いが大嫌いなんだ。痛い事された場所、って覚えるらしい」
「へー」
「この猫の得意魔法は何なの?過去透視とかしないよね」
ホームズがニャーニャー鳴いて、できるかそんなもーんと・・・。あ。俺、ホームズの心の中がわかるわ。
でも、数馬にはホームズや俺の心の中がわからないようで、何もツッコミはなかった。
「さて、近頃の練習風景を聞こうか」
俺は、体育館で邪魔が入ったので市立アリーナで練習を始めたこと、GPF開幕前までずっと市立アリーナで練習を続けること、あとは寮に戻ってストレッチやバランスボール、姿勢矯正であと9日を過ごすことを切々と説いた。
その奥底には、サポーターなんだから少しは面倒見やがれと言う嫌味も入ってるんだが、数馬はモノともしないでGPFまでそのまま練習をして欲しいとほざいてる。
げーっ。
まあ、頼りすぎちゃいけないし、いつか独り立ちするのが流れとしても、GPFまであと9日だよ?あと9日くらい面倒見てくれてもいいじゃないのさ。
でも、最後まで数馬は俺の心を読もうとしなかった。読んでるのに無視した可能性もある。それって、どっちでも変わらないでしょ。
数馬は皆が帰ってくる時間は廊下にも出たくないと言って、部屋の中から瞬間移動魔法使って自分の寮に戻ってしまった。
おいおい、数馬―。
でも、GPFには姿を見せるらしい。
それで良しとするか。許さないか。これ考えたって面倒だから、許すわ。
数馬が帰るなり、ホームズが俺の膝に乗ってきた。
すぐさまオッドアイになる。
「あいつ知ってる」
「数馬の事?」
「そう。あいつに拉致されかけた」
「なんで」
「あいつの過去を透視したから」
「さっき、過去透視の話数馬がしたら『できるかそんなもーん』て言ったじゃない」
「出来るなんて言おうものならまた拉致されるわ」
「数馬の過去になんかあったの?」
「あいつが自分から言わない限り、言わない」
「そうだな、俺が知ってもどうしようもないし」
「でも、あいつ嫌い。猫として扱ってくれない」
「え、だってホームズは猫だよね」
「だろ?だから海斗は好きなんだ」
また黄色い目に戻り、バランスボールに近寄るホームズ。
数馬の過去ねえ。
どういう過去か知らないけど、俺としては、ややこしい面倒事はもういいから。
俺、なんだかそういうことにばっかり巻き込まれてる。
で、命狙われたり。
平穏に暮らしたいんです、俺は。
バランスボールにうつ伏せになって四肢の力を抜いてみる。あ・・・ゴロン。
何か筋肉が緊張してるような感覚になる。
今度は仰向けになって乗ってみる。
バランスを激しく崩し頭から落ちてしまった。危ない危ない。
最後に座ってホームズを膝に乗せ、前後左右に動く。
今日はもうお仕舞にするか。
軽くストレッチをしてシャワーを浴びた。
あ、そうだ、夕食まだ食べてない。
ジャージに着替え、ホームズを部屋に残して鍵をかけた。
数馬がホームズを拉致するつもりなら、この鍵など役に立たないだろう。どっちも瞬間移動魔法できるんだから。
願わくば、数馬にはもうその気が無くなったと信じたい。