表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

第10話

ブックマークありがとうございます!



 ――とにかくマミーの方から何とかしよう。


 アシュトは微かな気配を頼りに、マミーと謎の敵の位置を探る。すると新たに出てきた謎の敵は、アシュトの後ろ後ろへ回り込もうとしていることが分かってきた。


 ――なるほど、だったら。


 アシュトは警戒しながらも敢えて敵の動きを邪魔せず、マミーが前方に謎の敵が後方に来るタイミングを待つ。しばらくして謎の敵が背後にまわったその瞬間。


 謎の敵を置き去りにして、すかさずアシュトは前方に飛び出す。暗闇の中で見えないが、このパターンではマミーは両腕を大きく振りかぶって攻撃してくることが多いとこれまでの経験で分かっている。


 ――イチかバチかだ。


 無論、確証はない。だがアシュトは自分の分析と勘を信じ、マミーが振り下ろすであろう見えない腕をイメージしてかいくぐりながら、渾身の気合いを込めて真っ直ぐに剣を突きだした。


 ――よしっ!


 腕に確かな手ごたえを感じ、アシュトはすかさず剣を引き抜きながら身を屈めてマミーの横に回る。見えなくても「そこにいる」と分かっているマミーを袈裟懸けに思い切り斬り下げた。


 斬られたマミーが倒れ伏す。同時にアシュトは腰のあたりに違和感を覚えた。いつの間にか謎の敵に回り込まれていたのだ。すかさず跳んで距離を開けながら、頭の中で紋章ルーンを描く。ルイードに教えてもらった生活スキルの『点火』だ。生活スキルの発動には少し時間がかかるが、やがて松明に再び火が灯り部屋を照らし始めた。その灯に照らされて立っていたのは――。


「へへ、悪いな」


「ルイードさん、なんで……」


 立っていたのはルイード。その手には青く光る玉が握られている。


「いやあ、全くお見事だぜ。あの真っ暗な中でマミーをやっちまうとは。まさかアンタも『暗視』の秘技スキル持ってる……そんな訳ねえよな、あはは」


それ(・・)、俺のですよね。返してもらえますか」


 ルイードの笑いを無視してアシュトが言う。ルイードが握っている玉は、アシュトがブラッドベアを倒して手に入れたレアアイテム『武道家の魂』だった。


「悪いがそれは出来ねえなあ。ここまでアンタに来てもらったのも、これを頂く為だったんでな」


 ルイードはアシュトが暗闇の中でマミーと戦う、その時を待ってバックパックから『武道家の魂』を盗んだのだ。気付けばアシュトから見たルイードの名前の表示が青から黄色に変わっていた。


「騙したんですね」


「すまねえが、それが仕事なんでな。森の中でアンタがこれを持ってるのを見て、どうしても欲しくなっちまってよ。案内してやったんだからいいだろ、これぐらい」

 

「ダメです。返してください。さもないと――」


 アシュトは剣の切っ先をゆっくりとルイードに向けた。


「おいおい、これぐらいのことで俺を斬ろうってのか? 物騒な真似は止せよ。だいたいPCを斬ったらPK認定されてレッドネームになっちまうぞ?」


「ルイードさんは俺からそれを盗んだので、俺から見るとイエローネームになってます。街の外でイエローネームに斬りつけても罪には問われない。違いますか?」


  アシュトが言うと、ルイードは口の端だけを上げてニヤリと笑った。


「チッ、そういう余分な事だけは知ってんだな。ガイドキャラに聞いたってか。ああそうだ、イエローネームは殺しても罪には問われねえ。だがな、言っとくが俺とアンタじゃレベルが違うぞ? 俺が盗賊だからって甘く見ねえ方がいいぜ」


 そう言いながらルイードは右手で腰の細身の剣を引き抜いた。左手に玉を握ったまま剣を構える。


 ――レベルが違おうが、対人戦なら負けられない。


 アシュトはそれに答えず、静かにルイードと向かい合う。RFVR(リアルファイト)で何度となくこなしてきた対人戦。システムにいくつか違いがあるとはいえ、戦い方が変わるわけではない。緊張感は感じなかった。





 ――おいおいマジか。初めて人と斬り合うってのにこの落ち着きようはなんだよ。


 ルイードは目の前のアシュトが発する雰囲気に驚きを隠せなかった。普通のプレイヤーならモンスターはともかく対人戦となると緊張する。それが初戦となれば余計だ。だがこのアシュトという男にはそれが全く見られない。


 ――リアルファイトで慣れてますよ、ってか。だがな、俺だって相当やり込んでるんだ。レベル差もありゃ秘技スキルもある。ど新人に負ける事はねえ。


 そう思いながらルイードはチラッと出口の扉を見た。ルイードは盗みはするが基本殺しはしない。PKではないのだ。アシュトを上手くあしらい、適当なところであそこからとんずらしてやる。


「ふん、黙ってるのが答えってか。いいだろう、アンタがその気なんだったら相手してやるよ。後で泣いても知らねえぜっ!」


 先手必勝。話し掛けながらルイードはアシュトの不意を突いて斬りかかった。

明日、明後日と投稿できない可能性が高いです。

すいません。

ブックマーク、本当に励みになってます。

もしよかったら評価を頂けると泣いて喜びます。

あと、もう一つ別の物語を投稿してみることにしました。

そちらは転生物で『勇者の顔も三度まで?!~3回も召喚された勇者の憂鬱』です。

そちらは今日2話投稿します。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2度召喚されて2度世界を世界を救い、その2度とも幸せになれなかった勇者が3度目の召喚。世界を救うことに懲りた彼は、超絶チートな能力を有しながらそれを隠して平凡な生活を望む。はたして彼は無事に一般人として生きることが出来るのか。そして勇者に見捨てられた世界の運命は――。
『勇者の顔も三度まで?!~3回も召喚された勇者の憂鬱』
連載中です。こちらもよろしくお願いします☆
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ