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第9話

昨日は更新できませんでした。

悲しみの塔、続編です。

「さあ、この中だぜ」


「何がいるか教えてくれないんですか?」


 アシュトとルイードは悲しみの塔6階の扉の前に立っている。その扉は今までと異なり、彫りで装飾された立派なものだ。これを見れば中にいるモンスターがこれまでの相手より強いのだろうと思わずにはおれない。


「それを言っちまうと楽しさが半減するだろ? やっぱ初見のゲームは攻略法見ずにやってみねえとな」


 そう言ってルイードはにやりと笑った。


「そうですね。じゃあ、やってみます」


「おう、応援してるからよ」





 アシュトはゆっくりと重い扉を開ける。そこはやはり真っ暗で大きな部屋だった。松明の明かりに照らされた先には祭壇とその前に置かれた2つの棺が見える。


 ――あれだろうな。


 アシュトは棺に目星をつけ、剣を構えながらゆっくりと近づいて行く。ルイードは部屋の入り口で注意深くそれを見つめていた。


 ――こっちもドジ踏まねえようにしねえとなあ。




 アシュトが近づくと棺の蓋がそれぞれゆっくりと動き出した。開いた二つの棺の中から起き上がったのは――全身に包帯を巻きつけたアンデッドだった。


 ――あれ? またミイラ?


 ――表示名をよく見ておくんなはれ。見た目は似てまっけどこれはマミー、ミイラの上位種でんがな。


 ポン吉に言われてみると、確かに名前は『マミー』になっている。上位種というからには強くなっているのは間違いないだろう。アシュトは気を引き締め直した。


 2体のマミーたちと戦い始めると、やはりミイラと違うところがいくつか分かってきた。そもそもまずスピードが違う。ミイラは非常に動きが遅く、3体に囲まれても余裕を持って戦えた。それに対してマミーも一見動きは遅いのだが、時々驚く程鋭い動きを見せる事がある。2体いる上に緩急の差が大きいので対処が難しい。


「おっと、いまのはちょっとヤバかった」


 突然の素早さで繰り出された攻撃をアシュトはギリギリの距離でかわした。大きく避ければ安全だが、その分無駄な動きが多くなって次の対処が遅れる事になる。必要最小限の動きで避け、反撃の体勢をつくる事が出来るのは格ゲーで鍛えた技だ。


「よっと」


 マミーが包帯を鞭のように使って攻撃してくるのを剣で捌く。いままでのミイラはほとんど一撃で倒せていたことを考えると、なるほど上位種だけあってマミーは強いな――そんな風にアシュトは考えながら隙を伺う。


 やがて1体のマミーが大きく振りかぶって攻撃してきた。それをギリギリで避けながら横にまわるとそのマミーの胴がガラ空きだ。アシュトはすかさず渾身の一撃をそこへ叩きこむ。剣を握った手にしっかりとした手ごたえを感じ斬られたマミーが光の粒となった、その時。


「――しまった!」


 ミイラ同様火に弱いらしいマミーを牽制するために使っていた左手の松明。一体を剣で斬り伏せて倒した隙に、逆の一体にその松明を狙われてしまった。燃え盛る松明に包帯が巻きつくと、驚いたことに包帯が燃えるどころか火が消えてしまったのだ。これがマミーの持つ特殊攻撃『灯り奪い』。火が消えた瞬間、部屋の中は完全な暗闇になる。


 ――これはマズいだろ!


 松明の明かりに慣れていたアシュトには全く何も見えない。それに対し相手は暗闇の中に棲むアンデッドだ。アシュトは漆黒の闇の中で何とかマミーの気配を探る。


 ――とにかく距離を取るしかない。


 そう思ったアシュトはマミーがいたのと反対方向に跳んで距離を取る。心強いのはルイードの存在だ。ルイードがいざとなれば恐らく助けてくれるだろう。そう思えるからこそアシュトはなんとか落ち着いて対処することが出来た。


 とりあえず距離を取った後は出来るだけ動かず、相手の気配に集中する。しばらくすると微かな音と共にマミーの気配を感じる事が出来るようになってきた。


 ――よし、出来る限り自力で頑張ってみる。

 

 マミーの気配を探りながら、今度は自分でも距離を詰めてみる。ゆっくりと扇状に動き回りながら、相手の気配を伺う。


 ――ここだっ!


 思い切って斬りつけてみるが、その剣は空を切った。次の瞬間、耳元で風を切る音がしてアシュトは必死に避ける。


 ――あぶないなあ。


 アシュトは見当を付けて斬りつけ、気配を感じて避ける。そんなことを何度か繰り返していた。


 ――ゾクっ。


 背中に今まで感じた事の無い気配を感じ、アシュトは慌てて横に飛びのいた。するとそこへ今まで戦ってきたマミーの包帯攻撃の微かな音が襲う。アシュトは何とかそれを転がって避けた。


 ――今の、なんだよっ! 


 予想外の方角からの気配に、アシュトは一気にパニックになった。残るマミーは1体のはずなのに、明らかに二つの気配を感じる。


 ――さっきのマミーが死んでなかったとか? それか別の敵がPOPしたか?!


 混乱しながらも必死に暗闇の中で気配を探る。するとどうやら二つの気配には違いがある事が分かってきた。


 ――片方はマミーだけど、もう一方は明らかに違う。もっと素早くてしなやかだ。


 マミーの動きは全体にぎこちない。だが新たな方は全く違う。正体は不明だがマミーではない何か(・・)が確実にいる。


 ――この暗闇の中で両方を相手にするのは無理だ。何とかどっちかだけでも片づけないと。


 圧倒的に不利な状況の中、アシュトはマミーに狙いを定めた。マミーの動きならもう分かっているし、新たな謎の敵に比べれば動きも遅い。


 ――よし、まずはマミーをやっつける!


次話がいよいよ悲しみの塔、クライマックス。

明日の投稿は難しいですが頑張ります。

応援よろしくお願いします。

ポイントが増えなくて心が折れそうです……(チラッ

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2度召喚されて2度世界を世界を救い、その2度とも幸せになれなかった勇者が3度目の召喚。世界を救うことに懲りた彼は、超絶チートな能力を有しながらそれを隠して平凡な生活を望む。はたして彼は無事に一般人として生きることが出来るのか。そして勇者に見捨てられた世界の運命は――。
『勇者の顔も三度まで?!~3回も召喚された勇者の憂鬱』
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