頼もしき協力者
この話の後、1~2話でこの章も終わります。
楽しんで頂ければ幸いです。
村長ドーガンが用意してくれた宿屋の一室で、俺はセシリアが目を覚ますのを待っていた。
セシリアを見守りながら、俺はこれからの事を少しだけ考えていた。
二人も協力者を倒した俺を、黒霊王だけでなく、ゴールトンやリチャーズもこのまま放置する事は無いだろう。
黒霊王は最大の障害として、ゴールトンやリチャーズの雇った衛兵は、戦力として欲してくることは間違いない。
衛兵が協力してくれる事は願ったりだが、あまり大人数になると、逆に動きにくくなる可能性がある為、出来る事なら数人ほど腕利きの冒険者を回して貰える展開が望ましい。
そっちの場合は問題無いが、黒霊王が先に俺の居場所を嗅ぎ付け、俺の戦力が揃わぬうちに仕掛けて来られるのは少しばかりまずい。
なにせ、今の俺には奴を確実に仕留めるだけの武器が無い。
「残った武器は僅かにこれだけ、俺はこれで奴を倒せるのか?」
S型魔筒がひとつに、A型魔筒がひとつ。
それと一発ずつしか弾の無いD型魔筒が二つと2発装填されたD型がひとつ。
対する敵は、現在分かっているだけでも石の魔物が十八体に、黒霊王と協力者が一人。
他の冒険者や集められて衛兵が幾らか減らしていれば楽にはなるが、逆に戦力を補充している可能背もある。
奴が俺を排除する為に全力で向かって来た場合、ブライ辺りでも仲間にいない限り、戦力的に圧倒的に不利としか言いようが無かった。
「ネリ―達がいるとしても戦力的に厳しい。俺にもう少し力があれば……」
失われた魔法……、無限の光投槍クラスまでとは言わない、せめて輝く妖精の輪舞が使えればいいんだが、無い物強請りをしても仕方がない。
俺の望まぬ未来と引き換えに手にする事が出来るという、輝く妖精の輪舞を使える力。
それを俺は望むべきなのだろうか?
脳裏に一瞬、珠の様な何かが浮かんだ。
それは一瞬で消えたが、それは心強い様な、そして同時に不安の様な物を感じさせる、奇妙な現象だった。
「今のは何なんだ?」
もう一度その珠の様な物を思い出そうとしたが、脳裏にそれが浮かび上がる事は無かった。
俺がそんな事を考えている時、「んっ……♡」と、艶めかしい声を上げてセシリアが寝返りを打った。
もうそろそろ目を覚ますのだろう。
「あれ? 私……」
薄ぼんやりと開いた瞳で、首を左右に動かし、セシリアは辺りを見回していた。
知らない場所で目を覚ませば、それは当然の行動だろう。
「おはようさんセシリア、もっとも、今は真夜中だがな」
とっくの昔に外は真っ暗で、空には星と、今日は大小さまざまな三つの月が出ている。
その内のひとつには大きなクレーターが刻まれているのだが、おそらくあれが三千年前の勇者とやらが無限の光投槍で刻んだ傷痕なのだろう。
俺の顔を確認した、セシリアは軽く俺の事を睨みながら「私…、貴方に撃たれて死んだはずじゃ……」と、呟いた。
「酷い言いがかりだな。悪い夢でも見たのか?」
俺が、やれやれといった感じで肩をすくめると、「何をとぼけて、私の身体にこんなに大きな傷を……」と言いながら、勢いよく服の裾に手を掛け、一気に胸元まで手繰り上げた。
丸見えになった右脇腹を確認したが、そこには針の先程の傷ひとつ無く、手繰り上げた服の裾から美しい形の下乳が覗いているだけだった。
若けえ奴なら、さぞ喜ぶ事だろうが、こんな状況でそんな恰好をされても、おかしな笑いが込み上げてくるだけだ。
「何処かに傷でもあったか?」
「嘘……、わたし、小さい頃にヘソの横に大怪我をしてたのに、その傷跡も消えてる……」
完全治癒はただ治癒するだけでは無く、対象にした人物の身体を一番いい状態にする魔法らしく、傷跡や病気、それに衰弱や一定以下の筋力低下すら完全に治してしまうからな。
女性であれば、破れた膜も治るらしいが、それは確かめた訳じゃないから真実かどうかは分からない。
「此処は何処? 私はなぜ生きてるの?」
「あの場所で死んだのは黒霊王の協力者、俺が助けたのは孤児共の優しいシスターさ」
俺が言った言葉の意味を、理解できないほど頭の回転が悪い女じゃねえ。
今、ここにいるのは、孤児共の優しいシスターに違いない。
「あの状態から助けたって、一体どうやって……」
セシリアも試していたが、治癒の魔法では内臓を激しく損傷したあの状態は治せないからな。
最低でも再生の奇跡を使う必要がある。
「なに、簡単な魔法でちょちょいのチョイとな」
おどけて目の前で指をくるくると回して見せた。
まあ、瀕死の人間をちょちょいと治せる魔法の呪文など、完全治癒位だがな。
「簡単な魔法って、あそこまで内臓に傷付いた状態を治せる魔法なんて、再生の奇跡位、他には……でも、有り得ないわ」
もうひとつ、心当たりがあったのだろう。
しかし、俺がそれを使えるという事を、セシリアは信じる事が出来なかった。
大体、俺が完全治癒を使えるのであれば、あのガーゴイル討伐の時に、再生の奇跡も使えないセシリアに声を掛けたりする訳がないからな。
「リューさんは魔法を使えない筈。あの時も、ネルソンの使う火弾を見て驚いてたじゃない。あれから二月位しか経ってないのに」
使える魔法の説明をする時、ネルソン達は火弾を使って見せた。
あの時は便利な魔法もあるんだな位の認識だったが、今から考えれば呪文だけでも覚えておけば、最低でも火弾位使えるようになっていただろう。
「二月か…、もうひと月ありゃ生まれたばかりの豚も出荷できるぜ。最近、魔法に興味が出てな、此処ひと月ほどでいくつか使える様になった」
豚の出荷は生後約三か月らしい。
成長が早くて良い事だ。
俺が火炎嵐クラスのノーマルスペルを使える様になるよりも早いかも知れない。
「ひと月で? あれを?」
「他にもな、光粉を纏いし、精霊の輪舞曲、我が手に集い、闇を照らせ。朧灯」
俺は呪文を詠唱し、力ある言葉と共に手の平の上にグレープフルーツほどの大きさの光の玉を作り出した
眩い光が室内を照らしたが、窓や扉は厳重に閉ざされているので外には漏れていないだろう。
「朧灯は、魔法の初歩の初歩でしょ? 早い子なら教えて貰ったその日に使えるわよ」
「悪かったな、俺はこいつが使える様になるまで一週間ほど掛かったよ」
何度も練習した訳じゃないが、結構な回数、呪文を詠唱したのは間違いない。
「朧灯に一週間? ホントに失われた魔法なんて使えるの?」
「教会の奇跡の力が無けりゃ、かなり力技になるがな。致命傷や古傷を完全に治癒する、それ以外の方法があれば教えてくれ」
今の俺なら高純度の魔石が十個もあれば、レプリカの完全治癒を使えるだろう。
今までどんなに無駄に魔力を使っていたか、さっき使った時によくわかった。
差額の魔石は高い授業料だったが、最初から十個程度で済んでいれば、俺は真剣に魔力の流れを制御しようとはせず、あそこまで魔力の流れを理解できなかっただろう。
「本当に完全治癒を使えるのね。もしかして他の失われた魔法も?」
「それはまだだが、無限に魔力がありゃ輝く妖精の輪舞も使えるだろうよ」
今の状態で試せばもしかしたら使えるかもしれないが、使う魔石の数はおそらく五十を超える。
金貨五百枚の攻撃魔法など、確実に使えると分かった上で、さらにいえば、余程の緊急事態でなければ使えない。
「使えるという事は、最低でも頭に展開用魔法陣が浮かんでるって事よね?」
「当然だ、それが浮かんでこない魔法を使えるとは言わん。何故かしらんが、俺は失われた魔法と相性がいいらしい」
炎華菊はそこそこ高レベルの魔法だから仕方がないが、ノーマルマジックは俺に向いていないのかもしれない。
まあ、朧灯の例もある。
何度も練習していれば、いつかは脳裏に展開用魔法陣が浮かんでくるだろう。
「リューさんになら、最初からすべてを話しても良かったのかもしれないわね。実は……、んっ!!」
俺はセシリアの口を右手で塞ぎ、左手の人差し指で自分の唇の前に人差し指を立てて、「誰かが近づいてくる」とセシリアに小声で伝えた。
廊下が軋む音が部屋の前で止まり、夜中であるにも拘らず、部屋のドアがノックされた。
「こんな時間に部屋を訪ねる野暮は誰だ?」
「オレはこの地区の警備を任されている、衛兵隊の隊長ホーネットだ」
なるほど、昼間の一件から俺の存在を知り、マラカ村かどこかでに駐留している衛兵隊が押しかけてきた訳か。
こいつが本物かどうかは知らんが。
「ひとりか? 足音は複数だったが」
「耳が良いな、もう一人、ラベンダーという魔法使いを連れている」
ラベンダーという女魔法使いは確か、神聖な光の剣というレプリカが使える、ゼーマンの他、一人の魔法使いか。
まさかそんな魔法使いを、こんな場所で遊ばせているとはな。
「おまえ達が本物だという証拠が無い、何かそれを証明する物は無いか?」
「オレが偽物で、お前を殺すつもりならノックなどしないさ。仕方がない、ラベンダーの下着で…も……、っ!!」
ドアに何かをぶつける音がしたが、おそらくラベンダーという魔法使いがホーネットという男の頭を扉にぶつけたのだろう。
ホーネットとか名乗った男は冗談のつもりだったんだろうが、まあ、それが容認される程、世の中は甘くない。
「お前のいう事ももっともだ、今、閂を外す」
宿屋の部屋の扉には、盗賊や強盗などを防止する為、窓やドアに閂が用意されている事が多い。
魔法という存在がある為、極稀に閂ごとドアを破壊して侵入する者もいるが、そういった場合は流石に諦めるしかないだろう。
こいつが本物のラベンダーを連れているのであれば、扉ごと閂を破壊する事など造作も無い。
「開けたぞ、入って来ると良い」
「……開いてないぞ」
閂を横にスライドさせたが、完全に引き抜く前に動きを止め、こいつの出方を確かめただけだ。
もし、こいつが襲撃するつもりなら、閂を外した瞬間に思いっきりドアを蹴破る事だろう。
しかし、その時に閂が残っていれば、最低でも足にダメージを与える事が出来る。
「すまない、端が引っ掛かっていたみたいだ。これで大丈夫」
こいつはゆっくりとドアを押し開けた。
衛兵という話を信じてもいいだろう。
「今度は本当だったみたいだ。用心深いんだな」
「気が付いていたのか。試して悪かったな」
殺気は無い。
仕掛けて来る事は無いだろう。
それにこいつが協力者の一人であるなら、ベッドに居るセシリアを見て表情を変えるに違いない。
「信じられないんだが、お前が協力者と石の魔物を撃破したって聞いている。いったいどうやったんだ?」
それはお前らのやり方が間違っているからだろう。
あんな罠の張り方をして、引っかかる奴などそうそういるか。
「なに、襲撃のパターンを読んで、次に襲われそうな村を見張っていただけさ」
「そんなのが分かるのか?」
襲撃された村で話を聞き、状況を調べて行けば気が付きそうなものだがな。
まあ、不本意ながら協力者の中に、知り合いが二人も混ざっていた事が大きいのは確かだが。
「ダマでロン牌を狙っているようなもんさ。麻雀をやってりゃその位は身に着くぜ」
「賭け事は苦手でね、確実な方法しかやらない主義だ」
賭け事が嫌いな奴が俺に協力を求めるのか…。
「なるほど、それで街で網を張って待ち構えるより、俺を餌にして黒霊王を誘き寄せようって腹か」
「理解が早くて助かります。協力、して貰えますよね?」
人の悪そうな顔で笑いやがる。
そういう顔をする奴、嫌いじゃないぜ。
正直、腹にある程度の何かを持っている奴で無けりゃ、味方にするにしても心許無いからな。
それに此方の戦力が整っているのならば、その方が話が早い。
「戦力次第だ。何人集められる?」
「この村に誘き寄せるとして、元々拠点にしてたマラカ村にも衛兵を残す、オレの他に冒険者が三人ほどだ」
「三人か……、そいつらの腕は信用できるのか?」
掻き集められている冒険者達なら、石の魔物用の剣や槍などを支給されている可能性がある。
その武器を持つ冒険者たちがハロルド達なら、腕利きでなくても信用できるんだがな。
「ネルソン、ロイド、それとホークスっていう名の冒険者だ。そこそこ有名らしいから、期待は出来るだろう」
「ネルソンたちか?! そりゃ心強い」
以前に石の魔物であるガーゴイルを撃破した実績もある、奴らならしくじりはしないだろう。
俺は誰にも気が付かれない様、セシリアの顔に一瞬視線を流した。
表情が変わっていない所を見ると、ネルソンたちが黒霊王の協力者という事は無いんだろう。
「もう一つ確認したい事があるんだが、そっちの魔法使い。本当にお前があのラベンダーなのか?」
「疑いたければ疑えばいいでしょ? あなたにどう思われようが、私には関係ないもの」
こいつ、恋人や想い人以外には興味を全く示さ無いタイプか。
面倒くさそうな答え方をしやがる。
「噂じゃ、神聖な光の剣を使えるそうだな? 本物かどうか知りたいから、ちょっとここで呪文を詠唱してみないか?」
「呪文を? なかなか面白い事を言うのね」
表情が変わった。
俺を見下してはいるが、俺が何をするのかにほんの少しだけ気を引く事が出来たみたいだな。
「発動まではさせなくていい。どうだ? 出来るか?」
「いいわ。どうやって確認するのか知らないけど、試してみればいいわ」
ラベンダーは右手を軽く上げ、「神の聖剣、光の刃、偉大なる聖人にその力を授け、忌まわしき魔の物共を、十の剣にて打倒さん……」と呪文の詠唱を始めた。
「なるほど、神の聖剣、光の刃、偉大なる聖人にその力を授け、忌まわしき魔の物共を、十の剣にて打倒さん……」
ラベンダーの詠唱に合わせ、覚えたばかりの呪文を詠唱した。
脳裏に展開用魔法陣が浮かび、輝く妖精の輪舞時とは違って、何処にどう魔力を流せばいいのかは即座に理解できた。
おそらく、魔石が二十個もあればこの魔法を使えるだろう。
しかし、発動方法の力ある言葉を確認した時、俺はこれが神聖な光の剣では無い事に気が付いた。
「これ、オリジナルの方じゃねえか。お前、神聖な十の剣も使えるのか?」
俺がどうやってこの呪文の正体を見破ったか、魔法使いであるラベンダーは即座に理解した。
「これの展開用魔法陣が脳裏に浮かんだの?」
「相性が良くてな、魔力不足で使えはしないが」
「宝の持ち腐れだわ……。勿体ない、と言っても、わたしも同じなんだけど」
俺が失われた魔法と相性がいいと気が付いて、態度を軟化させたようだ。
こいつは、魔法使い……、特に失われた魔法を使える人間に興味を持つタイプか……。
「使えるのは神聖な光の剣の方か?」
「そっちは得意よ。連続でも五回は使えるわ♪」
レプリカであっても、失われた魔法の消費魔力は大きい。
並みの魔法使いでは、使用回数は精々その半分だろう。
魔石を使って魔力を回復させれば可能だが、冒険者にはそんな事は無理だ。
こいつ位の高給取りならば、魔力回復用に魔石をいくつか持っていてもおかしくはないが、俺の様に六十個も高純度の魔石を持ち歩いていないだろう。
金貨六百枚分、こいつの年収が噂通りでも、そう簡単に払える額では無い。
「五回か、意外に少ないんだな……」
失望したような俺の呟きに、「切り札中の切り札よ。石の魔物だったら風穿波辺りでも十分でしょ?」と返してきた。
石の魔物であれば、結構な距離があったとしても風穿波が直撃すれば一撃で粉々だろう。
「確認できているだけで石の魔物が18匹はいる筈だ。ま、狙う首はひとつだろうが」
風穿波の消費魔力も少なくはないだろう。
そういえば、俺は自分の魔力が枯渇し、魔法が使えないといった感覚を覚えた事が無い。
今まであったパターンは全て、魔力を注ぎ込もうとして、貯める時間が不足するといったケースが殆どだ。
オリジナル版の完全治癒を使った時も、魔力が枯渇していた訳では無い。
注ぎ込む魔力の量が、圧倒的に少なかっただけだ。
まるで、バケツの水をスポイドで吸い出しているかのように……。
「どす黒い黒霊王のお腹に、わたしが綺麗な光の剣で飾り付けてあげるわ」
「首だけは残せよ、ゴールトンにも言われているだろうが……」
雇い主であるゴールトンを呼び捨てにした時、ホーネットという奴が渋い顔をした。
「ゴールトン卿を呼び捨てにするのは……」
「あいつと俺の仲だ、かまやしないさ」
まあ、ゴールトンはそのうち俺の義理の父になると言っても、殆どの奴はその話すら知らんだろうからな。
「そう言えば、名前を聞いて無かったな」
「アーク商会のリューク、といえば、少しは聞いた事があるだろう?」
「アーク…商会………。あ…あの時の…」
アルバート子爵家と、アーク商会の蜜月ぶりは、知る者も多い。
なにせ、小さな商会の頭に過ぎない俺を、アルバート子爵家が開いた舞踏会などに招いていたんだ、普通ではありえない。
とはいえ、それを知るのはアルバート子爵家の分家筋の人間位だから、このホーネットも、分家筋の誰かなのかもしれないな。
「へえ、貴方がリュークさんだったのね。それじゃあ、先日の教会の件は貴方で、使った魔法は完全治癒だったのね」
「教会の奇跡の力を借りりゃ、使えるんだがな。残念ながら、何も無い場合は使えない」
魔石も無けりゃな。
教会以外の場所でも使えると、喧伝する必要はないだろう。
「本当に魔力が少ないのね。魔法の勉強を始めたのはいつなの?」
才能がある者なら幼少期から魔法アカデミーに通い、魔法を覚えつつ魔力を高めていく。
練度もそうだが、魔力の総量もある程度は使用して回復というプロセスで伸びていくんだろう。
今とは違い、あの当時は魔法アカデミーもかなり荒れており、まともに勉強など出来なかっただろうが。
「ひと月ほど前だ」
ひと月と聞いたラベンダーが驚き、そして目付きが完全に獲物を狙う猛禽類のそれに変わった。
こいつ、思っていた以上に危険な奴だったのか……。
「………本当に勿体無いわ。でも、産まれて来る子供に小さい時から教えていれば、すごい魔法使いになりそうね~♪」
「こいつのいう事が理解できないんだが、お前は分かるか?」
「オレも以前は目を付けられていた。ご愁傷様………」
ホーネットという奴も結構強力な魔法が使えるのか。
それとも、それはこいつの勘違いだったのか……。
「悪いが俺には婚約者がいてな。家庭志望なら、子供が生まれるまで待つんだな」
「だ・い・じょ・う・ぶ。子供さえ仕込んでくれれば、私がひとりで育てるから♡ これで高給取りなのよ♪」
「全然大丈夫じゃねえよ!! とりあえず、そんな話はあの黒霊王の処理が終わった後だ」
黒霊王の処理が終わりゃ、俺はトリーニに戻り、もうこいつと会う事など無いだろう。
「そうね、私の魔法で、貴方に黒霊王と協力者の首をプレゼントするわ♡」
「そいつは楽しみだな……」
押しかけて来ても、ゴールトンやリチャーズと繋がりを持つ俺を相手になど出来まい。
何せこいつの雇い主だ。
「オレ達も今日からこの宿に泊まる。ネルソンたちも、もう別の部屋で休んでいる」
「準備の良い事で。俺の居場所が知れれば、数日中には襲いかかって来るだろうな」
「此処まで邪魔されたら、どんな馬鹿でも放置はしないだろう」
このまま戦力を削り続ければ、やがてあの黒霊王の手持ちのコマは無くなる。
そうすればあの黒霊王に協力していた奴も、手のひらを反して切り捨てにかかるかもしれない。
そうなった時、こいつはトリーニに攻めてくるかもしれないが、それこそ自殺しようとするも同然の行為だ。
「意趣返しにトリーニを襲おうとしても、絶対に無理だろうしな」
「何か策が?」
「幾つもな。竜種がダース単位で攻めて来ても、トリーニは落ちないだろうぜ」
あの街に氷結系の魔法使いだけで何人いると思っているんだ。
あいつ等が集団で一か所に向けて魔法を放てば、永久凍土が出来上がるぞ。
当然、そこにいる敵など生きてはいまい。
さて、黒霊王はどう来る?
おそらく次の戦いが、あの黒霊王やその協力者との決戦になるだろう。
読んで頂きましてありがとうございます。
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