表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/38

石の魔物

 細かい点で、あれ? となる所もありとおもいますが、後の章で触れて行こうと思っています。

 ヒロインの殆ど出ない作品ですが楽しんで頂ければ幸いです。

 ブックマークをしてくださっている方、ありがとうございます。

 ブライのいう事は大体理解できた、正に鬼畜の所業であり、黒霊王(こくれいおう)と名乗る男は愉悦(ゆえつ)の為だけに人の命を弄ぶ腐れ外道だ。


 魔物など使わなくても人が苦しむ姿が見たいのならば、戦場(いくさば)跡やその周囲の村を訪ね歩けばいい。


 それだけでも悪意と殺意を持って人が殺し合えば、どれ程の事が出来るか、()というほど知る事が出来る。


 戦傷に苦しむ者、食糧を根こそぎ奪われ餓える者、家族の遺体の前で嘆き悲しむ者、侵略してきた兵に犯され心が壊れた者など、この世の地獄を存分に目にする事が出来るだろう。





 俺が若い頃、この城塞都市トリーニ周辺も治安が悪く、すべての家の領地が現在のロドウィック子爵家の領内以下の状態だった。


 隣国の領地と直接接しているのはアルバート子爵家の領地だけだが、幸運にも当時の様な()()の無く、攻め難い城壁に囲まれたトリーニに仕掛けてくる物好きはいなかった。


 それでも国境近くの村や町で小競り合いは起き、戦場となった村や町の住人が犠牲となった。


 俺も様々な用で何度かその現場に足を運んだが、そこは当時の俺でさえ目を背けたくなるような酷い有様だった。 


 現在はアルバート子爵家が当時とは比較にならぬほど力を得た為、当時小競り合いを繰り返していた隣国は王都に使者をだし、莫大な貢物を支払い不可侵条約を締結したという話だ。





 城塞都市トリーニでは盗賊ギルドが幅を利かせ、若い娘を質に取る高利貸し、スリ、強盗などによる人死にが日常茶飯事で、本来それを取り締まるべき衛兵の質は悪く、犯罪者たちは野放し状態だった。


 城壁の外も酷い有様で、街道だけは律儀に整備されていたが、それでも魔物が多発する地域は道が歪んでいた。


 衛兵が魔物討伐に向かうのは二~三カ月に一度で、しかも衛兵の練度が足らず質も悪い為、討伐で発見した魔物を取り逃がす事も多かった。


 取り逃がした魔物は時折群れを成し、さらなる脅威と化して村や畑を襲った。


 冒険者ギルドは乱立し始めていたが腕利きの冒険者は少なく、依頼料も微々たるものだったので、村人の為に命を掛けて魔物に立ち向かう冒険者は本当に僅かだった。





 時折思い出す前世の記憶と、生まれつき持っていた()の良さで九死に一生を得たのは一度や二度じゃない。


 俺が和紙の制作拠点に選んだ村は魔物の出現率が低く、また姿を見かけた時でも、俺の力で退治できそうな場所にしていた。


 あの村で俺が追い出されなかったのは、襲ってきた魔物を村人と協力し、何度も退治した事も大きかった。


 もしあの村で黒霊王(こくれいおう)とやらに同じ事をされていたら、おそらく俺もブライと同じ様に奴の首を狙っていた事だろう。





「耳を洗いたくなる様な話だな。そいつが連れているといったローブ姿の仲間は、この石の魔物だという事か」


 魔物だとばれぬ様にローブを被せ、自身もその特徴的な姿を隠す為にローブを被る……。


 その恰好をした上で、この街の近くで冒険者だと名乗れば、それ以上詮索される事は無いだろう。


「ああ、奴が今連れているのが、()()()()()かは分からないが、こいつが爪で人を襲う石の魔物だ」


 確かにあの時、この石像は爪を伸ばしてネルソン達を切り付けようとしていた、しかし、話を聞く限り細かい点が幾つか違うようだが。





「襲いかかる直前、もう一匹が咆哮を上げていたんだが、こいつが今までも喋ったりした事はあったか?」


「アキの村を襲った時には一言も声は出さなかった。数年前に公園に置かれた時には男の声に反応したローブの女性が頷いて返事をしたので、十分可能性はある」


 バージョンアップ…、そいつは魔物の改良を繰り返すタイプか、面倒な事この上ないな。


 だが、奴がロドウィック子爵家の領内で行動を起こすのは間違いないだろう。


 殆ど毎週、討伐部隊が巡回し、多くの冒険者がうろついているアルバート子爵領やレナード子爵領では行動を起こせまい。





「これは構造からみてゴーレムとガーゴイルを掛け合わせたような魔物だね。会話が出来るなら将来、色々な使い方が出来そうだ」


 こんな魔物を簡単に量産出来たら、奴は国の一つや二つ滅ぼしているだろう。


 それに奴がこの魔物を一度にどのくらいまで使役できるのか気にはなるな。





「村を襲った時、こいつが何体いたか分かるか?」


「毎回違っていたが、村で虐殺を行う時は最低十体。街の公園に石像に模したこいつを設置した時は二体だった。討伐に参加していた狩魔者(しゅましゃ)が居れば防げた事件だったんだが」


 今の所、さっきの話から確認できるレベルで最大四十体か。


「それだけの数を作るには相当な魔力と材料が必要だと思うよ」


 確かアキの村で手駒を失って、再び活動するまでの期間が三か月。


 僅か三ヶ月でこいつを少なくとも九体は製造できるって事か。





 あの時の二体の石の魔物、ネルソン達だからこそ冷静に対処でき、誰も怪我ひとつせずに済んだが、平均的な冒険者なら腕の一本くらい失っていてもおかしくない。


 それどころかフェイントに引っかかり、命を落とす冒険者すらいるだろう。


「ブライ、おまえは()()を何体まで相手に出来る?」


「この爪タイプなら三体までは同時に相手が出来る。このタイプだけなら十体まで一人でもどうにかなるんだが、あの石に変える光を放つタイプがいると状況次第だ」


 前回の石の魔物討伐位ならこいつひとりで楽勝という事か。


 ジンブ国出身の冒険者は強いと聞いてはいたが、まさかそれ程までとはな。

 あの時、腕利きだと感じた俺の()も、まだ鈍っちゃいなかったという訳だ。





 この街で奴が行動を起こせなかった理由が大体予測できた。


 トリーニ内部に他の石像を侵入させる事も出来ず、厳重な警備体制を見て策を練り、偶然ハンカの街で視察に来ていたフェデーリに接触でき、捨て値同然で石の魔物を売りつけた。


 しかし、私邸で暮らすフェデーリの周囲には殆ど人がおらず、しかも寝室に続く廊下であった為、襲いかかろうにも滅多に人が通りかからない。


 ひとり、ふたり殺す為にこいつを用意していた訳では無いのだろうから、もっと多くの人が近付くのをずっと待っていた。


 石の魔物が襲いかかるその条件が揃ったのが、俺達が倉庫に足を踏み入れたあの時という事か……。


 街で起こる事件の反応を見て次の手を打つつもりが、二体の石の魔物をあっさり失い、あの石像を難なく倒すネルソン達をこの街の平均的な冒険者と勘違いし、手を出せなくなったのだろう。





 おそらく、ビリー商会が少女を運搬していた馬車を襲ったのは、奴が連れている石の魔物に違いない。


 御者と逃走防止用に雇われていたゴロツキを爪タイプで斬り殺し、逃亡する少女は真珠タイプが光を放って大理石像に変え、髪が蛇のタイプを使い馬車の中で震えていた少女を珠に封じ込めて、石に変わり行く様を眺めていたのだろう。


 監禁した連中を尋問した時、御者も含めて四人用意していたゴロツキは馬車の周辺で肉片に変わり、あの少女の姉の他に三人の少女が大理石の像へ変わり、馬車の中で六人の少女が石に変えられていたという事だった。


 大理石像に変えられた少女達まで裸だったのは、商会の奴らが捕まえた娘が逃走しない様に身に付けていた衣服を全て剥ぎ取り、申し訳程度に小さなボロギレ一枚だけを渡していたと言っていたしな。


 死刑が執行されてなければあの事件について、ビリー商会の連中からいろいろ話が聴けたんだが、奴らは今頃刑場の何処かに埋められているからな……。


 という事は、先日起こっていた事件の殆どに、()が関わっていたという事か。





「そろそろ僕はもう少し()()を研究したいんだけど」


 相変わらずゼロスの奴は黒霊王(こくれいおう)などには興味を示さず、喋って動く石の魔物にだけ興味を示していた。


「破片が手に入ったら此処に持って来ればいいか?」


「そうだね、()()()()()()があるとうれしいな」

 届けた()()()()では不満だったようだな、その部分だけでも研究には十分だろうが。


「とりあえず()()は依頼料と、研究費だ」


 皮袋から金貨を二十枚取り出し、ゼロスの手の上に乗せた。


「いつもすまないね」


 ゼロスが研究に戻った為、俺はブライを部屋の外に連れ出した。





 貴族なども最近は優秀な魔法工芸研究科の人間を囲い始めている。


 多くは魔石を使用した兵器の開発だが、魔法工芸自体が研究段階な為、機材がまだ揃っておらず、冶具(じぐ)冶具(じぐ)をまだ作っているような段階だ。


 当然研究費は湯水の如く使われ、その経費は貴族から支払われる金貨だけで賄われる筈も無かった。


 何処の領内であっても、最終的に一番多くの金貨を積んだ者がその技術の権利を得る。


 これは各貴族や大商会の間で結ばれた暗黙の了解であり、技術の権利を巡って魔法アカデミーの裏で行われている、青天井のポーカーの様な物だ。





読んで頂きましてありがとうございます。

行間等の問題で、読みにくいなどの意見も届いてますので、少しづつ改善したいと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ