1話
「とりあえずはセーフゾーンに行ってみるか、そこに他の人も集まるだろうし」
現在の状況に困惑しながらも隆久は無人の電車から降り、安全だというセーフゾーンに向かった。
都心がドームに覆われて数時間後、ほとんどの《Player》達はセーフゾーンに集まっていた。
建物の入口付近では、自衛隊の服を着た人達が話し合いが行われる事を呼びかけていた。
それに参加すべく、人々は今から話し合いが行われるらしい場所に座り、セーフゾーン内を見ていた。
「都心って割には人数が少ないな…選ばれたっていうのは本当だったのか」
セーフゾーンについた頃、内部には自分と同じように、放送を聴き集まったであろう人々が居た。
しかし、後から来る人影は都心という割にはまばらでもあった。
周囲も彼と同じく座って周りを見たり、ふさぎこんでいたりと人同士の会話はあまり無く、皆もうすぐ始まるであろう話し合いを待っているようだった。
「あーあーテスト、テスト…よし、使えそうだな!では入口にて呼びかけを聞いたと思うが、今後についての話し合いを始めたいと思う。」
声の先では30代後半くらいの屈強そうな男が、拡声器を使い話し合いの開始を呼びかけていた。
男の後ろには、同じ自衛隊の服を着た仲間らしき人達が並んで立っていた。
「私は武田 剛司、陸上自衛隊に所属している。皆、突然の事で混乱していると思うが、その解決の為、解決策を考えるためにこれからの生活について話し合おうと思い、この場を設けさせて貰った。」
話の要点は、今はとにかく情報が足りないということだった。
彼等はこの異常事態を解決する為、いち早くこのセーフゾーン内の探索をしていたらしい。
そこで食料、水、トイレや寝る場所、人が生活するのに必要な物は粗方、この場所にあるという事がわかった。
しかし、現在の状況の解決策となる物やその手がかりとなるようなものは一切無くただ、居住区として特化した場所だという結論が出たらしい。
男の話を聴き、同意する人も多く周囲を探索をする必要がある事が、最初の課題であるとし話し合いが始まった。
数十分が経ち、話題ががセーフゾーン外の探索をすることにまとまってきたところ、20代くらいの金髪の男が立ち上がり声を荒げた。
「ちょっと待て! お、俺はここから外になんてでないぞ! 都心でこんなことしてるんだ、すぐに助けだってくるだろ!」
その男の発言を皮切りに今まで話を聞いているだけだった人々がざわつき始めた。
「確かに…」「別に探索なんてしなくても衣食住には困らないしなぁ…」「第一、いったい誰が行くんだよ…」
だんだんとそのざわめきは広がり、ドーム内に響かせてた。
「ゴホンッ…少し、いいだろうか?」
皆がざわつく中、剛司と名乗った男が再度拡声器を使い、わざとらしい咳払いでやめさせた。
「皆が言いたいことは十分に理解している、しかし現状救助が来るという確信はない、その上先程の放送に、この施設は安全だ。衣食住は保証する。とあったがそれは信じられるのか? 私たちを今、この状態にしているのは紛れもなく奴だろう、そんな奴の発言は果たして信用に足るのだろうか。」
男が話し始めても多少ざわついていた
人々は、この言葉を聞きハッとさせられていた。
そうなのだ、ここは確かに日本であり、その中心地だ。しかし、この状況を見れば直ぐにでも理解に足るだろう。
この場所の他は無人であり、無機質な壁でできた《DOME》に囲われている。
この状況は既に、今までの常識が通じない場所、まるで異国のような場所と化していると。
皆がそれを改めて理解したところで、話し合いは自衛隊により進められ、途中に多少のいざこざはあったものの、先程までよりスムーズに進行していった。
話し合いの結果
このセーフゾーンには未知の驚異であるBOTは来ないらしい、よってこの施設を拠点にドーム内を探索することにしようという事に決まった。
「ーーでは外への探索は私とその他自衛隊、そして希望者でしようと思う。希望者はこの後私の所へ来てくれ、以上だ。」
話し合いが終わり、男は部下らしき人達と外での行動について話し合い始めた。
序盤は説明が多いですが、話が大きく進むのはもう少し先になりそうです。