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どこにいこう  作者: 狐孫
6/11

小学校と送り迎え

 あれから何度か引っ越しを繰り返し。

私は、小学生になった。


小学校は、山の麓の高台にあり水害の心配は皆無だそうだ。

山からの土砂災害も起きない場所らしい。


門の左右に学校のシンボルツリーとなる樫と楠の巨木がある。

小学校の前進の師範学校が出来る前からここにあるらしい。


結構古い木造校舎に、体育館、武道館、プール、運動場に中庭にビオトープと名前の付いた観察池。

近くに綺麗な小川があり、校庭の端には井戸まである。一応井戸に落ちないように対策はされている。

トイレやビオトープに使う水は井戸水をポンプでくみ上げているらしい。


ちなみに木造校舎のトイレは普通の水洗トイレだった。



期待と不安に胸を膨らませた入学式。

気合いを入れて髪型を垂髪と言う、後ろで括っただけの髪型にしてみた。


父は仕事で来られなかった。

親戚とも縁を切られたみたいで、近所の親切なおばさんが代わりに連れてきてくれている。

おばさんも用事があるらしく、帰りは一人で帰らないと行けない。


結構大きい体育館での校長の長い話…。

退屈になり近くの子に「学校で一番長い話をするから校長なのか?」と真面目聞いたら笑われてしまった。

「姫様、面白い。」

今まで姫だけだったのが、様付けになってしまった。


長い話も終わり、教室に移動して担任の先生の話を聞く。

プリントや学校で必要な備品、教科書などの品々が配付される。

一つ一つ確認する作業が結構大変そうだった。

ここでも何故か、周りの子達が「姫、確認するねー」と言って確認してくれる。

その作業を、眺めるしか出来ない。


「あなた、何様よ!」と、どっかのお嬢さんが文句を言ってくる。

どこかのお嬢さんと判断したのは見事な縦ロールが目に入ったからだ。

親の趣味なのか美容師の趣味なのかこの少女に縦ロールが妙に似合ってるのは確かだった。。


「え?姫だから当たり前じゃん。」と、周りがキョトンと答える。

またか、またのキョトンか!


同級生達は配付物の確認を終えて興味深そうに、こちらを見ている。


言い合いが始まろうとしたとき、先生が止めに入った。

「そろそろ。自己紹介を始めましょう。」

そう言って自己紹介が始まる。


私の番になり、簡単に自己紹介をする。

「川崎静恵です。

 父は普通のサラリーマンで母は亡くなったので居ません。

 趣味は神社でのんびりする事と草木を愛でる事です。」

一応母が居ないことを先に言っておけばあとでの面倒は避けられる気がする。


ずいぶん枯れた趣味ねーと担任が呟く。

この担任、母が亡くなっている事はスルーか…。


姫てお母さん居なかった?

周りの子達が不思議そうに首をかしげる。

まるで何度か会っているような反応だ。

いや、君ら知らないだろう私も写真でしか知らないし。と心の中で突っ込んだ。


あのお嬢さんの番になった。

「八杉 瑠里です。

 他人に押しつけて努力しない人は嫌いです。」


「他には?」先生が聞く。


「そうですね。

 趣味は読書です。習い事が多いので遊ぶ時間がほしいです。」


やっぱり、どこかのお嬢さんだったようだ。

姫呼びしてこない人だから、ちょっと興味あったのだけど。


休み時間になり、私とそのお嬢さん以外は集まって何か話している。

何これ、私たちはぶられている?最近話題のいじめだろうか?

少しわくわくしていると。


八杉さんが話しかけてくる。

「静恵さん。あなたも一人なのね?」

「そう?たぶん違うと思うけど。」


少し話してみたら。

八杉グループと言う会社の社長令嬢と言うことが分かった。

無い胸を張って、貴女より上なのよとか言われた。

分からない。社長の娘って偉いモノなのか?


「社長の娘って偉いの?」

疑問をぶつける。


「ええ、そうよ。」

そうなのか。


一人急いでこっちに来る。

確か、田中君。

「姫、大丈夫?」

「ええ、話していただけなので。」

「僕、田中 仁て言うんだ。」


「うん。」

「それで、みんなで話し合ったんだけど。

 姫を送り迎えする事になった。」


何それ、集まって話し合ってなんで送り迎えなんかされることになるの?

首をかしげながら聞いてみる。


「田中君が?大変じゃ無い?」

「毎日、僕だけじゃ無理だから何人かで交代でするみたい。」

「そうなの?」

「うん。いま順番で揉めてる。」

クラスの総意らしい。


八杉さんが奇声を上げる。

「なにそれ、意味わかんない!」


まさに、私もそう思う。


「え?姫だから当たり前じゃん。」

また、その超論理が炸裂。

何でも、姫だからで済んでしまうらしい。


「私はしないわよ!」


「どうせ、八杉は車で送り迎えして貰うんだろう?」

「ええ、そうよ!」


なんか仲よさそう。

「二人は知り合い?」

「家が近所なだけだよ。」

「仁とは、幼馴染み。」


「そうなんだ。田中君は、八杉さんと来た方が良いんじゃ無いの?」

「車で来るなんて、嫌だよ。」

「そうなんだ。」


帰り道、クラスメイト4人に囲まれて変える。

男3人に女1の組み合わせだ。


一人が私の鞄を持ってくれている。

寄り道も出来ず、家にたどり着く。

「ありがとう」と、言ってみんなと別れる。


帰ってきた父に、今日の事を報告する。

渾名が姫呼びされている事以外は、黙っている。


少し考えてみても異常だから。


久しぶりに、お姉ちゃんに逢いたいな。

もう何年も逢っていない。


父にもお姉ちゃんを探すのはやめるように言っている。

父が探すたびに、引っ越ししている事に気がついたから。


何かしら関係があると見て良い。


翌日、朝迎えに来た。


父は、友達が出来たんだね~と嬉しそうにしていた。

「姫、一緒に行こう。」

昨日の帰りと同じ4人体制。


また、私の鞄を私に持たせてくれない。

「姫は、持たなくて良いの。」

「何で?、みんな自分の鞄を持ってるのに、

 私が持たなくて良い理由にならない。」


「え?、だって姫だから。」とキョトンとしている。

小学校2日目で私は説得を諦めた。


来る途中、一緒に来ている女の子に、

色々聞いてみた。

送り迎えの時に一人女の子が入っているのは、

周りから見てカモフラージュすること。

男子だけでは信用できないと思う女子達の想いと

私の話相手的な役割があるそうだ。

一人鞄持ちで、二人が警護役らしい。


・・・そう言うアニメか番組、ゲームがはやっているのだろうか?


学校に着くと八杉さんが絡んできた。

クラスで唯一姫と呼ばず名前で呼んでくる不思議な子。

若干面倒なので、適当にあいてをしている。


姫という渾名は他のクラスや学年にも広がっているようで、

上級生が興味津々で見に来る。


女子の先輩から可愛いと抱きしめられたりする。

一度、連れ去られそうになったが、クラスの子達が護ってくれた。

女子の先輩ちょっと怖い…。


男子の先輩には、「姫っぽい?、いやまさしく姫だ!」と訳の分からないことを言われる。


あからさまに敵意を示してくる、先輩達も居る。


靴箱から靴を盗まれて捨てられたり。

モノを投げつけられたり。


私に当たる前に同じクラスの子が盾になったり、

捨てられた靴を探して綺麗にしてくれたりする。


そして私が知らない間に、クラスの子達が犯人を突き止めて居たりする。

先生に告げ口するわけでも無く反撃するわけでも無い。


ただ、「あの先輩は近づかないようにね~。」と軽い注意を促してくる。

私も事が大きくならないに超したことは無いので、黙っている。

クラスのみんなのおかげで実害が殆ど無い。


盾になって護ってくれた子の手を握って、「ありがとう」と言うと。

すごく照れた感じで「うん。」と一言。


帰りに一緒に帰ってくれる子に聞くと。

しばらくは、女子達に英雄扱いされるらしい。


・・・意味が分からない。

確かに、体を張って護ってくれたのは嬉しいけど。

同じクラスメイトには私が原因で怪我をしてほしくない。


そんな感じでのほほんとしていると。


数ヶ月後には、敵意をむき出してきた先輩達は引っ越ししていった。

何でも、身内に良くない事が立て続けに起こったり。

親の勤めている会社が倒産して転職先が遠いとか。

前時代的な、荷車での夜逃げもあるらしい。


引っ越ししていく先輩達が私を見るたびに、酷くおびえた目をするのはやめてほしい。

私が裏で何かしたのでは無いかと言いがかりを付けてきた先輩も居たが、私は何もしてない。


その言いがかりを付けてきた先輩は、今は事故で遠くの総合病院入院している。


護ってくれた子達の家は、小さな良いことが起こっているらしい。

偶然て不思議だな~と思う。


「姫は、座敷童ではないか?」と、その親たちには言われているようだ。


八杉さんは、特に変わりなく。

突っかかってきたが、田中君に幼馴染みをもっと大切にするように言って、送り迎えの役割から外すと。

八杉さんと普通に登下校するようになった。

八杉さんも来るまでは無く歩きで楽しそうで何より。

突っかかってくることも減った。それはそれで少し寂しい。


一年が過ぎて、二年に上がる。

この小学校では、二年毎にクラス替えがあるとのこと。


帰りに公園や神社に寄り道は出来るようになった。

ただその場合は、送る役目の子達が8人体制になる。

多い方が、安心できるそうだ。


あと、一緒に遊びたいのも理由の一つにあるらしい。

相変わらず私は応援しか出来ないけど、わいわいするのはちょっと嬉しい。


学校の近くには、いくつか神社が建っている。

境内で遊べるぐらい広い。


公園に遊具は無いが、シンボルツリーがあり、清水が流れてて涼しげ。

夏に、みんなでスイカを冷やして食べるのが楽しかった。


この清水には蛍も居るらしい。

夕方来られなかったため見られなかった、次の蛍の季節がが待ち遠しい。



同じシリーズの、枝葉もよろしく~。

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