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どこにいこう  作者: 狐孫
2/11

引っ越しと新しい家

 久しぶりに追加しました。

 お祭りでお姉ちゃんに逢ってから、私は一月ほどお姉ちゃんに逢いたいと無理を言って父を困らせた。


 仕事で疲れている父の休みの日に無理を言って神社に連れて行って貰った。

桜と祭りが終わった神社では、日常の空気を取り戻し穏やかな時間が流れている。

それは嬉しくて、少し寂しくも思う。

境内を父と歩きながらキョロキョロと辺りを見渡し父におんぶして貰う。

父の身長で高くなった視線は嬉しい。

小さい声で「お父さんありがとう。」と言う。

「・・・うん。」


 次の日、一人で外に出て迷子になり、交番のお世話になった。

交番から連絡を受けて仕事場から駆けつけた父は、疲れた顔をして少し寂しそうに怒った。

「お父さんの言うことを聞いて良い子にしてないと、あの娘にも会えないかも知れないよ?」

「今の静恵はお父さんの言うことを聞けない悪い子だ。」

そう父に、言われたので一人で外に出て探すのは諦めた。

泣きながら「ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」と言って小さく震えながらつぶやく。

その様子を見た、お巡りさんに私が泣き止むまで父は怒られていた。

お礼を父が言って交番から渡しを引き取り家路につく。

「解せん。」

父が交番をでて一言つぶやいた。その意味私には分からなかった。

父に言っても会えるか分からない。それでも言わなければ会えない気がした。

父は困った顔で、「しばらくは、会えないと思う。でも、静恵が良い子にしてたらきっと会えるから。」

そう言った父の顔には何か決意の様なものが浮かんでいた。


 それからの私は、良い子で居るように心がけた。

その甲斐もあり父も少し安心した様子で私のためにお姉ちゃんを探してくれているようだった。


 家は平屋の一戸建てで庭が付いている借家だった。

私の最初の記憶はこの家の庭で転んだ所から始まっている。

庭には母が植えた紫陽花や楓など見て楽しむものから、ミントや山椒などの薬味が植えられている。

父はあまり手入れが上手くないらしく、私が危なくない程度に綺麗にしている。


 さらに一月が過ぎた頃、父が急に家を掃除し始めたかと思うと、

トラックからどっかのおじさんやお兄さん達が、家具や荷物を箱詰めしたり、トラックに乗せたりしている。

不安になって父に聞いたら、引っ越し屋さんと言うお仕事の人たちで、引っ越しのお手伝いをしてくれているそうだ。「引っ越しのお手伝いのお仕事をお願いしたから、料金、つまりお金を払ってお礼しなきゃね。」

父は私に説明してくれた。お引っ越しのお仕事の人かと感心した。

「?」私は首をかしげる。

「どうした?」

「お引っ越しって?」

「うん、ごめんな。父さん転勤になっちゃって。」

「転勤?」何それ美味しいの?状態である。

「父さんの仕事場所がちょっと遠くになった。」


「・・・」

目の前が真っ暗になった。


「お庭に居る。」

私は、お庭に飛び出して足を縺れさせて転けた。

転んだ痛みも忘れて呆然とする。

このままではお姉ちゃんに会えないかも知れない。

泣きそうで、庭にうずくまっていると優しい声がする。

驚いて顔を上げると、お姉ちゃんが居た。

「静恵ちゃん、どうしたの?」

お、お姉ちゃんーー。抱きついて泣いた。

「静恵ちゃん落ち着いて」

柔らかく抱きしめてあやすように、優しくなでてくれる。

お姉ちゃんからは懐かしい良い香りがする。

男性の父ではこうは行かない、父の体は筋肉と骨で硬いから…。

落ち着くまでしばらくかかった。

「すぐに逢いに来られなくてごめんね、静恵ちゃん。」

「ううん。せっかく逢えたのに引っ越しなの…」

辺りを見渡して納得したように言う。

「そうみたいね。」

「静恵ちゃん、私も引っ越ししないと行けなくなったの。

 しばらく静恵ちゃんと逢えなくなっちゃった。」

「引っ越し?転勤?」

「転勤では無いのだけど、しばらく隠れなきゃならないみたい。」

隠れなきゃいけない・・・、隠れん坊ぐらいしか思い浮かばない。

隠れん坊なら探したら見つかるかも知れない。

探そうと密かに決意する。

「静恵ちゃん、探さなくてもしばらくしたらちゃんと逢えるから。

ちゃんと、お父さんの言うことを聞いて良い子にしてるんだよ?」

「うん、わかった。」

「また逢えるように、おまじないするね。」

「うん!」

「(私の)愛しい子、

 姫神やその眷属から愛されるように。

 十数年後には、(私の)良い娘になるように。」

 そう言って前と同じように、両方の目を覆い隠すように手をかぶせたあと、その手でゆっくり頭をなでる。

「ちょっと早いけど、しばらく逢えないし良いかな。」

翠は、これからについて思慮を巡らして結論を出したようだった。

「静恵ちゃんもう一度おまじないするね。」

「うん!!」

「(私の)愛しい子、(翠命の名において)

 この力が貴女の護り照らす標となって貴女を育み(私と)ともに歩めます様に。

 そして、貴女が幸せになりますように。(力と静恵への想いで結ぶ)」


 両方の目を覆い隠すように手をかぶせた瞬間に、静恵は、すべてを染め上げるほどのまぶしい光を感じた。その光は色でたとえると、白くて青いそれでいて赤く黄い黒色だった。(結局の所、静恵は自分の瞳に焼き付く光が何色か分からなかった。)


 いつの間にか気絶していて、翠お姉ちゃんに膝枕されている。

とても気持ちが良く、お姉ちゃんの香りで確かな存在を近くに感じる。

暖かい時間、そうまさに至福のひととき!

その至福のひとときは、長くは続かなかった。


「じゃあ、またね~」

静恵が起きてから少し話して、翠は帰って行った。


 それからまもなく、お昼を終えて車で引っ越し先へ向かう。

お姉ちゃんに逢えて嬉しかったせいか疲れて眠ってしまい、引っ越し先の家に着く頃には、外はすっかり暗くなってしまった。

 新しい家は、父が先に掃除したり泊まれるように整えていたようで、段ボールさえ無ければ、小綺麗な様子だった。

寝ている間に買ったのか、ジャンクフードとインスタント食品で夕食を済ませる。

あと二日ほどかけて、片付けをすると言っていた。

「お父さん、私もお手伝いするー。」

少しはお手伝い出来るかも知れない。

父は、嬉しそうに頭をなでてくれた。


 父とのお風呂のあと、頭痛とともに目の前が真っ暗になる。

比喩ではなく目を開けてるのに見えない。

初めての体験で怖くなって、大声で父を呼ぶ。

父が慌てて、様子を聞いてくる。

私は、混乱した頭で父に説明をする。

 要領を得ないが目が見えてない事が伝わり救急病院に連絡する。

視界が戻らないまま、父に連れられて遠い救急病院へ向かう。

何も見えないのがこんなに怖い事だとは思わなかった。

父に抱っこされて、病院に着くしばらく待って問診と診察を受けた。

レントゲンやCTとかも取ったらしい。結果は、脳にも何も異常は無いらしい。

原因がストレスかも知れないとの事で、様子見と眼科への紹介状を貰い説明を受けていた。

その頃私の目は奇妙なものを見ていた。

安定しない視界のなか動き回るモヤモヤや黒い影、絵本で見た小さな妖精や妖怪…。

これは夢だと父に抱っこされたまま思い寝ることにする。

お医者さんも明日には、元に戻ると言ってたし心配ないよね。


 翌日、普段と変わらず目は見えるようになっていた。

いや、普段と変わったのは病院でみたモヤモヤや、小さな妖精や妖怪たちが物陰や少し人気の無い場所にうっすらと見えるようになったことだった。小さな気配はあちらこちらにある。

特に接触も何も無いので、たぶん気のせい幻覚か何かで、目がまだ治ってないのかも知れない。

 数日後、それらは不思議なものは見えなくなった。


 新しく借りた家は、庭付きの一戸建てで昔農家をしていた家のようだ。

古い家らしく土間や竈があり、家の真ん中には黒い大黒柱がある。

二人で住むには大きな家だった。

父に聞いたらすぐに借りられる家がここしか無かったそうだ。

庭は、砂利が引き詰めてあり水はけを良くしてあるみたい。

家と外の境目には丈の低い石垣が組んである。


 新しい家を気に入るのに時間は然程掛からなかった。



まだ、あまり始まった感じがしない…。

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