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No.3

 島崎と清水の不良カップルと戦った二日後、俺はいつものように自転車で学校へと通学する。


 いやー、天気良いなぁ。ずっと空を見上げていたいなぁ、周りなんて見たくないなぁ。


 もう、本当に、今通学しているこの瞬間、俺は視線を空から外したくない心境でいっぱいだ。


「オラ、校門の前でぶらぶら歩いてるソコォ! 蓮さんのお通りだ!」 


「道を開けやがれ!」


 暑苦しい声が、俺を否応がなしに空から地上へと視線を戻す。


 俺の周りには、島崎の手下達全員が自転車で他の生徒達を遠ざけ、俺のために道を作っている。


 何がシュールかって、全員殺気立っており、目つきは相当に悪るいのだが、全員が黒ぶち眼鏡で髪型が七三分けなのである。


 島崎の命令で全員見た目を真面目君へと変えられたのだ。


「あー、いやいや君達。生徒会は生徒達を脅かす組織じゃないから。生徒達に校則を守らせるためにあるからね」


 そう注意すると、全員が素直に「ウス!」と答え、校則違反をしていそうな生徒を見かけては注意をしてくれるのだが、


「テメェ、スカート短すぎるぞ! 長くしねーと萌えねぇんだよ!」


 と叫んだり、


「何だその金髪は!? 七三に分けるぞコラァ!」


 と俺が言った事を聞いているのか聞いていないのか良くわからない。


 いやぁ、全員馬鹿で素直だなぁ。



 校内に入った俺は、生徒会室へと向かう。


 島崎と清水の処遇に関する書類を咲に渡しに行くのだ。


 もちろん、俺が生徒会室へ向かう途中も、真面目な不良達が後から着いてきた。


 生徒会室前まで着くと、島崎の手下達が部屋の扉を開け、全員が並んで俺に会釈し、部屋へと誘う。


「蓮さんが到着しました!」


 手下の一人が部屋の中にいる咲と島崎にそう報告する。


 二人は決して広くはない生徒会室のテーブルの前に座っており、咲は意地の悪そうな顔を浮かべて俺と島崎を交互に見る。


 島崎は俺を見るや否や勢いよく立ちあがった。


「蓮、来たか。登校中何もなかったか?」


 俺の前まで歩み寄ると、島崎は優しく俺の肩を叩く。


「あ、あぁ、おかげさまで」


 俺は盛大に顔を引きつらせていただろう。


 俺の答えを聞いて島崎は何度か頷く。


「……そうか。お前が無事で何よりだ」


 島崎はまるで悟りを開いた賢者のように俺へ微笑みかけた。


 キモチ悪っ! 軽く吐きかけたぞ!


 島崎の俺への態度が激変した原因は言うまでもなく、あの日戦った時だ。


 あの日冷徹マシーンと化していた俺が導き出した清水を瞬時に服従させる方法は、俺に惚れさせることだった。


 結果的に俺の手は清水に触れる事無く、変わりに島崎の体に触れてしまい、催眠術が発動してしまった。


 島崎に施した催眠術を解除、もしくは上書きできればすぐに解決できるのだが、島崎とその仲間達を生徒会の戦力に加えるチャンスと見た咲が許してくれなかった。


 道徳的考えを廃止していた俺への天罰が下ったのだろうが、正直この状況はキツイ。


「清水姉さんが到着しました!」


 すると、また島崎の手下たちが部屋の外から清水の来訪を報告する。


 清水は部屋に入ると、怒りの籠った視線を俺に向ける。


 咲の隣の席へと足を運ぶが、俺とすれ違い際に、背筋が凍るくらいに低いトーンで俺に耳打ちする。


「アンタにごーちゃんは渡さない」


 俺だってこんな筋肉ダルマいらないよ! 持って行ってくれよ清水さん!


 嘆いた所で状況が変わるわけではないのは知っているので、俺は咲に報告書を渡す。


「おい咲、本当にこいつらを入れるのか?」


 正直不安しかないのだが、ゆったりとコーヒーを飲んでいる咲は頷く。


「えぇ。この人達の退学処分を取り消しにする変わりに生徒会としてウチの風紀を守ってもらうわ」


 実に楽しそうに咲は俺を見上げる。


「これで私は事務処理に専念できるけれど、蓮君には事務も風紀管理もやってもらおうかな」


 悪戯を決行する少女のような顔をしやがる。


 くっそ、この悪魔可愛いなオイ!


 だが、隣に立っていた島崎が一歩前に出る。


「ふざけるなよ間島咲。蓮に苦労をかけるんじゃねぇ!」


「うるさい」


 怒号を上げる島崎に咲は水色の剣を瞬時に抜刀し、容赦なく魔弾を島崎の顔面に命中させる。


「ごーちゃああぁぁん!」


 涙を浮かべですかさず清水が気絶した島崎に駆け寄る。


 いやぁ、どっちが悪役なんだか。


 咲は島崎の攻撃をもろに受けて鎖骨を負傷したのだから、多少なり島崎を嫌悪するのも分かるのだがやり過ぎだろう。


 だが、咲は何事もなかったかのように剣を鞘に戻し、テーブルの上に置いてあるもう一本の剣の隣に置いた。


あれは俺が咲にプレゼントした剣だ。


「なぁ、咲。どうして俺が上げた剣を抜かなかったんだ? 剣あるなら使えよ……剣士だろ?」


 入学当初は剣士だった咲ならあの瞬間すぐに抜刀して攻撃をかわせただろう。


しかし、咲は答えず、俺の報告書を読み進める。


「お、俺がまだ頼りないからお前はあの剣を使う気はないのかもしれないけどな、俺はお前に傷ついて欲しくないんだよ」


 すると、咲は報告書をテーブルに置き、俺を見る。


「……剣に傷を着けたくなかっただけよ。あなたから貰った物だもん」


 今までに聞いたこともないような小さな声で咲が言う。


 あぁ、俺はなんて馬鹿な奴だったんだ。


 剣を抜かなかったのは、彼女なりに俺へ見せようとした愛してるのサインだったんだ。

お題に沿った短編ものを書いてみたわけですが、難しかった……

なにが難しいって短編なのにバトル物書くのが初めてだったので余計に難易度が高くなりました。

しかも短編なのにいろいろ設定を盛ってしまったような気がしないでもない……

もし楽しんでいただけたら嬉しい限りです。

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