表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くらんくらうん  作者: バラ発疹
ぶきような人々
9/62

03と少しの04

     03


 ヘイデン社の店舗は、3階建てながらも広大な敷地に建っているため、かなりの商品数を有している。

 1階は駐車場となっているので、実際は2階と3階が商品スペースとなっている。

 さらに、3階は家具や大型家電を販売するスペースで、携帯電話を販売しているのは2階部分ということになる。


「うおぉぉぉっ! でけえ店だなおい! こりゃあカッ子じゃなくても迷子になるぞ!」

「・・・・・・(驚)」

「わぁぁぁぁっ! 見てあれ! おもちゃコーナーもある! ウドレンジャーフィギュアもあるよ!・・・と言ってる」

 いなか者まるだしのはしゃぎようの三人。地元の店でこれだけ興奮できるとは安上がりこのうえない。

 さすがヒッキーとはいえ、セレブのカッ子はこの程度でははしゃがない、と思いきや。

「ぶっ! カッ子がいねえ!」どうやらあまりの広さにパニックになったらしい。

 幸いここの商品棚は低く作られているので、さまようカッ子の姿をすぐに確認できた。

「・・・・・・(呆)」

「まったくもう、ブッチョが携帯買うまでおとなしくしといてよ。・・・と言ってる」

「「面目ない……」」小学生に説教される25歳の女。

 

 まわりを見てみると、ここはテレビ売場のようだ。

「・・・・・・(喜)」

「あっ! カッ子姉ちゃんとこのテレビと一緒だ!・・・と言ってる」

「これが一番でかいテレビだな、さすがヒッキーセレブ」

「「そりゃあ毎回、その時一番の機種を頼みますから」」テレビは、そう頻繁に換えるものではないと思うが。

「テレビかぁ。そろそろ買わなきゃいかんな」

「・・・・・・(?)」

「ブッチョ、テレビ持ってないの?・・・と言ってる」

「ウチにあるテレビは厚型のブラウンさんじゃい!」どうやらブッチョの家には、地デジーコォは来てくれなかったらしい。


 ちなみに地デジーコォとは。テレビの電波が、地上デジタルというものに切り替わり、今までのテレビでは見れなくなってしまう。そのためにテレビを買い換えろ。というキャンペーンのキャラクターである。

 伝説の元サッカー選手ジーコォを起用し、大量のCMが流された。サッカーと言えば、地元チームグランドパスエイティを悲願の優勝へと導いた、元選手で現監督のスットコビッチが神である。


 余談が長くなったが。簡単に言うと、現在ブッチョのテレビは砂嵐しか映らない。

「まぁいいか。テレビなんか見られなくても生きてける」三人に苦笑されるブッチョであった。

「・・・・・・(!)」

「あっ、見て! こんな所にソファーで寝てる人たちがいる!・・・と言ってる」

「あぁ、マッサージチェアコーナーだな。ジョスコにもあるぞ」

「・・・・・・(汗)」

「こんなとこでガチで寝て、恥ずかしくないのか?こいつら。・・・と言ってる」

「みんな寝てるから恥ずかしくないんだろ? それに見ろ。店側もみぐるしいからって、ちゃんと周りから見えにくい様に配置してあるだろ?」

「「いやいや、本人達の目の前で暴言吐くのやめましょうよぉ」」

 迷惑極まりない一行である。


     04


 なんだかんだで、携帯電話売場に到着。

 電話会社別に、実にカラフルな携帯電話が数多くディスプレイされている。

「・・・・・・(笑)」

「やっぱスマホがいいよね。ゲームできるし。アンドロノイドとアイポンどっちがいいかな?・・・と言ってる」

「すまん、日本語でしゃべってくれ。横文字はわからん」じじいの様なことを言う若者である。

「「こっちのスマホは防水仕様ですよ。こっちのは私が持ってるのと同じです。新作が発売されるごとに買い換えてるんで詳しいですよっ」」次々に説明してくれる、こちらは金銭感覚のおかしい若者である。

「ちょっと待て! まずスマホってなんだ! そっから説明しろ!」

「・・・・・・(!)」

「マジで言ってんの? CMとかでもやってんじゃん!・・・と言ってる」厚型砂嵐のテレビではコマーシャルなど放映されてはいない。

 この騒ぎに気づいた店員が、説明しようとカタログを持って少し後ろで待機しているが、この異様な一行に近づけないでいる。苦笑する店員をしりめに、カッ子はスマートホンの意味から機種の説明までブッチョにたたき込んだ。

「なるほど、これ一台あれば電話もインターネットも何でもできるわけだ」

「「そうです。どのスマホにしますか?」」

「いや、どれにもしない」

「・・・・・・(?)」

「は? ここまで来て買わないのかよ!・・・と言ってる」

「おいおい、お前らフリーターの収入をなめてんじゃねえって言ってんじゃねえか!」予算オーバーらしい。


「「いや、これぐらい私が出しますよ。私と同じ電話会社なら、使用料も出します」」

「……っ!」カッ子の言葉を聞いたブッチョは、どろり……と忘れていた嫌な記憶が、膿のように出てくるのを感じた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ