第二話「正義の価値は」01とか02かも
2話「正義の価値は」
01
西暦2035年
地球から超エネルギー物質が発掘された。そのエネルギーは、宇宙を征服できるほどの力を持っていた。
その存在を嗅ぎつけた、宇宙海賊ドンゾックによる地球侵略が開始される。
宇宙海賊ドンゾックに対抗するべく、地球政府は超エネルギーを使用したスーパー部隊を開発。
彼ら5人に地球の運命は託された。
彼らに名づけられた部隊名は―――
讃岐戦隊 ウドレンジャー!!
ワーッ! と言う大勢の歓声と共に、ステージ上に登場する白い全身タイツの5人。
名前の通りうどんをモチーフにしているらしく、白ばかりで5人の区別がつかない。
「・・・・・・(叫)」
「わーっ! ぶっかけー!・・・と言ってる」と、お前はあっち側じゃないのか? と思うような着ぐるみ芸人コンビが叫ぶと。
「「わーっ! かまあげー!」」と、いい年したヒッキーセレブも負けじと叫ぶ。
その横で、無表情のままの男がポカンとしている。
「カッ子お前もファンなのかよ! 俺には5人の区別がつかん!」
「「なに言ってるんですか! 頭のマークが違いますよ。リーダーの”てんぷら”を筆頭に、”かまあげ””ぶっかけ””ざる””カレー”の5人です」」
「こんなの子供だましじゃないのか?」ブッチョは子供の頃にヒーローものの番組を見た記憶がなかった。
「「見たことないんですか?番組開始5話で地球侵略されるんですけど、そこからが神なんですよ」」できの悪いヒーローもいたものである。
カッ子の話では、地球征服を一ヶ月で達成してしまったドンゾックとやらは、まず世界の兵器を無力化。一年で全世界の生活水準を上げて、世界のカリスマとなる。
一方、地球政府から解散を命ぜられたウドレンジャー達は、ゲリラ的にドンゾック達を攻撃するのだった。
と、まさかの電波シナリオが親までもを巻き込んで大ヒットしているそうだ。
「「カリスマ”ドンゾック”と蛮人”ウドレンジャー”の人間くさい掛け合いが秀逸なんですよぉ。最後は人間の愚かさを精神世界まで掘り下げ、文学的なラストを描くという噂まで出てるんですよ」」
朝8時半からの番組らしいが、朝から憂鬱そうな内容である。
とはいえ、なぜ四人でこんなショーを見ているのかというと。
話は三日前にさかのぼる。
それは、カッ子の家に来たライ丸姉妹に「お前ら、また来てんのかよ」と言うブッチョの言葉を聞かなくなって、しばらくした時期の話。
カッ子はいつものように、近所のコンビニで食料品を買いあさっていた。
ブッチョとライ丸姉妹が来るようになってからというもの、今まで通信販売で済ませていた食料の購入を外で買うように心がけている。引きこもり脱却の第一歩らしい。
今日の購入商品は
「のりべん」ピッ
「コーラ×2」ピッ
「ポテトチップス」ピッ
「バーデンダッツ」ピッ
「菓子パン小倉マーガリン」ピッ
「てか、ろくなもん食ってねえな。高級アイスのバーデンダッツ買うあたりがセレブくせぇ」
「「!!!」」カッ子は、店員からのいきなりの暴言に絶句する。
その失礼な店員を見て、さらに驚愕する。
「「ブブ……ブッチョさんなんで、こんなところで何してるんですかぁ!」」
「あー前のバイトはクビになったんで、今日からここでバイトっす!弁当温めますか?」
「お代は、あー電子マネーね。……はいどうぞ。お前現金持たないのな」
カッ子がレジに携帯をかざすと、シャリーンという電子音が鳴る。精算完了の合図だ。
「「私お金持ち歩くの嫌いなんです。財布の中はカードと電子マネーだけですね」」
温めた弁当と、その他の商品を別々の袋に入れて渡す。初日にしては、なかなかできている。
「じゃ、バイト終わったら遊びに行くわ」
「「はい。待ってます。あっ、じゃあもっと買っていきます」」
その後カッ子は、大量の商品を持って店を出て行った。
「キミ、やれば出来るじゃないか。その前のお客様までのように失敗ばかりだとやめてもらうよ」と、奥からやってきた神経質そうな男は言う。
「はい店長! がんばります! クビにしないでください!」やはりあまり出来は良くないようである。
02
「ゴチになります!」という掛け声をカッ子に向ける三人。目の前には大量のコンビニ弁当とドリンク、そしてデザートまで並んでいる。
「「どうぞ、ちよっと買いすぎたので残してもいいですよ」」
いつもの食べっぷりを見る限りでは、いらぬ心配だと思うが。
現にものの20分足らずで、すべてを平らげてしまった。
食事をすませたライ丸姉妹は、カッ子になにかを促している。それを合図にカッ子はブッチョに話をもちかける。
「「あのぅブッチョさん、今度の日曜日ってバイトお休みじゃないですか?」」
「ん? いや、休みじゃねえけど。一応土日はバイト夜間にしてもらってるから、日中ならあいてるぞ」
「「じゃあジョスコに遊びに行きませんか?」」
「は? 買い物じゃなくて? ゲーセンか?」
「・・・・・・(頼)」
「だめ?・・・と言ってる」
「いや駄目じゃねえけど、わざわざ予定聞かなくてもジョスコならすぐだろ?」
「「あのですね、日曜日の朝9時までに行かなきゃ駄目なんですよ」」
「朝9時! ってまだジョスコ開いてねえだろ! 襲撃か? 開店前を襲うんか?!」
「・・・・・・(怒)」
「おちつけ! おまえが襲撃したところで、返り討ちにあうのがオチだ!・・・と言ってる」
「「なんの話しに発展してるんですか? そうじゃなくてですね、朝9時に着くって事は8時前には出なきゃだめなんですよ。わたし達は」」
その原因はお前だけどな。という視線をカッ子に向ける三人。
「そうだな、その時間だとバイト終わってから寝る暇ねえな」深夜のバイトが22時から翌早朝6時までなのだそうだ。
「・・・・・・(哀)」
「やっぱりダメだよね。うん、いいやあきらめるよ。・・・と言ってる」
「別にいいぜ。ちょっとぐらい寝なくたって大丈夫だろ。親と一緒に行かないって事は、その日しかないんだろ?」
「・・・・・・(喜)」
「ほんと!やった!ぜったい約束だよ!・・・と言ってる」だいぶ喜んでいるようだ。そんなに楽しいことがあるのだろうか。
「「ありがとうございますブッチョさん。よかったねライ丸ちゃん達」」
まさか徹夜でバイトした後に、あんな電波ヒーローショーを見せられるとは知らないブッチョであった。