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くらんくらうん  作者: バラ発疹
かごの中の風景
33/62

03と04で了

     03


「で、ブッチョにはいつ告白するの?」


「「ぶーーーっ!!! ななななななななななんでいきなりそんな話になるのかなぁ????」」とカッ子はお茶を吹き出しつつ動揺しまくる。

「(あれ? まだ付き合ってなかったの? それなのに同じ布団で寝たらまずいよね?)」

「「ぎゃあ! まだそのネタ引っ張るんですかぁ?!」」

「お? ”ネタ”と”寝た”を掛けてうまいこと言ったつもり? そんなんじゃ騙されないよ?」

「(てかカッ子姉ちゃん分かりやすすぎだけど……)」

「「あれれ? 私なにか悪いことしたっけ?」」と、あまりの追求に訳がわからぬカッ子。

「悪いもなにもあったもんじゃないでしょ? こういう事先延ばしにしてもいいことないよ!」

「(そうそう、このチャンスを逃すと後がないよ!)」

「「ううう……」」とカッ子が唸ったところで。

 ピンポーン!とインターホンが鳴る。

「あっ! ブッチョだ!」とライ子が叫ぶ。

「「ドキィッ!! えええっ! このタイミングでっ?!」」

「(カッ子姉ちゃん、早く出なよ!)」と丸美が促す。

「「う、うん」」と言いながらインターホンを取る。

「「は、はい、ぶ……ブッチョさん……」」

 とカッ子がモジモジしているとインターホンから。

『毎度! ミコノスピザです、宅配にまいりました!』と元気のいい声が聞こえる。先ほどライ丸姉妹の口封じのリクエストで注文しておいたのだ。

「「なっ!」」

「ぶはははは、ブッチョがこんな時間に来るわけないじゃん!」「(カッ子姉ちゃんあわてすぎ!)」と大爆笑のライ丸姉妹。

「「ううう……」」撃沈である。


 で、テーブルには大きなピザが鎮座し、その周りにはドリンク、サラダ、フライドポテトなどが設置されており、さらにそれをライ丸姉妹とカッ子が囲んでいる。

「で、ブッチョにはいつ告白するの?」

「「ぎゃあ! また振り出しですか?」」

「(女子会といえば恋バナでしょ?)」ターゲットはカッ子一人ではあるが。

「「いつから女子会に? って、女子会初めてですっ」」

「女子会たのしいよぉ?で、どうなの?」

「(てかカッ子姉ちゃんブッチョの事好きなんでしょ?)」


「「うう……はい……好きです」」屈したようである。


 それを聞いたライ丸姉妹はワーキャー言いながらはしゃいでいる。

 カッ子は相手が子供とはいえ、このような恋愛の話で友人とはしゃぎあった事がないので、なにやら今の自分が自分でないような浮遊感を感じる。

 これまで世の中をシャに見てきたカッ子にとって、この手の恋愛話は侮蔑ぶべつの対象であった。しかしその対象になってみると、なんてことはない楽しいのである。

「よし、カッ子姉ちゃん、ブッチョに告白しよう!」

「「無理です!」」即答である。

「(えー、なんでー?)」と不満を述べると。

「「もし告白してダメだったら、もうここには来てもらえなくなっちゃいますよ?」」とヘタレ発言をすると。

「え? ブッチョが断るわけないじゃん!」と断言する。

「「え? え? なんで? ほんと?」」とライ子の自信たっぷりの発言に期待してしまうカッ子。

「(ブッチョごときがカッ子姉ちゃんを振るなんて、何様って感じでしょ?)」

「「えー? そうですかねぇ? うーん」」と考え込むカッ子。その実、頭の中は混沌として考えなどまとまるはずもないのだが。

「でも可能性は低いけど、最近ブッチョも人間関係広がってきてるから、他の女に取られちゃうって事もあるかもよ?」とライ子は不安を煽る。

「(そうそう、病院でシングルマザーとかに泣きつかれたらブッチョ断れなさそう)」と丸美が追い打ちを掛ける。

「「うっ、丸美ちゃん、リアルな想像やめてください」」カッ子は冷や汗が出る。

「でもブッチョに他の彼女ができても、ここには来なくなるよね?」

「(そうなったらヤダなー、カッ子姉ちゃん絶対ブッチョをものにしてね?)」

「「ううっ、なんだか変なプレッシャーをかけられてますねぇ」」と言ったところで。

 ピンポーン! と再びインターホンが鳴る。

「ブッチョだ!」とライ子が叫ぶと。

「「そう何度も騙されません、今度はお寿司屋さんですよ」」カッ子は夕飯を作る気力が無くなったので、寿司も注文していたのである。

「「はい、どちらさまですか?」」とインターホンを取ると。


『おう俺だ、カッ子開けてくれ』とインターホンに出たのはブッチョであった。


「「えええええええっ! ぶぶぶぶぶぶブッチョさん、ななななななんで、ここここここんな時間にぃぃぃっ????」」完全パニックである。

『あぁ、今日は交代のバイトが早く来たからな。って、なんかヤな予感がするな、なにか企んでるのか?』と珍しくブッチョは警戒する。まぁカッ子の様子を見れば無理はないのだが。

「「えええっと、なんでもないですよ?どどどどうぞ」」なんでもない人間の話し方ではない。

『……まぁいいか、じゃ上がっていくぞ』


     04


「なんだ? なんかのパーティーか?」

 リビングに入り最初に目に入ったテーブルの食料を見てブッチョが疑問を呈す。

「(カッ子姉ちゃんと女子会ごっこやってたの)」と丸美が言うと。

「「ごっこ? あれはごっこのレベルじゃなかったですよぉ?」」とカッ子は泣きながら言う。

「ん? なんかあったのか?」

「あぁ、カッ子姉ちゃんがねぇ、ブッチふぐっ……むぐぐぐ……」

 となにか言おうとするライ子の口を、カッ子は着ぐるみの首の隙間に手を突っ込んでふさぐ。

「「やだなぁライ子ちゃぁん、女子会の内容はトップシークレットですよぉ?」」となんだか鬼気迫る勢いである。

 

 しばらくすると寿司も到着し、テーブルの上はさらにパーティーの様相を呈しているのであった。

「それじゃあ、かんぱーい!」というライ子のかけ声と共に、それぞれお茶の入ったグラスを掲げる。

「え? マジでなんの乾杯なの?」

 というブッチョの疑問をよそに、丸美がブッチョに質問する。

「(ブッチョって誰か好きな人っているの?)」

「「ぶーーーっ!!」」とお茶を吹き出すカッ子。

「わっ、吹き出すなよお前、って、好きな人か?」

「たとえばカッ子姉ちゃんとかー」とライ子が誘導すると。

「ん? 本人の前で言うのもなんだが、好きだぞ」などという。

「「えっ?」」とカッ子の顔が明るくなる。

「ライ子も丸美も好きだぞ。って何言わすんだよ」と照れているようにブッチョが言う。その横でがっかりするカッ子。

「いや、そういうのじゃなくて……まあいいや、じゃあ好きな女の人のタイプは?」と質問を変えるライ子。

「(お金持ちの人の方がいいよね?)」

「んー? いや、俺の稼ぎが少ないから、金持ちだと気がひけるな」

「ブッチョってあんま化粧とか濃くない人が好みじゃない?」

「でも必要最低限の化粧はマナーだろ?」

「(ブッチョ料理できるから、料理下手な人でもいいよね?)」

「仕事から帰ってきて、おいしい料理で出迎えてくれるっていいよな」

「ブッチョはファッションとかこだわらないでしょ?」

「自分はいいけど、彼女はお洒落でいてほしいだろ?」

「(ブッチョ面倒見いいから、迷子になっちゃうような子供っぽい人いいんじゃない?)」

「ないない、迷子ってガチで子供じゃねえか」

「ブッチョって……えっと……あと何かあったっけ?」

 とライ子が言ったところで。


「「わーーーっ! 悪かったですね! どうせ私は化粧っ気なくて、いつもジャージばっか着て、料理下手で、すぐ迷子になる引きこもりの暗い女ですよ! ブッチョさんのバカぁっっっ!」」とうとうキレたようである。


「ってなんで俺が怒られなきゃいけないんだよっ!」

「「ブッチョさんだって、いつも同じような格好ばっかして、料理だって見た目最低だし、すぐに怒るじゃないですか!」」

「あ? 誰もお前の事なんて言ってねえだろ! なにイライラしてんだよっ!」

「「私だって……私にだってデートに誘ってくれる人ぐらいいるんですよっ!」」

「は? だから何の話だってんだよ! デート? 引きこもりのくせにそりゃあお盛んなことで!」

「「きぃぃぃぃぃぃぃっ! よーくわかりました! よーくわかりましたよっ!」」

 と言いながらカッ子はパソコンの部屋へ駆け出す。ライ丸姉妹は、二人のガチ喧嘩にビクビクしている。

 しばらくすると、カシャッ! と奥の部屋から音が聞こえてくる。

「!!!」一瞬で状況を把握するライ子。

「わーっ! ちょっとまった! カッ子姉ちゃん早まっちゃダメーっ!」とライ子はカッ子の元へ駆け出す。

「(ちょっと、それはまずいってーっ!)」と丸美も続く。

 何事か、とブッチョもとりあえず後に続く。

 パソコンの部屋の奥には、スマートフォンを手にしたカッ子が肩を怒らせ立っている。

 カッ子は部屋の入り口に集まった三人に向かってこう告げる。


「「わたしは、あさって男の人とデートしてきます」」


 第2話了

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