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くらんくらうん  作者: バラ発疹
はじまりの日常
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04

     04


 なぜに俺は子供二人と大量のマグドの袋を抱えて一緒に歩いているのか、自分に問いかけているが、答えは神のみぞ知るということなのか。

 手をつないで楽しそうに歩く着ぐるみと女の子の姉妹を横目にため息をつく。

「・・・・・・(?)」

「どうした? 調子悪いのか?・・・と言ってる」

「おまえらに会ってからずっと調子悪いわ! つーかこんな時間にハンバーガーなんか食ったら、晩飯食えなくて母ちゃんに怒られるぞ」

「・・・・・・(笑)」

「だいじょうぶ、おかあさんのご飯は別腹だから。・・・と言ってる」

 子供は食べ盛りの育ち盛りと言うが、買ったハンバーガーはそんなレベルの量ではない。カッ子の分もあわせて12個のハンバーガーと、一人各一個づつのポテトとドリンクである。

 見たところそんなに食べそうな体つきでもない。痩せの大食いか? というより、こんな小さな頃こんなに食べた覚えが無い。

「おまえら二人とも小学生か? いくつなんだ?」

 小さいほうが両手の指を6本立てる。着ぐるみのほうはというと、指の曲がらない着ぐるみの手を見て止まっている。

「アホか! おまえは喋ればいいだろ!」と思わず突っ込むと。

「あほ言うな! 9才の4年生と6才の1年生じゃどあほ!」と叫びながら繰り出した蹴りがわき腹に入る。

「ぐほあ! いてぇ! 蹴んなクソガキ!」

「・・・・・・(怒)」

「・・・・・・」なぜかライオンは訳さなかった。

「ん? おい、今なんか言ったんじゃないのか?」

「お姉ちゃん、蹴っちゃだめだよ! って言われたんだよ!」と言いながら殴られた。足がダメでも手はいいのか?

 

 そんな調子で歩くこと15分、カッ子に教えてもらった駅前辺りにさしかかると、なにやら警察官ともめている人がいる。

「げっ! なにカッ子のヤツ警察ともめてんだ?」

 警察官ともめているのはカッ子のようなので、他人のふりを決め込もうと目をそらしていると。

「「あーーーっ! やっと来てくれたんですね。ちょっと助けてくださーい!」」メガネをかけているだけあって、視力は良いようである。

「ぶっ! 声をかけるな! 知り合いと思われるだろ!」

「「おまわりさん、この人を待ってたんですよぉ! ほんとにあやしい者じゃありませんよぉ!」」と泣きながら警察官に訴える。

「いや、だから朝の6時からずっとこの辺りをうろちょろしてて、あやしいからって通報が来たんですよ?」警察官から衝撃の事実が告げられる。

「はぁ? おまえそんな朝早くから待ってたのか? てか待ってなくたって家まで行くって!」

「「だってウチの場所忘れてるかも知れないじゃないですかぁ!」」

「いくら俺だって、そんなすぐに忘れるほどバカじゃないわ!」

 終わりそうにも無い醜い言い争いに見かねた警察官は、「もう不審な行動は控えるように」との忠告を残して見逃してくださいました。


「ったく、もしかして俺が行くまであそこで待ってるつもりだったのかよ」

「「だってせっかく勇気を出して友達になってもらったのに、来てもらえなかったらって不安だったんですよぉ」」と言ったところで、ついて来ている奇妙な子供達に気づく。

「「? えっと、この子達はあなたの妹さんですか?」」

「いや、ぜんぜん知らない子供達」

「「え? え? それって、それこそ警察沙汰なんじゃないんですか?」」

「知るか! こいつらが勝手に飯食わせろってついてきたんだよ! ついでにカッ子の分もあるからな」と言ってマグドの袋を持ち上げて見せる。

「「あ、ありがとうございます。それと、お二人さんはじめまして」」

「・・・・・・(笑)」

「はじめまして。こんにちは。・・・と言ってる」

 きょとん顔のカッ子に説明してやる。

「妹の”丸美”が言おうとしていることを、姉で自称ライオンの”ライ子”が通訳するってのが、この”ライ丸”姉妹のルールらしい」

「・・・・・・(怒)」

「勝手に変なあだ名をつけるな!・・・と言ってる」と言いながら下腹部にパンチが入る。

 いくら女の子でも9才ともなると、攻撃力はすでに笑い事ではすまないレベルに達している。度重なる攻撃に無表情のまま悶絶しているうちに、カッ子の住んでいるアパートに到着したようだ。

「「ここがわたしの住んでるところです」」

 と指差した建物は、そこに建っていたのはアパートではなく、高層マンションだった。

「……」絶句する三人。

 さらに家に入ると、そこはテレビでしか見たことないような家具や電化製品の数々。

「・・・・・・(驚)」

「うわぁ! 部屋が広すぎて怖い! テレビが壁みたい! 台所の蛇口がシャワーだ!・・・と言ってる」

 と、はしゃぎながら二人であちこち見て回っている。残念ながら、俺の思っている事は子供達が全部言っている。

「・・・・・・(楽)」

「ひゃぁ! ベッドふかふかだぁ! お風呂にテレビついてる! トイレのフタが自分で開いた!・・・と言ってる!」ライ子も思わず興奮したらしい。

「すげぇな、家賃いくらするんだ?」と思わず出た独り言にカッ子が答える。

「「ここ賃貸じゃないですよ。わたしの持ち家です」」衝撃発言。

「何年ローン?」

「「え? わたしお金借りるの好きじゃないんで、一括で払っちゃいました」」さらに笑顔で衝撃発言。

「ネトゲと株って……そんなに……儲かるの?」なんか衝撃のあまり呼吸困難に陥っている模様。

「「ネトゲはそんなにないです。どうやらわたし株の才能があるらしくて。でも今は少し抑えて月に80万位ですかね(笑)」」

 

 《(笑)ってよく見ると、なんかドラ○もんに見えない? あぁ、なんかそう見えると良くないことが起こるらしいよ、80万日以内に。》

 

「はっ! やばい! 意識が飛んで、訳わかんない幻聴聞こえた」

「「大丈夫ですか? それよりも、そろそろみんなでマグド食べましょ。あたためなおしますか?」」

 気を取り直し、あたため直したハンバーガーをパクついた。さすがに残したカッ子のハンバーガーは、なんとライ丸姉妹が半分づつ食べていた。

 全員食べ終わったところで。「食べ終わったらそろそろ帰るぞ、ライ丸。家まで送ってやるから」ときりだすと。

「・・・・・・(怒)」

「ちょっと待った! 人に変なあだ名付けといて、自分だけ逃げようったってそうはいかないぞ!・・・と言ってる」

「は?別にいいじゃねえか、お前達とはもう会うことなんてないんだからよ」

 カッ子も少し考えて。「「それはいい考えかも!」」なんてことを言う。

「いやいや、ちょっと待て……」

 すでに三人は、楽しそうに話し合いに突入していた。

 あぁやべぇ、なんかノリで変なあだ名ばっか付けちゃったけど、かっこいい名前がいいなぁ。なんて都合のいいことばっか考えていると。

「「じゃじゃーん! 会議の結果、名前が決定いたしました!」」

「・・・・・・(笑)」

「いつも無表情で、景気悪そうで機嫌の悪そうな顔をしてるから。おまえの名前は、仏頂面の”ブッチョ”できまりだ!・・・と言ってる」

「いやだブッチョなんて! そんな太った奴が付けられそうなあだ名は!」

「「残念ながらブッチョに拒否権はありません」」

「・・・・・・(笑)」

「じゃあ達者で暮らせよ、ブッチョ!・・・と言ってる」

 

 

 こうして俺は”ブッチョ”と言う名前に生まれ変わった。


 

 後に思うと、この最悪なあだ名が付いた時から、俺の本当の人生が始まったんだと思う。

 ここから始まる虚構と現実の物語。

 あらためて自分は主人公なんかじゃないと思い知らされる……。



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