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くらんくらうん  作者: バラ発疹
夢見るピエロ
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第四話「ゆく年くる年」01と02

 第四話「ゆく年くる年」


     01


 年の瀬も押し迫った大晦日での一幕。

 さすがに病院での活動も、年末は病院側に受け入れる余裕はないらしく、ブッチョはコンビニバイトに勤しんでいた。

 ホスピタルクラウンは非営利団体なので、ブッチョの収入はバイトの給料のみである。

 最近ではブッチョのジャグリングの腕も、ほどほどに上がっているようで、テンホー氏とのコンビ芸なども練習しているようだ。

 カッ子とライ丸姉妹には、ホスピタルクラウンの活動をしている事は言ってあるが、ストリートパフォーマンスすらも見せた事は一度も無い。ブッチョは、未熟な芸を見せるのが恥ずかしいのだそうだ。

 ところで、なぜクリスマスの話題を通り越して、大晦日の話なのかというと。

 クリスマスにケーキを自作したのだが、作業を分担したおかげで、カッ子の作った見た目完璧の変な味のするパンケーキと、ライ丸姉妹セレクトの珍しいフルーツ、そして味は良いが見た目最悪の創作生クリーム&盛りつけによって、カオスマスケーキになってしまった記憶は、四人から抹消されてしまったのだった。

 

 で、現在カッ子邸では、年を越す準備をしているのであっる。

 予定としては、またライ丸姉妹の両親は仕事でいないので、今日はカッ子のマンションに泊まるついでに、カウントダウン&初詣を済まそうということらしい。

「もーいーくつ寝ーるーとーおーしょーおーがーつー」とライ子は、なんとも間延びしたフレーズを無限リピートしながら、重箱におせち料理を詰めている。

 丸美は横の着ぐるみのリズムに合わせているように、踊りながらカッ子の料理の手伝いをしている。

 どうやら自分で作れそうなおせちのメニューは、自分で作ろうということらしく、三日前から四人で悪戦苦闘している様子である。

 時折ライ丸姉妹が味見しては、ブッチョを呼んで調味料だけ入れさせるという二度手間の連携プレイで、なんとか切り抜けているようだ。

 先ほども味見をした丸美が、苦虫を噛みつぶした様な顔をした後ブッチョを呼んで、その後ブッチョの味付けでオーケーサインを出していたのだが、苦虫レベルをオーケーまで持っていくブッチョの味付け技術はミラクルである。

「「あとちょっとなので、ちょっと休憩しません?」」と提案すると。

「うんそうだね、ちょっと歌い疲れちゃった」とライ子は見当違いの疲れ方を見せる。

「(丸美も休憩しようぜ)」ブッチョが手話で声をかける。

「(うん、なんだかノド乾いちゃった)」と丸美。

「「ジュースならいっぱい買ってありますよ。あったかいお茶や紅茶がいいならインスタントがあるので、お湯沸かしますけど?」」

 と、カッ子は正月外に出なくてもいいように、必要な物をいろいろそろえているのであった。さすが現役ヒッキーである。

 丸美が紅茶がいいと言ったので、ついでという理由で全員紅茶ということになった。カッ子はさらについでにということで、全員分のティーバッグを鍋で煮詰めるという横着ぶりを見せ、それを飲んだ丸美の「(苦い)」という一言で紅茶ネタは幕を閉じたのだった。

 

     02


 なんだかんだで、おせち料理を完成させ、みんなでのんびりとテレビを鑑賞しているところである。

 カッ子の家にコタツが無いのは残念であるが、エアコンと床暖房が完備されているので、冬だとは思えないほどの暖かさである。

「「で、大晦日の特番は何を観ましょうか?」」

 現在午後6時なのだが、たいがいどのテレビ局も大晦日の特別番組を放映するのである。

「(”ノラえもん”がいい!)」と丸美が言う。

 ”ノラえもん”とは、遙か過去から生きている野良猫の妖怪がとある家に住みつき、その家の出来の悪い少年の悩みを妖術で解決するという国民的アニメである。

「私は”ガキの集い”のスペシャルがいい!」とライ子。

 ”ガキの集い”とは、大御所のお笑い芸人コンビが司会の番組で、ここ数年大晦日にスペシャル番組を放映している。内容はというと、番組メンバーが日常生活の中で、スタッフの仕掛ける罠にはまりながら指令をこなしていくという抱腹絶倒の番組である。

「「私は”紅白歌マゲドン”がいいです」」

 ”紅白歌マゲドン”とは、某国営放送の誇る大晦日の歌番組の集大成で、女性歌手だけの紅組と男性歌手だけの白組に分かれ、今年の最終対決を行うという歌番組である。

「ん? 俺か? 別に何でもいいぞ。みんなで話し合ってくれ」とブッチョは丸投げを決め込む。

「ん、じゃ私は”ノラえもん”でいいや」

「(ううん、”ガキの集い”でいいよ)」

 譲り合いとは美しい姉妹愛である。

「「どっちでもいいなら”歌マゲドン”にしましょう?」」ぶち壊しである。

 

 結局見たいところでチャンネルを替える、という中途半端な話でまとまったようだ。

 そんな感じでくだったりくだらなかったりする番組を、見所でチャンネルを替えつつ見ていると。

「おなかすいたなー」とライ子が訴える。時計を見ると午後10時30分である。

「「そうですねぇ、先に年越しソバを食べましょうか」」

「(やった! 食べる食べる!)」と丸美は楽しみにしていたようだ。

「おう、冷凍ソバだろ? 俺が作ろうか?」とブッチョが言うと。

「ダメだよ! ブッチョはインスタントでも何か余分に調味料入れるもん!」

「(こないだなんか、うどんにあんこと牛乳を入れるんだもん!もう異次元スイーツだったよ。おいしかったけど)」チャレンジャーである。

「あぁ、あれは隠し味にバターを入れたからな」

 というわけでカッ子がソバを茹でたのだが、心なしか変な味がしたことについては触れないことにしたようだ。

 

 今年が終わるまで、あと1時間。

 今年はブッチョにとって、ありすぎると言う位いろいろな事があった。

 この目の前にいる奇妙な三人と巡り会ったのを筆頭に、ホスピタルクラウンの活動を知ったり、バイトは変わってしまったが今までで一番長く続いている。

 ブッチョの今までの人生の中で、これほど他人に関わり、変化にとんだ年は無かったであろう。

 それもこの三人に出会えたからこそである。

 願わくばこの関係が来年以降も続くことを望むのであった。


 などとセンチメンタルなことを考えている横で、ライ丸姉妹は揃ってうつらうつらとしている。

「「あれれ? 二人とも寝ちゃいそうですねぇ。初詣は明日にしましょうか」」

「はっ! いやいや、なに言ってんのカッ子姉ちゃん! 眠くなんかないよ!」とライ子はあせって主張する。

「(ん? だいじょすそ、けれくなんかうきよ)」丸美は眠気で、手が思うように動かないようだ。

 

 はたしてライ丸姉妹は初詣に行くことができるのであろうか。

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