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くらんくらうん  作者: バラ発疹
夢見るピエロ
19/62

第二話「クラウン・クランケ・クラウン」01と02

 第2話「クラウン・クランケ・クラウン」


     01


 なぜかブッチョは病院の中にいる。

 カッ子やライ丸姉妹が入院しているわけではない。

 ましてや自分に悪い所など見あたらない。

 どうして、と問われても自分でも分からない。

 かのテンホー氏に渡された、メモの施設は確かにここなのだ。


 “豊多市 厚生病院”ブッチョの住む愛知県豊多市にある大きな病院である。市民病院かと思いきや、実はそうではないという市民から信頼のある病院なのだ。


 ブッチョがいるのは、そこの小児科病棟である。

 小児病棟など入る機会はないのだが、入ってみるとそこはやはり病院であると実感させられる。病棟自体は、廊下の壁に子供の好きそうな絵が貼ってあったりして、幼稚園のような感じをだしている。しかし、病院特有のにおいのする廊下には、遊んでいる子供もいるものの、その手には点滴のホースがつながっていたり、頭に白いネットをかぶったりしている。

 とりあえずブッチョは、ナースセンターに行ってみる。

「あのー、すいませんブッチョといいますけど」と居心地悪そうに女性看護師に声をかける。

 すると看護師は、一瞬怪訝な顔をしたかと思うと、思い出したように「あぁ、テンホーさんの助手の方ね。伺ってます、こちらへ来てください」とナースセンターの中へ招き入れられる。

 助手ってなんだ? と思いながらもブッチョはナースに聞いてみる「今日は何かイベントかなにかやるんですか?」

 というブッチョの問いに、女性看護師が怪訝な顔をした時ナースセンターの外から声が聞こえる。

「おっ! ブッチョくん来てくれたのか! うん、あんたなら来てくれると思ったよ」と、場違いな元気な声で話す。

「っていうか助手って何なんスか?」とブッチョが言うと。

「まぁまぁ、今日は社会見学ってことでよろしく」とテンホー氏。

 それを聞いた女性看護師は「ちょっと、大丈夫なんですか? なにかあったりしたら……」

「大丈夫ですよ、ほんとにただの助手ですし。ささ、早く打ち合わせやっちゃいましょう」さらに不安にさせるやりとりである。

  なにやらテンホー氏は、看護師と患者の体調などを確認しているようだ。テンホー氏はこの病院の医者なのであろうか。と思っていると。

「じゃあ着替えて30分後に開始ってことで。じゃあブッチョくん一緒に来てくれ」と言われたとおりについていく。

 

     02


 そしてブッチョはなぜかピエロの格好をしている。

「ぎゃあ! 俺なんでこんな格好してんだ?!」

 ブッチョはしま模様の大きなツナギを着て、大きな靴と奇妙な形の帽子をかぶり、真っ白に塗られた顔には笑っているようなメイクが施され、その真ん中には赤いボールの様な鼻が取り付けてある。前に立っているテンホー氏は、この前のショーとおなじ格好をしているので、それと比べると少々地味な印象を受ける。

「とりあえず、何もしなくていいから、指示に従ってついてきて。じゃ、行こうか」と言うが早いかテンホー氏は歩き出す。

「え? はい」とブッチョは言われるままについていく。


 小児病棟に入ったクラウンテンホーは、目の前の病室をこっそりのぞく。

 病室には四つのベッドがあり、それぞれに点滴をしたり、鼻に管が入ったりした子供が横たわっている。クラウンテンホーは、大げさな動きでこっそり病室に入ると、無表情のまま携帯ゲーム機をプレイしていた男の子が気づき、表情がぱあっ! と明るくなり「あっ! テンホーくんだ!」と叫ぶ声をかわきりに、病室の中がざわめき立つ。

「あちゃあ、みつかっちゃったか! ゲームやってるからいたずらしようと思ったのに」と、くやしがる。テンホーくんが男の子に「ゲーム機がベッドから落っこっちゃいそうだよ」と言うと、男の子はゲーム機を見るためにこちらに背を向ける、するとテンホーくんは男の子の背中にタッチする。すると男の子は「あーっ! 今なにか付けたでしょー!」と、一生懸命に背中の方を見ようとしたり、手をまわしたりしている。するとテンホーくんは男の子のおなかにもタッチする。男の子がおなかを見ると、そこには大きなシールが貼ってあった「もーっ、やめてよー」とうれしそうに言うと、ポン! と頭にもシールが貼られる。「やめてー」と言っている間に、男の子の腕や足にもシールが貼られていく。

 その後、はがしたシールを全ておなかに貼ったところで、テンホーくんは「ばいばい」と手を振り、次の子の所に向かう。

 そんな感じで、クラウンテンホーは順番に子供のベッドをまわっては、子供にいたずらをしたり一緒に遊んだりしていった。

 状態のすぐれない子供には無理に絡まず、2、3言葉をかわした程度で風船などを置いて去っていく。そんな風にすべての病室をまわっていくのだった。

 終盤になるとクラウンテンホーは子供たちを引き連れ、看護師にまでいたずらを仕掛け、看護師に叱られる始末。まさにやりたい放題。


 その光景をぼんやり眺めていたブッチョは、不意に服を引っ張られる。引っ張られた方に目をやると、そこには最初にシールを貼られていた男の子が立っていた。その男の子はブッチョに「ねえねえ、君は何かやったりしないの?」と声をかける。

「ん? 俺はなにもできないから、ここでなにもせずに立ってんだよ」と言うと。

「ふーん。君のお名前何て言うの?」と聞いてくる。

「えっと、俺の名前はブッチョだ」と答えると。

「そっか、君はピエロのブッチョくんだね」などと笑いながら言う。それを聞いてブッチョは、今の自分の格好を思い出す。

 気がつくと、ブッチョは周りの子供たちに好奇の目で見られていた。「いやいや、マジで何にもできないから」と、なにやら子供たちの視線は、ブッチョの背中に集まっているようだ。

「はっ! もしかして、背中に何か貼られてる?」と背中の方を見ようとしながら言うと、周りの子供たちから「あはは」と笑い声があがる。

 

 そんなこんなで、最後は子供たちに囲まれていたブッチョは、クラウンテンホーに促され帰る事になる。

 帰り際子供たちが「テンホーくん、ブッチョくん、またねー」と手を振ってきたので、それに答えて手を振り返し、終了したのだった。

 その後、着替えた二人はナースステーションで報告を済ませ、病院を後にする。

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