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くらんくらうん  作者: バラ発疹
夢見るピエロ
17/62

第一話「ゴーゴージャグラー」00から02

 第三章「夢みるピエロ」


 第1話「ゴーゴージャグラー」


     00


 陽気な音楽と共にネズミやアヒルの着ぐるみに身を包んだ人が激しく踊っている。

 どうやらここは東京ネズミーランドらしい。いわずと知れた米国の人気ネズミアニメのテーマパークである。パーク内にある城の壁画には、本物のダイヤが埋め込まれているという噂があるが、ウチの近所の歩道橋の柱にも10円玉が埋め込まれているという噂がある。

「あれ? お父さんは?」いきなりであるが、いつもの土下座している父親が見あたらない。

「え? なに? これホラーなの?」子供一人で、雑踏の中にいるのは恐怖であろう。

「「あれ? ブッチョさん、こんなところでなにしてるんですか?」」と、なぜか見慣れた女が出てくる。

「ん? カッ子? なんで僕の夢に出てくるの?」

「・・・・・・(笑)」

「わぁ! ネズミーランドだ! てかブッチョ子供だ!・・・と言ってる」

「「さあ! 夢の時間の始まりですよ!」」

「え? わぁ! ちょっと引っ張んないでっ! おとうさーん!」

「・・・・・・(笑)」

「なに言ってんの? お前がお父さんだろ!・・・と言ってる」

「は? いや、夢? 始まり?」

 ピーンポーンパーンポーン

 訳が分からず戸惑っていると、館内放送が入る。

 『あー、本日は東京ネズミーランドにお越しいただきまことにありがとうございます。まもなく営業開始いたします』

 ジリリリリー…けたたましく営業開始のベルが鳴り響く。

 ジリリリリリリリリリリリ「いやちょっとまって、お父さーんジリリリリカッ子? おいジリリリリてかライ丸おまジリリリリ……ちょうるさジリリリリリリ……ろジリリリリリ」リリリリ


「うるさいって言ってんだろーがってんだろーが!」


 ガシャン! と目覚まし時計が壁に激突する。

 しかし、ジリリリリ!とまだ鳴り続けている。

 どうやら枕元に置いてあった目覚まし時計はダミーのようだ。もう壊さないようにとよく考えたものだが、それに引っかかっているところがまだまだである。

「くっ、なんだか昨日の自分に負けた気がするぜ」と本物の目覚ましを止めながら愚痴る。


     01


 今回は、夏も終わり少しずつ秋の足音が聞こえてくるようなこないような時期のお話。

 ブッチョはいつものように、コンビニでバイトに勤しんでいた。

 そう、驚いたことにバイトが続いているのだ。

 どうやらブッチョにも自尊心があったらしく、カッ子やライ丸姉妹が立ち寄ることがあるため、真面目に仕事を覚えたようだった。

 今はちょうど昼時を少しまわったところである。昼の忙しさがひと段落して、交代で昼食を食べる時間帯である。今はブッチョ一人で店番をしている。

 現在店内のお客さんは二人。その内の一人はこのコンビニの上得意のカッ子である。カッ子はいつものように、大量の商品をカゴ一杯に入れてレジにやってくる。

「お前こんなに菓子とか食うと太るぞ」と、いつもの無表情で、商品のバーコードを読み込みながら告げると。

「「なに言ってるんですかぁ! ほとんどブッチョさんとライ丸ちゃん達が食べちゃうじゃないですか!」」と、相変わらず目を合わせず、表情をころころ変えながらしゃべる。

「あれ? そうだっけ? 今度から控えるよ」

「「いや、別に余らせてもしょうがないし、ライ丸ちゃん達もご飯残さず食べるのでいいですけど」」と言いながら、いつものように携帯電話で支払いを済ませる。

「「じゃあまたウチで待ってますね」」と言い残しコンビニを後にする。

 

 カッ子を見送った後に、次の客が精算を済ませにやってくる。

 ブッチョはいつものように、なにを間違えることなく商品のバーコードを読んでいく。

「はい、全部で1,543円になります」

 と言ったところで、その客が「ちょっと待った」と止める。

「何か違いました?」クレーマーか? と思いながらブッチョが聞くと。

「いや、別に間違っちゃいないが、仮にも客商売なんだから、あんたもうちょっと愛想よくした方がいいぜ」と、もっともなご忠告。

 面倒くせぇと思いながら、自分の病気を説明すると「えっ? マジ? うわぁすまん、またやる気のない最近の若者かと思っちまって」と恐縮しながら謝罪する。

「いや、別にいいっすよ。なれてるんで」と言うと。

「わっ、ほんとにしゃべりのニュアンスと表情が連動してないんだな」と珍しそうにブッチョを見る。

 その客は、年齢はブッチョより少し上であろうか、長身で筋肉の引き締まった男で、カッ子以上に表情をころころ変えて喋る。カッ子と違い自然な感じに表情を変えるので、人当たりの良さそうな印象を受ける。

 そんなやりとりをしながら、男は現金で精算を済ます。

 男は帰り際に「あんた面白いよ!俺あさってそこのジョスコでショーをやるんだけど、よかったら見にきてくれよ」とジャグリングショーと書かれたビラを渡される。

「俺は”テンホー”って芸名だけど、あんたは……ブッチョだっけ?さっきの彼女が呼んでたけど、変なあだ名だな。ショーは無料だから彼女と一緒にきてくれよ」と言い残し去っていった。

 別に彼女じゃねえよ。というツッコミを入れる間もなく、去って行った客に渡されたビラを見ながら「みんなで行ってみるか」とつぶやいた。


     02


「・・・・・・(笑)」

「……」いきなりで悪いが、ライ子は訳さない。

「おい、あさっての土曜日行けるかって聞いただけなのに、なんで訳さないんだ?」

「”土曜日は大丈夫だよお父さん。”って言ったんだよ! 誰だ! ばらした奴は!」とライ子は叫びながらブッチョの横っ腹にパンチが突き刺さる「ぐぼはぁ!」

「「あっ、丸美ちゃんだけ知らないのは不公平だと思って、さっき言っちゃいましたぁ」」あの時、丸美も必死で気がつかなかったらしい。

「ってなぜに今?! ラグーナス行ってからどんだけ経ってんだよ!」約一月ぐらいだろうか。

「「いやー、ちょっと思いついちゃったもので」」

「ぎゃふん! もうこのネタやめてください」ライ子は撃沈された模様。

 

 と、こんな感じで、いつもおしゃれでかわいい無口な妹と、着ぐるみを着た姉の通訳という奇妙な姉妹も合流して、カッ子の家は賑わっていた。


 結局全員あさっては予定が無いとのことなので、四人揃って行くことになったのである。

「・・・・・・(?)」

「で、ジャグリングってなに?・・・と言ってる」

「ん? アレだろ? 火の着いた棒みたいなのを回して、踊ったりするやつ」

「「それはファイヤーダンスですっ。ジャグリングっていうのは、すごい数のお手玉したり、いろんな道具を使ってすごい技を見せてくれるショーですよ」」

「・・・・・・(笑)」

「そのテンホーって人もすごい技を持ってるんだね。ブッチョと違って。・・・と言ってる」

「悪かったな、なにも持ってなくて!」

「「でもそれは楽しみですねぇ。私も実際見たことないですから」」そりゃあ引きこもっていれば見る機会などないだろう。

「・・・・・・(笑)」

「いざジャグリングショーへ!・・・と言ってる」

「あさってだけどな!」


 というわけで一行は、土曜日のジャグリングショーを見に行くことになったのである。

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