03と04おまけで05で了
03
「で、今日の対戦相手は強いのか?」
「「いいえ、たぶん私達とおんなじ位の強さだと思います」」それを言うなら強さではなく、同じ位の弱さであろう。
「・・・・・・(汗)」
「うーん、ぐだぐだの予感。・・・と言ってる」
「「まぁ正直なところ、相手のリーダーがウザすぎて相手したくないというか……」」
メンバーが来ないのも、そこらへんも理由のひとつのようだ。
カッ子の話によると、相手のリーダーはいわゆる粘着質らしく、いやがらせの様にしつこくまとわりついて来るらしい。
「「しかもハンドガンしか使わないんですよ」」
ハンドガンは、どの武器を選択しても持っている二つ目の武器である。
「ほう、あんな使いづらくて弱い武器を使うって事は、そいつは上手いのか?」
「「いえ、たぶん今日やるメンバー、敵味方全員の中で一番下手くそです」」
「・・・・・・(驚)」
「えっ!? 意味がわからないんだけど。・・・と言ってる」
「「とりあえず、始まればわかりますよ。っと来ましたね」」
テレビ画面を見ると、名前が二人増えている。
表示された名前は、ヨシオとマサミと書いてある。
「普通か!?」意味不明なツッコミである。普通のどこが悪いのだろうか。
クランのメンバーはこれで全部らしい。しかしカッ子は、これといってなにもせず待っている。
「おい、なんかしゃべるとかメッセージ送るとかしなくていいのか?」
「「え? はい、私この人達と喋った事無いですし、勝手に始まりますよ?」」それでチームとはよく言ったものである。コミュニケーションは、たまにゲーム機のメール機能でやりとりする程度らしい。
そんなやりとりをしているうちに、テレビ画面の自分達の名前の反対側に、名前が6人分一気に表示される。どうやらこの6人が今日の対戦相手らしい。
その名前を見て、カッ子が、「「あれ? 相手のリーダー名前が変わってる」」
カッ子が指さした名前は”103”と表記されている。
「あんま嫌われすぎて名前変えたんじゃね?元の名前は何だったんだ?」
「「ん? あれ? あまりにも忌まわしすぎて、記憶から消え去っちゃいました」」そこまでウザいらしい。
「・・・・・・(笑)」
「そろそろ始まるみたいだよ。・・・と言ってる」
04
テレビ画面では、カウントダウンの後、廃墟の街並みとセクシーな女性がメンバー分表示される。ゲームのスタートだ。
開始直後、全員がダッシュで散会する。
しばらくすると、銃声が聞こえ出す。どこかで、戦闘が起こっているようだ。
ブッチョが銃声のする方へ走っていると、ひとつ向こうの道を、ハンドガンを撃ち続けながら、あさっての方向へ向かって行く敵を発見する。
「はい? なにやってんだあいつ」この距離ではショットガンは当たらないので、つけてみる事にする。
キャラクターが視認できるようになると、その頭のうえに名前が出るのだが、その挙動不審者の頭には”103”と表示されている。
ほどなくして、プレイヤー103に追いついき、ついでにショットガンで倒してしまう。
「? 今の奴なんか意味あんのか?」と疑問に思っていると。
ポコン! とテレビから気の抜けた音がする。
このゲーム機は、メールが来ると今の音で知らせてくれるらしい。
「なんだ? こんなときにメールか?」と言いつつメールを確認してみる。
メールはボイスメールだった。ボイスメールとは、文字ではなく音声を送れるメールである。ブッチョはとりあえずメールを再生してみると。
『貴様も我が輩の邪魔をするのか。ゆるせん! 呪ってやる!』とのこと。
「ぎゃあ! 怨霊戦線!」
それをとなりの部屋で聞いていたカッ子が「「あぁブッチョさん、やっちゃいましたか。これから執拗に追いかけられますよ」」
「え? なにこれ? リアルサイバーホラーなの?」
と言っていると、前方からハンドガンを発射しながら、頭に103と書いたキャラが走ってくる。
このゲームは、一人敵を倒すと10点チームに入り、どちらかのチームが750点取るか、30分の制限時間の終わりに点数の多いほうが勝つというルールなので、やられても数秒の後にすぐに復活するのである。
ブッチョは、走ってくる103を難なくショットガンで倒す。
「ま、どってことないな」
「「いえ、これからですよ、本番は」」
その後も幾度と無く向かってくる103を、楽勝で倒すのだが。
「えっと、ちょっとヤバい! うわっ!」ブッチョが他の敵の相手をしているときに、たまたまタイミング良く103が来て、ブッチョは倒されてしまう。
「むむっ、なんだかむしょうに腹が立つんだが」
「「そうなんですよ、たまに運悪くやられるとムカつくでしょう?」」
そんな会話をしていると、丸美のテレビからもポコン! と音がする。どうやら丸美も103を倒したらしい。丸美が、メールを再生すると。
『貴様も我が……うっ……やっ……おぃ……ごめんなさい』復活した瞬間に丸美に倒されるらしい。どうやら4回目で屈服したようだ。丸美おそるべし。
ライ丸姉妹のコンビプレイはすさまじく、建物内を移動しながらライ子が丸美を守りつつ、丸美が遠距離攻撃で敵を倒す。
そんな感じで、どれだけの点差があるのか確認してみると。
630対630。
なぜか同点である。
「・・・・・・(怒)」
「ブッチョとカッ子姉ちゃんやられすぎ!・・・と言ってる」
「面目ない」「「面目ない」」ブッチョはまだしも、カッ子もへたくそだった。
影の薄いヨシオとマサミは、名前と同じでスコアも普通である。
そんな事を言っていると、時間切れのアナウンスが流れる。それと同時に画面に”サドンデス”と表示される。
時間切れ時に同点だと、時間が10分追加され、復活が無くなるのだ。
もう復活しないとなると、全員慎重になるが、カッ子とヨシオとマサミが一人ずつ倒して、自らも倒されていた。
後はライ丸姉妹で終わり、かと思いきや。一人倒した直後、丸美をかばったライ子が倒れ、そのまま丸美も倒れてしまった。
ライ丸姉妹を倒した敵は、駆けつけたブッチョが倒したのだが。
気がつくと、ブッチョと103の一騎打ちになっていた。
そこでブッチョにボイスメールが届く。
『やはり貴様とは決着をつけねばならぬようだな。決闘を申し込む!』いや、すでに1対1なので決闘なのだが。
05
そんな流れで、なぜか画面ではブッチョと103のキャラが、近距離で背中合わせで立っている。
どうやら西部劇風の決闘で勝負をつけようというらしい。
スリーカウントで同時に振り向き、撃ち合って立っていた方の勝ちである。
このゲームにカウントダウンの機能はないので、どうするのか相手のメールを待っていると。
ライ丸達が指を三本出して。
「・・・・・・(笑)」
「スリー・ツー・ワーン・・・と言ってる」と勝手にカウントダウンを始めた。
ブッチョはそれにつられてしまい振り向き、ショットガンを放つ。
「あ!」「「あ!」」
本日の勝負は[HDKS]の勝利である。
勝手に振り向いただけではなく、ハンドガンに持ち換えるのを忘れてショットガンでとどめをさす。という卑怯極まり無い幕切れであった。
案の定『き……貴様ぁ! 卑怯な! ゆるさんぞおっ!』というメッセージが送られてくる。
ブッチョがショットガンを放ったと同時に来たメールでは『ゲーム画面の下に表示されている時計が、残り5秒になったら開始だ!』と、なかなか燃えるシチュエーションを考えていたらしいので、怒りも倍増であろう。
で、次のメールでは『貴様を一生呪ってやる!いや、本官の拳銃の錆にしてくれるわ!』
「ん?」「「ん?」」「・・・・・・(?)」「ん?・・・と言ってる」
どこかで聞いたしゃべり方である。
「あれ?この変人ってもしかして……」
「・・・・・・(汗)」
「あぁ、ブッチョが前にヒドいあだ名付けて、それを気にいってた変人警察官だね。・・・と言ってる」
「「なるほど、それでハンドガンしか使わない変人なんですね」」
ブッチョが付けたあだ名は”変人”ではなく”殺人警官イレイサーのレイさん”であった。
「・・・・・・(!)」
「それで103(イレイサー)か! ってどんだけ気に入ってんだよ!・・・と言ってる」
「いや、なんか気に入ってくれてると、それはそれでちょっとうれしいような」
「「あっ、私も”カッ子”って結構気に入ってますよ?」」
「・・・・・・(怒)」
「私たちのは気に入らないけどな!・・・と言ってる」
「俺のも気に入らねーよ!」
といつもの調子で、グダグダに終わっていくのであった。
第4話了