05まで
05
ブッチョは、高校生の頃に一時だけ友達ができたことがあった。
友達と呼ぶには曖昧な感じに集まる四人。ブッチョは、長い間友達などできた覚えが無いので、どこか馴染めない居心地の悪いような感じを抱えていた。
しかしあれは、ほんとに気まぐれだったのだが、放課後寄ったマグドで、ブッチョが三人に奢ったのだ。
「おっ! マジで? ごっそさん」
「バイトやってんだっけ? ゴチっす」
「ごちそうさん。俺も給料入ったら奢るよ」
その当時バイトをやっていて、それこそたいした金額ではなっかったのだが、初めて友達のような関係が持てた気がした。
それから遊びに誘うときは、決まって奢ると自分で決めていた。他の三人もバイトをしていて、金に余裕があるので奢ってくれることも多々あった。
そんな感じで、四人の関係は成り立っていた。
今と同じで出来の悪いブッチョは、ある時バイトをクビになる。
収入が無くなり、バイトを探すがなかなか見つからない。
そうなると、奢ることで友達と繋がっていると思っていたブッチョは、徐々にその三人とは疎遠になる。
そのことを三人に打ち明けると、「そんなこと気にすることねぇよ、別に金で繋がってた訳じゃねえんだし」と言ってくれた。実際三人は全く気にしてはいなかったのだが。
しかし結局、以前のように居心地の悪さを感じるようになってしまい、三人とは付き合わなくなってしまった。
今、同じ状況になったとしても、あの三人とちゃんと友達でいられる自信は無い。
だが、同じ気持ちを今目の前にいる友達にあじあわせない様にする事はできるはずだ。
ゴン!
「「いったーい! ブッチョさん何するんですかぁ?!」」いきなり脳天にゲンコツをくらったカッ子は、泣きながら抗議する。
「アホかお前! 友達と付き合う為の予算ぐらい自分で出すっつーの! それにそんな事されると、逆に友達でいずらいわ!」
「「えっ?!」」
と言う感嘆符付きの声を発したかと思うと、次の瞬間カッ子と目が合う。
今までも、偶然目が合う事は何度もあったが、すぐに目をそらしていた。
しかし、今のは確かにカッ子は”目を合わせた”。まぁ次の瞬間には目を背けてしまったのだが。
「・・・・・・(怒)」
「あーっ! ブッチョがカッ子姉ちゃんいじめてるー!・・・と言ってる」と絶妙な横やりが入る。
「いやいや、ちょっと叱ってやっただけだから。いじめとか言うな。教育委員会から苦情が来るわ!」
「・・・・・・(?)」
「カッ子姉ちゃん、大丈夫?・・・と言ってる」と言いながら、カッ子のゲンコツの落ちた箇所をなでるライ丸姉妹。
しかし、カッ子の様子を見て手が止まる。
「「えへへへ、友達だって。えへへへ」」と小刻みに震えながら笑っている。
「・・・・・・(恐)」
「か……カッ子姉ちゃんが壊れた! ホラー再来?!・・・と言ってる」
「やべぇ、打ちどころが悪かったか。もっかい叩いたら治るかもしれん、お前らたのむ」
ライ丸姉妹は、カッ子の頭をポカポカ叩くが、一向にヘラヘラ笑いは治らないのであった。
結局ブッチョは、0円で買える折りたたみ式の携帯電話を購入する事に決める。
しかし契約の段階で、身分証が必要な事が発覚。
自動車免許その他身分証になるものなど、持ち合わせている訳などなく。
本日の購入を潔く断念。
その後の店内には、マッサージチェアを占拠する四人がいたということである。
後日ブッチョは、一人で保険証と住民票を持って来店。契約を済ませ、晴れて携帯電話の所持者となったのであった。
と、これがブッチョの初携帯電話所持までの経緯である。
それと、もう一つ。カッ子のファッション問題について。
ブッチョが携帯電話を購入した日から三日後に進展があった。
カッ子の服装は、パステルピンクに白のツーラインが入った長袖長ズボンのジャージに、淡い水色の長袖パーカーを羽織っている。これを4セット持っているらしく、その服装しか見たことが無いのだが。
その日に見た格好は。
パステルグリーンで、胸の部分に英語のロゴが入り、半袖の。
上下ジャージであった。
ご丁寧に、パーカーも橙色の腕の部分の無い夏物に変わっている。
なにごともなかったように、それを着ているカッ子を見て、ムカついたブッチョは、ツッコまずにスルーするのだが。
二日目には、デザインが全く同じで、色の違うものを着ていて。
三日目にも、さらに色だけ違うものを出してきた。
そして、四色目を見せられたときに。
「色違いて、お前はどっかのゲームの雑魚キャラか!」 というブッチョの絶叫で、このネタは幕を閉じたのである。
第3話了