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第7話 人形少女は戦場を舞う

「珍しいもの持ってんな、意思を持つ人形か」

「私が作ったわけじゃないわ。私にそこまでの技術は無いわよ」


ガキバキボギンッ!! と乱暴な音が連続で響き、さらなる破壊をまき散らす。


「あんたも氷の魔術師にしちゃ珍しいわね」

「よく言われるよ。飛ばすだけしか能のないとかな!」


氷柱が飛び交い、空を滑る人形が氷柱を砕く。


砕かれた氷が宙を舞い、冷たい暴力を美しく彩った。


「シズクっ!」


水色を基調としたドレスを着た少女の人形が、凄まじい勢いで水の魔法を放った。


水の柱が一直線に少年を狙い撃つが、巨大な氷柱に阻まれ四散した。


「カエン!」


赤いフリルのドレスを着た少女の人形が、紅蓮の炎を現出させた。


真っ赤な炎が氷柱を噛み砕き、その先の少年を焼き尽くそうとする。


しかし少年は横に跳び、これを回避した。


「ヤナギ!!」


緑の葉を連想させるドレスを着た少女の人形が、棘の鞭を振るう。


それも氷柱に阻まれ、弾かれた。


「くはは! 本当に楽しいよオマエ! 自己を持つ人形に30体を一斉操作か!! そいつは相当な負担かかってんじゃねえの!?」

「もう慣れたわよそんなもん。私は生まれた頃からこの子たち(・・・・・)と一緒だった」

「そうかよ! だが今は引っ込んどいてもらおうか!」

「そうはいかないわよ。私の道を邪魔したのだから、それなりの代償は払ってもらうわ」


30もの武器が少年に向かい、またも氷柱に阻まれた。


「ところで。人形は主人には絶対服従なんだろ?」


少年が攻撃の手を緩めて、そう言った。


「だが、自己を持った人形は主人最優先で動く。違うか?」


不審に思ったアリンは、自らもそこで攻撃の手を止めた。


しかし、少年の一人語りが終わるまで待つ気はない。


隙を見て攻撃する。それだけに意識を集中させる。


30体の人形と、自己を持つ3体の人形の一斉攻撃。


「つまりだ」


ドン!! と凄まじい勢いで、計33体の人形が少年へと肉薄する。




「33体の人形を一斉に弾く必要はねえ。オマエの動きを崩せば全て崩れる」




直後、アリンの足元が唐突に凍りついた。


先述の通り、人形を操るのはかなり複雑な操作を要する。


30体もの人形を操っていれば尚更のこと。


足元が凍りつけばバランスを崩し、転倒する。


そうしたことで、整っていた30体の人形の動きが一瞬で崩れた。


残った3体の人形は主人を守ろうと引き返そうとする。


だが。


「遅えよ、バーカ」


人形が引き返すよりも早く、少女が立ちあがるよりも早く。


放たれた鋭い氷柱が、少女を貫こうと空を裂いて進んでいた。


「……っ!!」

「じゃあな、人形女」


氷柱の尖端の輝きが、少女の背筋を凍らせる。


間に合わないと分かっていても、人形は加速しようとする。


それさえも許さずに、冷たい氷柱は少女の体を狙い進む。


少女が死の恐怖に目を背けた瞬間に、ギルド内に赤色が増えるはずだった。




だが、いつまでたっても、少女に死は来ない。




恐る恐ると言った風に、恐々と少女は顔を上げた。


そこには。


「ったく、何やってんだよ」


魔力が切れたと言っていた少年が居た。


「せっかく面白いもの見れたのに、ここでおあずけかよ」


魔力が無いことを理由に、ギルドの騒ぎを黙認しようとした少年が立っていた。


「まあいいさ、今度は俺が魅せる番だ」


ギルドの惨状を見て、卒倒しそうになっていた少年が居た。


「せいぜい楽しんでいけよ、部外者共(お客様)。俺の魔術は楽しいぜ」


カノンと呼ばれた、黒髪に茶色い瞳の少年が立っていた。


少女は目を見開いた。


少年の瞳は、気弱そうな茶色い瞳ではなく。


狩人のような、狂気の紅い光に満ちていた。

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