第4話 トラブルって大体物事が進んでいる時に起きる
逃げてたら何か突然光って目が見えなくなって。
襟首を掴まれて何か柔らかいものの中に投げ込まれて、気付いたら自分の住む町に到着していた。
「………というのが今の僕の状態なんです………」
「あんた何に向かって説明してんの?」
なんでもありません、と言ってから、改めて少年は目の前の少女を見た。
栗色の髪の毛を短く切りそろえて、黄色のカチューシャをつけている。
活発そうな大きな青色の瞳は、怪訝そうにこちらを見ている。
薄い赤紫のマントを羽織っていて、手には大きな鞄を持っていた。
「あの、助けていただいてありがとうございました。おかげで助かりました」
「まあそれは別にいいんだけど……。アンタ、名前は?」
「えあ、はい。僕の名前は「大変だーッ!!」?」
唐突に上がった叫び声。声の主の中年男性は一直線に少年に向かってきた。
「カノン! ギルドで騒ぎが起きてる! なんだか分からないが誰かが暴れてるらしいんだ、早く向かってくれ!」
「ええ!? でも今僕、魔力が無くって……」
少女はその様子を黙って眺めていた。だが一度、ぎしり、と強く歯軋りをすると、あたふたとする少年の首根っこを勢い良くつかんだ。
「カノンっていうのねあんた。私はアリンって名前だから今すぐそのギルドに案内して」
「え!? いや何でそんないきなり…ってぐぅえっ! しまっ、絞まってる! 絞まってますぅ!」
ずるずると引きずられていく少年、カノンは魔力切れを起こしている。
この、アリンと名乗る少女が魔法を使えることは分かるが、どのような魔法を使うかは分かっていない。
そんな中で彼はこう思った。
彼女にはギルドで暴れている奴を抑える秘策のようなものがあるのだろうか?
少年にその意図はつかめない。