表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

第7章「夢の柱たち」


 静寂がその場を包んでいた。


 三人の子どもたちは動きを止め、まるで優の様子を観察するかのように、興味深げな表情でじっと見つめている。


 その中で、もっとも衝動的そうな少年が一歩踏み出した。


 歯を強く食いしばり、握りしめた拳は白くなるほど力がこもっている。


 そして、軽蔑の色を浮かべた目で優を睨みつけ、怒鳴った。


 「こんな真っ白でヒョロい奴、訓練の邪魔にしかなんねぇだろ!」


 その瞬間、背後にいた別の少年が、ゴツンと拳で彼の頭を殴りつけた。


 勢いで前につんのめる。


 「お前なぁ! 敬意ってもんはどこに置いてきたんだよ! 親に常識も教わってねぇのか!」


 殴られた少年は頭を押さえ、痛みに顔を歪めながら小さく文句を漏らす。


 だが、ほんの数秒後には怒りが再びこみ上げたらしく、今度は相手の襟元をつかんで持ち上げた。


 「今のは何だぁ!? 死にてぇのか、お前!」


 怒気を含んだ瞳が相手をまっすぐ射抜く。


 三人目の少年が、おどおどしながら二人の間に割って入った。


 両手を広げ、必死に引き離そうとしている。


 「ま、ま、待って……そんなに怒らなくても、いいだろ……?」


 しかし二人は声を揃えて怒鳴った。


 「黙れ!」


 優はその光景を静かに眺めていた。


 どこか信じられないというような顔で。


 (なるほど……。だから焔羅さんは、あの目でこいつらを見ていたんだ。まるで火の塊みたいだ……。)


 頬をぽりぽりと掻きながら、今見たばかりの光景を整理しようとする。


 (でも……どこか綺麗だ。心が、夏みたいにまぶしく輝いてる……。)


 ぞくりと、風が背筋をなでた。


 (……妙だな。変な感覚だ。)


 焔羅は子どもたちに鋭い視線を送り、低く強い声で言い放った。


 「もうやめろ!」


 腕を組み、凛とした姿勢のまま続ける。


 「これ以上やるなら、訓練は中止だ!」


 子どもたちは肩をすくめ、一斉に頭を下げた。


 「ごめんなさい! もうしません!」


 「それでいい。」


 焔羅はうなずき、さらに言った。


 「それと、(りょう)! マツに謝れ! 今のは失礼だろ!」


 「なっ……!」


 涼は不満そうに息を吐き、しばらく黙ったあと、しぶしぶ言った。


 「……悪かったよ。色白。」


 優のこめかみに汗が一筋流れた。


 (まあ……さっきよりはマシか。)


 「大丈夫ですよ。謝らなくても。」


 優は苦笑しながら答えた。


 「よし、マツ。こいつらを紹介しておくか。」


 焔羅は一人の少年を指さした。


 「こっちの、いつも怒ってるのが涼だ。」


 優は彼を観察した。


 深い黒髪はぼさぼさで、てっぺんには白い紐で無造作に結んだ跡がある。


 暗い茶色の瞳は前方一点を鋭く見据え、何でも貫きそうな強さを宿していた。


 その奥底には、痛みの影のようなものが静かに沈んでいる。


 腕や脚には数多くの傷跡。


 古いものと新しいものが混ざり合うように刻まれていた。


 服は破れ、泥まみれで、布切れ同然。


 元は明るい色だったのかもしれないが、今ではすっかりくすんでいる。


 裸足の足は汚れに覆われ、小さな傷が点々としていた。


 (うん……確かに、いつ爆発してもおかしくないタイプだ。)


 「で、そっちの気取ったのが史郎(しろう)だ。」


 焔羅は別の少年を指した。


 明るい茶色の髪は丁寧に整えられ、毛先がゆるくカールしている。


 どこか古風で、上品な雰囲気まで漂わせていた。


 淡く輝く琥珀色の瞳は好奇心に満ちている。


 右目には単眼鏡をかけており、光が当たるたびに小さく反射した。


 整った眉と、わずかに細められた目つきは、隠しきれない批判的な色を含んでいる。


 何を見ても、必ず評価し、測り、裁いているような印象だった。


 濃紺の服は皺ひとつなく、黒の装飾が控えめに施されている。


 全体的に隙のない身なりだ。


 (この子……完全に僕を見下してる。)


 焔羅は最後の少年を指差した。


 「で、一番向こうでボーッとしてるのが大輝(だいき)だ。」


 丸みのある顔に、少し膨らんだ頬。


 どこか寂しげだが、優しさもにじむ表情だ。


 淡い色の髪は軽く波打ち、前髪が額にふわりとかかっている。


 焦げ茶色の瞳は柔らかな光を帯びているが、よく目をそらす。


 いつもどこか遠くを見ているようで、逃げ場を探しているような仕草にも見えた。


 姿勢は少し丸まり、ぽっこりしたお腹が目立つ。


 緑がかった服はシンプルで軽やかだが、胸元にはパンくずが散らばっていた。


 胸元や腰につけた革の小物からは、ほんの少しだけ几帳面さが感じられるが……


 それを上回るだらしなさがすべてを打ち消している。


 彼はポケットからパンを取り出し、無意識のように口へ運んだ。


 その仕草は、自分を落ち着かせるためのもののようにも見える。


 噛む動作はゆっくりで、どこか穏やかだった。


 (うん……この子が一番まともかもしれない。)


 すると突然、涼が叫んだ。


 「もういいだろ! いつまで引っぱるつもりだよ!」


 張りつめていた空気が破れた。


 焔羅はふっと笑みを浮かべた。


 「今日から、お前たちの人生は変わるぞ! ははは!」


 自信に満ちた表情に切り替わる。


 「これから魔法を教える! 魔法の仕組みってやつをな!」


 優の目が大きく見開かれた。


 (やっぱり……! あれは魔法だったんだ! でも……言わないほうがいいよな。この世界じゃ普通のことなのかもしれないし……。)


 風が強まり、木々の葉が空へと舞い上がった。


 焔羅は一枚の葉を手に取り、高く掲げる。


 「全部の源は……ここにある!」


 誇らしげに言い放つ。


 優は思わず声を漏らした。


 「えっ!? そんな……まさか……!」

重要なお願い:




もしこの章を面白いと思っていただけたら、応援の気持ちとして


お気に入り登録・コメント・★★★★★評価をしていただけると、とても嬉しいです。




どんな形でも応援していただけることが大きな力になります!


心から感謝いたします。


(^^)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ