表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

第6章「微笑みの裏にある過去」

 

 優は口を開けたまま、呆然としていた。


 全身が震え、冷たい汗が頬を伝う。


 見開いた瞳は、まばたきすら忘れていた。


 (やっぱり……! この世界、本当に「魔法」があるのか!?)


 突然、静寂が破られた。


 「うわぁぁぁ! すごい! もう一回やって!」


 子供たちの歓声が一斉に響き渡る。


 優は頬をかきながら、ため息まじりに呟いた。


 (やっぱり……世界のどこでも、子供が同じってわけじゃないのかもな……)


 丘の上では、焔羅も優と同じように息を切らしていた。


 呼吸は荒く、空気が重い。


 筋肉は硬直し、熱い汗が流れ落ちた。


 胸の奥では、心臓が激しく脈打っている。


 地面に突き立てた斧に両手をかけ、膝をついたまま、焔羅は苦笑した。


 「はぁ……いつも思うけど、これを使うと本当に疲れるな……」


 その瞬間、焔羅の脳裏に、一つの記憶がよぎった。


 陽光が木々の隙間から差し込み、黄金色の輝きが葉を染める。


 風は穏やかで、まるで囁くように心を撫でた。


 灰色の髪の男が、幼い少年の頭を優しく撫でている。


 「筋肉が痛くても、背負う荷が重くても――お前は強くあれ。皆のために、強くなるんだ」


 男は真っ直ぐに少年を見つめ、力強く言った。


 「この村に、最も美しく、最も長く続く夜明けをもたらせ」


 「うん、父さん! 約束する! 一番きれいな夜明けを、みんなに見せてみせる!」


 少年は顎を上げ、決意に満ちた瞳で父を見返した。


 ふたりの笑顔は、太陽の光そのもののように輝いていた。


 やがて父の姿は淡く光り、記憶の中で消えていく。


 残ったのは、心の奥で響くあの声だけだった。


 「……でも、こんなの、俺にとっちゃ大したことないさ!」


 焔羅は笑顔を浮かべ、額の汗を拭い取ると、勢いよく斧を持ち上げた。


 丘の上に子供たちが駆け上がってきて、焔羅の腕を引っ張りながら叫ぶ。


 「訓練! 訓練! 約束したでしょ!」


 焔羅は顎に手を当て、片眉を上げて言った。


 「ん? そんな約束したっけ? ……何の日だったかな?」


 その時、優、陽菜莉、春香が追いついてきた。


 子供たちはなおも必死に懇願を続ける。


 「お願いっ! お願いだから! 訓練してよ!」


 焔羅は大きく息を吐き、頭をかきながら言った。


 「はぁ……一日中外にいたし、腹も減ったしな。今はちょっと無理かもな……」


 春香は腕を組み、悪戯っぽく微笑んだ。


 「ふふっ、私と陽菜莉は朝から畑仕事だったからね〜」


 彼女は顎に手を当て、軽く考える素振りをする。


 「だから、夕食まではちょっと時間がかかるかも」


 「うん! 今日は私がママを手伝うの!」


 陽菜莉は嬉しそうに叫び、目を輝かせた。


 焔羅は頬を赤らめ、少し視線を逸らしながらも笑った。


 「わかった、降参だ……。でも、今日だけだからな!」


 「やったぁぁぁぁ! 春香さん、最高ー!」


 子供たちは歓声を上げ、跳ね回った。


 春香は陽菜莉の手を取り、丘を降りていく。


 「じゃあね、みんな! 気をつけて遊ぶのよ!」


 優は心の中で呟いた。


 (訓練……? どういう意味だ? まさか……魔法を教えてくれるのか!?)


 恐怖はすっかり消え、胸の中を興奮が支配する。


 筋肉の痛みも忘れ、優は焔羅のもとへ駆け寄った。


 「お、俺も……! 俺も訓練に参加していいですか!?」


 声は震え、頬は真っ赤だ。


 焔羅は大笑いしながら、優しく優を見た。


 「ははは! もちろんいいさ!」


 優は顔を背けたまま、小さく息を呑む。


 (ああ……あの目で見られると、なんか落ち着かない……。でも、それよりも楽しみだ! 早く始めたい!)


 焔羅は声を張り上げた。


 「よく聞け! この訓練は簡単じゃないぞ! 覚悟はできているか!」


 優の瞳は輝き、好奇心と期待で満ちていた。


 (うわぁ……どんな訓練なんだろう! 早く始まってほしい!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ