9 紳士淑女の皆様
スポットライトが灯り、ステージ上にピエロが現れる。
「紳士淑女の皆様方!」
観客席には黒い土にも似た無数の影がひしめいており、二つの丸い目が光っていた。
ピエロは黒檀のステッキを回しながら赤い唇を開く。
「大人の李人が表に出てから数年がたつ。やつは我ら人格を記憶容量にし、テストはいつも満点ッ、女子とも仲よしこよし、まったくけしからんッ、羨ましい限りであるッ」
観客席がBeeee! とわめく。
「私はクーデターを起こすッ、出でよッ」
ピエロがステッキを床に突いて鳴らすと、ステージの右から白い馬車が歩いてきた。
ドアが開き、ピエロは中から一人の男児を引きずり出す。馬車は左へと消えた。
ピエロは眠っている男児を抱え、観客席に見せる。
「子供の李人ッ、李人殿下であるッ。先刻、私は国王、王妃を欺いた。同じく泥でこねた人形を李人殿下に見立て、王妃の前で引き裂いて見せたッ。するとどうなったかッ。リカ王妃は絶望のあまり窓から身を投げたッ、アリカ国王はバラバラになった王妃を必死につなぎ合わせようとしている。その隙に、私は本物の李人殿下を連れ出した。あとは影武者、大人の李人を廃するのみッ。今、やつは前後不覚に陥っている。我らの調和が乱れたからだッ。劇場の檻より解放されたき者は我に続けッ、城を攻め落とすのだッ」
観客席の影たちがBeeee! と歓声を上げた。




