8 いつか離ればなれになりそうな
まりなは結局、町の学校が合わないとかで、李人と同じ田舎の中学に来ることになった。
もちろん一緒に暮らしている。
彼女の自己紹介は以下の通り。
「将来の夢は李人の嫁になること。まりなでっす。キラッ」
ピースサインしてウィンク。
盛大に滑った、女子の間では。男子はズキューンと胸を撃ち抜かれた。
彼女は初日こそちやほやされたが、次の日には李人としか話したくないと言い出し、一週間後には学校に来なくなった。
李人は家で宿題をした後、自分の病状を分析していた。
昔の日記を読む。
「アリカとリカがいて、李人、すなわち俺が発生したわけだが、それは本当に俺なのか」
今、アリカの声はしない。眠っているのだ。
「十字架が、主人格だとしたら。そしていじめられる李人を守るためにもう一人の李人、すなわち俺が生まれたということはありそうだ」
「なにぶつぶつ言ってるの」
まりなが話しかけてくる。
李人は尋ねた。
「宿題は? 俺が毎日持ち帰ってるわけだが」
「学校やめる」
「やめたらどうなるかわかる」
「李人の嫁になるもん」
李人は少し考えてから言った。
「俺は勉強しない女の子は嫌いだな」
「一次方程式、教えて」
「一人でやれ」
そこへ母がやってきて、教えてやれと言った。父はテレビで野球を見ている。ジャイアンツと阪神だ。
李人は教えてやることにした。まりなはかわいい。本当に将来、結婚するのだろうか。中学校にも気になる女子がいる。
それでも、やはり、まりなと話すのが一番気安い。
父が心中を見透かすように言った。
「お気楽に話せる仲が一番だぞ」
ビールを飲み、ぱあ、と息を吐く。
将来。霧しか見えない。今はただ、このままでいいのだ。




