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EVIL  作者: 頻波幾瀬
5/12

5 想像上の別人

(音声から抜粋)


主治医「なるほど、それでわかりましたね。あなたの抱えていた妄想の答えが」


あなた「ええ、誘拐なんてなかった。単に病院から自宅に帰っただけでした」


主治医「あなたは何度も誘拐されたとのことですが」


あなた「記憶にはあります。しかし記憶は嘘をつきます。シッターが最悪な女子学生でね。足を抱えて振り回されたり、天井にぶっつけられたりした。人格はバラバラに引き裂かれた」


主治医「その頃のあなたは、3歳くらい?」


あなた「さあ。しかし、3歳までの記憶は残らないと、なにかで読みました」


主治医「残らないとしても、その後に支障がでるなら、何かがあったせいですよ」


あなた「……」


主治医「ねえ、いろんなことがありますから」


あなた「驚きました。あんまり精神科医の言葉とも思えないので」


主治医「私がこの病院に勤めていたの、びっくりしたでしょう」


あなた「まあまあね」


主治医「で、謎がとけた感想は」


あなた「……」


主治医「あんまり気持ちよくない?」


あなた「いえ結局、僕は李人なのかアリカなのか。そもそも守られる存在なのか、守っているのか」


主治医「ふむ」


あなた「どうもまだ受け入れなくてはならないことがある」


主治医「受け入れる、とは」


あなた「僕の病に必要なことは、単に思い出すだけでなく、それを冷静に受け止めること。だと思うのです」


主治医「なるほど」


あなた「そのためには小1の頃の入院についても語るしかない」


主治医「入院が多いですね」


あなた「ではまた。ありがとうございます」


主治医「はい。私が判子を何度もついていたことは気にしないでください」

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