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EVIL  作者: 頻波幾瀬
4/12

4 ゆうかいくらい しっている

 白い壁、白い天井、白い床。

 一句できたな、とリヒトは思った。

 外界に対応する人格の()()は大人によく甘え、見ているテレビ番組の影響もあるやら知れないが、自分を城の王子とでも思っているらしかった。


「ちょっと」

 とリカの声。

「どうした」

 リヒトが応じると彼女は言った。

「あんた、名前変えてくれない。李人とかぶってたら分かりづらいもの」

「名前、名前は、アリカで」

「オッケー。由来は?」

「秘密」

「へえ、ほお」


 病院でちやほやされる人生にも終わりが来る。

 母上様と書いてクソババアが迎えに来たのである。

 やけに香水か何かの香りがする実母を李人は拒絶した。

 抱っこされても看護師たちのほうに手を伸ばし、ギャン泣きした。

 病院から出て自動車の助手席に乗せられるとようやく観念し、泣き疲れて眠る。

 車内の振動が看護師に抱かれているように錯覚される。

 ふと目を覚ますと町のなかだった。いろんな人がいろんな服装で歩いている。

 アリカが心の奥から李人に語りかけた。

「見てみろよ、車と人が整然と動くように、良くできてるんだな、道路は」

 李人は安心していた。これだけ人がいれば悪いことなんて起こせないに違いない。

 しかし。


 車は町を抜け、人家もない道路を通る。山がせまってくる。深い緑の大きな山。峠を登り、トンネルを抜け、下る。不思議と李人はトンネルの闇が素敵だと感じた。

 ただし車の行方は不穏だ。


 広い川にかかる大橋を渡り、坂に張り付いているような人家と、何枚か広がる田畑。

 とうとう車は坂の下の車庫に止まった。

 実母に抱かれて坂を登る。

 坂のてっぺんに家があった。

 平屋である。

 

 家のなかは、整えられてはいるのだが、経年劣化を隠せてはいなかった。暗い。

 実母は土間を上がって李人を居間におくと、どこかへ消えてしまった。


 李人が立ち上がり、思わずリカが呟いた。

 口を開けて、呟かざるを得なかった。

「なに、このボロ屋」

 李人は思う。

 ゆうかいというやつだ!

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