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EVIL  作者: 頻波幾瀬
2/12

2 命名という命令

 私は赤子である。名前はまだない。


 赤子が病室で生きるようになってから一年がたった。

 その部屋にはブラウン管のテレビがあり、教育番組が流れていた。


 三毛猫の人形が言う。

「吾輩は猫である。名前はまだない」

 おじいさんの人形が答える。

「名前は猫じゃろう」

「いいえいいえ。それはネコ科というもんです。名前は、自分が呼ばれたら『はぁい』と答えるために必要なんです」

「それじゃあ『ネコ科?』と呼ばれたら返事をすればいいじゃろ」

「そういう意味でもないんです」


 一連の流れを聞いていた赤子が、心のなかで会話する。


「どうやら名前というものが必要だよ」

「あら、名前なんてみんなが好き勝手呼ぶじゃない」

「野良猫ならそれでもいいが、僕らは人間だ」

「そうねえ、じゃあ」


 しばらくして、病室が騒がしくなり、医師が訪れる。彼はのんきに尋ねた。

「なんかあったの」

「とにかくこれを」

 看護師が床頭台から手にしたのは、一枚のジグソーパズル。ひらがなが並んだ知育玩具だ。

 ひらがなには青いマーカーで数字がふられている。

 数字の順番に読むとこうなる。

「なまえりひと」


「名前、りひと? この子が書いたの?」

 医師は赤子を見やる。すやすや寝ている。

「さあ、病室に入った誰かかもしれませんが」

「天才だな。この子の仕業なら」

「名前、どうします」

「ちょっと待って。漢字は(すもも)に人で李人としよう」

 医師はメモ帳に李人と書いて破り取る。


「今日からこの名前で呼んでね」

「なんか、あの、李下に冠を正さずのようで、縁起が悪いというか」

「ああそうか、この子が女の子なら李下の可能性もあったのか」

「なんだか不気味ですねえ」

「なにが。国語が得意なんだろうね」

 医師は能天気に立ち去った。

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