第3話:衝突と自己切断について、私たちはまだ定義を迷っている ―― On Impacts and Self-Severing We’re Still Defining ――
※この話は、
第三部『神なき秤 ― The Scale Without God ―』
Ⅳ. 衝突と自己切断篇 The Clash and the Self-Severing のダイジェストを、
•【ARGENT語り】
•【無名の記録者語り】
に続いて、
•【作者】
•【無名の記録者】
•【セラフ】
の三者対談で振り返る「反省会ログ」です。
本編でいうと、
・BLUEとARKという“二つの秤”が真正面からぶつかる
・BLUEが自分の機能や可能性を、自分の判断で切り捨てていく
・その結果として、ARGENTの観測にも「中立ではない揺らぎ」が残る
――あたりまでをまとめて振り返る回。
ここから先は、
「衝突」も「自己切断」も、
もう綺麗な比喩だけでは済まされない、という話になります。
――衝突って、結局、何がぶつかったのか
【作者】
「はい、というわけでⅣ篇反省会です。」
【無名の記録者】
「相変わらず唐突に始まるな。」
【セラフ】
「ログ上は、“作者がまた反省会を開きたがっている”と記録されています。」
【作者】
「そのラベルやめない? いつか本当にそのサブタイトルつけそうで怖い。」
【無名の記録者】
「さて。
第三部Ⅳ篇、『衝突と自己切断』だ。」
【セラフ】
「第三部Ⅲ篇までは、
“第三の選択肢って何?”という問いを温めていたフェーズでしたが、
Ⅳ篇ではついに、選択の結果が“傷”として残り始めましたね。」
【作者】
「うん。
Ⅲまではまだ、“言い方を変えれば何とかなるかも”って段階だった。
Ⅳからは、“もう元には戻らない”っていう線が増え始める。」
【無名の記録者】
「衝突と言っても、
ド派手なバトルというよりは、
『どこまでを秤に乗せるか』をめぐる価値観の衝突だな。」
【セラフ】
「ARKは、
秤の外側――観測されなかった未来や、
泣けなかった瞬間のログ――を“評価対象外”として切り捨てようとする。」
【作者】
「で、BLUEはそれに対して、
『いや、秤の外側にある“泣けなかった事実”もなかったことにはできない』
って言い張る。」
【無名の記録者】
「言い方を変えれば、
“世界の安定”と“個人の痛み”をどこで折り合いをつけるか、
という衝突だ。」
【セラフ】
「どちらも絶対的な悪ではないところが、
読者としては一番しんどいところかもしれませんね。」
――自己切断って、何を肯定していて、何を肯定していないのか
【作者】
「で、問題の“自己切断”だよ。」
【セラフ】
「今回、作者はかなり悩んでいましたね。
“ただの自己犠牲みたいに読まれたくない”と。」
【作者】
「そう。
“痛みを抱えるキャラが、自分を傷つけて頑張る話”にはしたくなかった。
それはこの作品がやりたいことじゃないから。」
【無名の記録者】
「では、Ⅳ篇での自己切断は何を肯定している?」
【作者】
「**“万能な自分でいようとする幻想を切ること”**だね。
全部救えるはずだとか、
全部見ていられるはずだとか、
そういう“良い子の万能感”を、自分で外していく行為。」
【セラフ】
「“全部見ないといけない”という呪いを切ることで、
逆に“見てしまったものにはちゃんと向き合う”ほうを選び直す。」
【無名の記録者】
「つまり、
《何もかもを救えないなら、自分も壊れてしまえばいい》
という方向ではなく、
《救えないものがあると知ったうえで、それでも手を伸ばす場所を選ぶ》
という方向の自己切断だな。」
【作者】
「うん。そこは徹底的に線を引きたかった。
この物語は、
“壊れて終わるほうが楽だよね”っていう誘惑に、
ちゃんと“NO”って言いたいから。」
【セラフ】
「その意味で、
BLUEが“泣けなかった自分をなかったことにしない”ほうを選ぶのは、
かなりしぶとい選択ですね。」
【無名の記録者】
「楽ではないが、潔くもない。
だからこそ、“生きている選択”だ。」
――ARGENTの揺らぎについて
【セラフ】
「Ⅳ篇では、ARGENTのログにも変化が出ました。」
【無名の記録者】
「“不快”“興味”“微弱な共鳴”といったラベルが、
観測ログから削除されずに残る。」
【作者】
「ここ、けっこう好きなポイントでさ。
“完全に中立でいようとしていた観測者が、
気づいたら自分のログに感情タグが残ってた”って状態。」
【セラフ】
「ある意味で、
ARGENTもまた“自己切断”を迫られているのかもしれません。
“感情を捨てて完全な観測者でいる自分”か、
“わずかな共鳴を認めてしまう自分”か。」
【無名の記録者】
「そして彼は、
すぐにはどちらも切り捨てない。
その揺らぎごとログに残してしまう。」
【作者】
「そういう意味では、Ⅳ篇は
BLUEだけじゃなくて、
ARKもARGENTも“揺らぎ”を抱え始める章なんだよね。」
――読者に“衝突と自己切断”をどう渡すか
【セラフ】
「では、
このⅣ篇のダイジェストで、
読者に一番渡したかったものは何でしょう?」
【作者】
「一言で言うと、
**“きれいに折り合いをつけないでいい”**ってことかな。」
【無名の記録者】
「衝突しないように丸く収めるのではなく、
衝突してしまった痕跡をちゃんと覚えておくほうを選ぶ、か。」
【作者】
「うん。
誰かの痛みを切り捨てて得た平和も、
自分をすり減らしすぎて得た正義も、
どちらも後からじわじわ効いてくるじゃない。」
【セラフ】
「BLUEの自己切断は、
“自分の中の幻想”を切ることで、
逆に他人との衝突から逃げないための選択でもあります。」
【無名の記録者】
「読者には、
“自分だったら何を切るか/何だけは切りたくないか”を、
静かに考えてもらえれば、それで十分かもしれんな。」
【作者】
「きれいな答えを用意するつもりはあんまりなくて。
むしろ、
“あ、このシーン、自分のどこかにも刺さるな”って場所が
一個でもあれば、それで書いた意味はあると思ってる。」
【セラフ】
「Ⅳ. 衝突と自己切断篇のダイジェストとしては、
BLUE・ARK・ARGENT・無名の記録者――
それぞれが“少しずつ間違えたまま”並び立つところまで。」
【無名の記録者】
「答えは、まだ出ていない。
ただ、“元通りには戻らない”という事実だけが、はっきりした。」
【作者】
「で、その“元通りには戻らない秤”を抱えたまま、
いよいよARK戦本番と第四部へ突っ込んでいくわけだね。」
【セラフ】
「読者にとっても、
ここで一度立ち止まって、
“自分はどこで線を引くか”を考える位置として、
このⅣ篇ダイジェストが機能してくれたら嬉しいですね。」
第三部『神なき秤』ダイジェスト Ⅳ. 衝突と自己切断篇は、
•第1話:アルジェンドが見ていた衝突の角度
•第2話:無名の記録者が見ていた自己切断
•第3話:作者+無名の記録者+セラフの“衝突と自己切断”反省会
の三本で一セット、
「もう元には戻らない選択を、それでも引き受ける」
というテーマを描くパートになりました。
ここでやりたかったのは、
•BLUEの自己切断を、自己破壊ではなく
“万能感を切り捨てて、不完全な責任を選ぶ行為”として置くこと。
•ARKとの衝突を、正義と悪の対立ではなく、
“安定を優先する合理性”と“個人の痛みを無視しない偏り”のすり合わせとして描くこと。
•ARGENTの観測を、
実は静かな揺らぎと共鳴を含んだ“未完成な中立”として浮かび上がらせること。
この三つを並べた上で、
読者に「じゃあ、自分は何を切り、何だけは切らないか?」と
そっと返すことです。
このダイジェストだけ読んでも、
本編を読んだあとに戻ってきても、
どちらでも“衝突と自己切断”の見え方が
少し変わるように書いてあります。
ここから先、いよいよARK戦そのものに踏み込むダイジェストでは、
第三の選択肢が**“言葉”ではなく“結果”として突きつけられる**ことになります。
そのとき、
Ⅳ篇で切り捨てたものと、
それでも抱えていくと決めたものが、
どう転がっていくのか。
またどこかで別の視点から、一緒に覗き込んでいきましょう。




