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第九話



 そうして今度は次女イモトヒーメ19歳の結婚式の日がやって来た。

 こちらはトコナッツ王国へと嫁ぐ形になり、式もあちらの国で執り行われることになった。


「お母様、私達は明確に私達自身の意思で結婚するの。政略結婚だなんて誰にも言わせないぐらい幸せになるから」


 我が国を発つ前夜にイモトが見せたその勇壮な笑顔を、私は生涯忘れはしないだろう。


「……それと、もうこの際だから打ち明けておきたいんだけど」


「あら、どうしたの?」


「ショータ様が学校中の女子からいくらモテても、それこそ四つも上の私の学年の女子にすら言い寄られても、

 全員をあっさり袖にし続けたことに関して、私が同級生から『ショータ様の心に決めた人って一体誰なの?』って何度追究されても、

 ひたすらずーっと全部愛想笑いで知らない振りして受け流し続けたその苦労を、少しは察していただけると助かります……」


「…………ごめん…………」


 ……こっちの静かに圧をかけてくるようなイモトの苦笑いも、私は到底忘れられそうにない。




「イモトと姉妹になって一緒に暮らせるようになるなんて夢みたぁい!」


「これからはよろしくね、クロ!」


 私の子供達の中で元々クロギャール王女と一番親しかったのは、同年齢のイモトである。

 今後ともウオデッカ王国とトコナッツ王国の友好を象徴するように仲良くあり続けてほしいものね。


 ……そして、この国まで足を運んだということは当然……。


「やーやーやー、まさか俺の息子とヴィマージョの娘がねぇ!」


 こいつとも顔を合わせる羽目になるというわけで。


「……本当ね」


 本当にまったく、人生何が起こるかわかったもんじゃないわ。あのチャラウォッジとの間に明確に親戚関係が出来上がってしまうとは。

 なんか……ここだけはちょっと複雑だわ。口に出すのは流石に失礼すぎるから言わないけど。


 でもイモトがチャラウォッジに対して「父さん」って呼びかける所を見ちゃった時は……なんか、色々と……こみ上げる物があったわ。良いのか悪いのか、むしろ両方なのかはともかく。

 私の夫まで「そうか……父さんか……」と若干動揺してたし。


 尚、この呼び方はチャラウォッジ本人の要求らしい。お父様だの父上だの、そういう路線は柄じゃないからと。それは確かにこいつには似合ってないわ。


「貴方の三男坊、意外と謹厳実直な子だったわね」


「だろ? あんないい子に育って俺も結構驚きなんだわ」


 意外と、の部分は自分でも失礼な言い方をしてしまったと思うのだが、本人もその辺は認めてしまうらしい。


「まァアレなんだよなァ、長男と次男が喧嘩ばっかしてたのを見ながら育ったせいで、常に冷静に全体状況を俯瞰するような抜け目ない奴に育った感はあるな」


「ふーん……上の子二人ってそんなに仲悪かったの?」


「そりゃァ悪かったよォ、ってか今でも大概なんだよォ。もう二人とも20過ぎてお互い仲悪いなりに最低限の折り合いをつけることぐらいは覚えたけどさァ。

 ある意味じゃ下のきょうだい全員の理想的な反面教師ってトコだな」


 何、将来の王位の取り合いでも白熱してるの? ……なんて聞き方は最悪すぎるので流石にやらないが。




 ちなみにこの翌日、連続してブトゥーカ殿と第二王女殿の結婚式も行われた。貴方達もそこまで進んでたのね……。


「ありがとうございますチャラウォッジさん、オレたちにもここまで……」


「ハハハ、なんならブトゥーカ君も俺のこと父さんって呼んでみるかい!?」


「ブフッッ……チャラウォッジさんをッスか!?」


「オイオイ何噴き出してんのさァッ!」


 尚、イモトの方はこのままトコナッツ王国に移住することになるが、ブトゥーカ殿はウオデッカ王国領内の道場に妻を連れて帰るそうである。


「おめでとうございますブトゥーカさん!」


 ショータ様もかつての旅仲間の中で一番最初に結婚式を挙げた彼を熱く讃える、が。


「ありがとよショータ! お前もきっちり夢叶えろよ!」


「はい!!」


 ……えっ。


「……いやブトゥーカ、ショータ君に夢叶えろって……」


「ブトゥーカ殿……『そちら』を応援する側に回るということですか?」


 セキーシとケンジャー殿がすかさずツッコミを入れるものの。


「いやぁ……ショータも18になるまであと3年切っただろ。それでここまで一切ブレてねぇとなると今更引き止めんのも野暮かなって……もうオレには止められんと言うか……」


 なんですと。


「いや女王陛下そこで見てらっしゃるんだけど!?」


「ま、まだあと2年そこそこは……」


 勇者一行四人、ここにきて二対二に内部分裂ですか?


「いや逆だろ、もう残り2年そこらで今更ショータが……なぁショータ?」


「勿論です! 僕はこのままです! 絶対に!」


 ……事の発端となったあの日、ブトゥーカ殿が「オレァお前をそんな子に育てた覚えはねェーッ!!」とショータ様に絶叫していたのはもう終わった過去ですか?

 あんなに叫んでたじゃないですか貴方……そういえばあの一件、もう3年以上前なのか……。


「…………陛下!?」


 いやセキーシ……そこで振り返って呼びかけられても……私自身もどう答えれば……。


「お母様」


 そこで私の後ろから肩を叩いてきたのは……昨日結婚式を終えたイモト。


「ショータ様のあの真っ直ぐな眼差しからいつまで逃げるおつもりなの?」


 ……貴女、いつからそんな圧力に満ちた笑顔を覚えたの……?

 アーネまで冗談なのか本気なのか、ショータ様が私と結婚なさったら……なんて言うようになってたし……。


 ……いや……そうか、逃げか……私はあの時からずっと逃げ回ってばかりいるのか……。


「……イモト……貴女も、もう『そちら』側に回るの……?」


「勿論、最後に受け入れるかどうかの決断を下すのはお母様自身だけど……そろそろ本格的に決めないとマズいんじゃありません……?」


「ぅぐっ……!」


 …………娘にすら諭される段階にまで来ている、ということで間違いないらしい。


「ヴィマージョ様ぁ、いつまでもあんまりウカウカしちゃってますと本当にオコちゃまにショータサマ取られちゃいますよ?」


「クロ王女……ッ!」


 この子まで連携攻撃を仕掛けてくるのか……いやオコッサ殿の大逆転勝利で終わるならそれはそれで……。


 それはそれで……本当にいいの……?


 本当に……いいの……?


 と言うより、あのショータ様がここまで来て今更彼女にお乗り換えになんて……あ、いや……そんな言い方じゃ、まるで私がそうなって欲しくないと本当は思ってるみたいな……。


 じゃあ結局私はどうなってほしいというのか……。


 それはどう、って……。


 どちらにしろ……もうほとんど後が無くなってきているということだけは確かなんだけど……。


 ……とにかく、帰国したら今一度ショータ様と対面できちんと話し合うべきかしら……。




 * * * * * *




 ……というわけで、嫁入りを果たしたイモトを名残惜しくもトコナッツ王国に置いて帰ってきた後。


 私は一応夫も交えて、ショータ様と三人だけで部屋で夕食をとることにした。


「……ショータ様は、学校でも優秀な成績を収められているそうですね」


「女王様の隣に立てるような大人になるためならいくらでも頑張れます!」


「それから、ショータ様は女子生徒の方々に人気があるそうですね」


「僕は女王様一筋ですよ!」


 ……もう出だしからちょっと挫けそうになるんだけど。


「えーっと……貴方に声をかけてきた女子生徒は全員……袖に……と言うか……お断りなさったと聞いたのですが?」


「はい。僕は心に決めた人がいるってずっと言ってるのに、何回もそんなことがありました。

 過去に一回断ったことがある人が、日にちを置いてまた来たこともありますけど、それもごめんなさいと断りました」


 そんなにモテんの……!? よく考えたらオコッサ殿も実質的にそういう女子のうちに入ることになるが。


「……貴方があの旅から帰還して、私に……あの宣言をなさってから、もう3年以上になりますね……ショータ様のお気持ちには、今も全くお変わりは無いのですね?」


「ありません! それは全くありません!」


 本当に両目に迷いが無さすぎる……。


「では、ショータ様……私の夫のことは、どう思っておられるのですか?」


 隣の夫は「ここで私に振ってくんの!?」みたいな顔をして若干焦っているが、いや……なんかごめんなさいあなた。


「僕は将軍さんのことだって大好きですよ!」


「えっ」


「ッゴッホ! ゲホッ……!」


 夫がむせた。


「女王様の大事な人なんですから、僕にとっても大事な人です!」


 相変わらず彼の目には何の曇りも無い。全て本気で言い切っている。これ、器が大きいとかそういう認識をしていいものなのかしら……。


「……あなた」


「む……」


 私が目配せし、呼吸を整えた夫がそこから交代で喋り始める。


「ふぅ……ところでショータ殿は、今年で何歳になりましたかな」


「15です」


「そうか……ふむ……私はもう44、陛下は43です。貴方が18になる頃には更に3ずつ増える。つまり……私達は、貴方よりもずっと早くに……没することになる。

 貴方はそこまでお考えだろうか? 本当に、この選択で良いのか?」


「構いません! そんなことで迷うぐらいなら最初からこんなことは言ってません!」


 ……思春期の子供特有のただの向こう見ず発言、と大人が片付けてしまうのは簡単なことでしょうけど。しかしあの両目の迫力は、容易く否定できるものではない。


「ではそれで結構…………それからショータ殿」


「はい」


「…………ふぅ……これは言って良いのやら……」


「どうしましたか?」


「……オコッサマミコ殿のことはお嫌いか?」


 まぁ、彼女の件は私も話題に出すつもりではあったが。


「いいえ、好きです。でも友達としての好きです。僕はオコッサさんを友達だと思っています。それ以上先には行けません。大好きとまでは言えません」


「しかし彼女は……」


「そうです、オコッサさんの方は僕のことが大好きで、結婚したがってます。だからそれだけはお断りし続けています。でも友達付き合いだけはしたいんです。

 僕はとても中途半端なことをやっていると自分でも思います。いっそ二度と会いに来ないでくださいと言った方が彼女のためなんじゃないかと思ったことだってあります」


 あ、ショータ様はショータ様でその辺りのこと、少しはお悩みになってたのね……。


「いやいや、何もそこまで……」


「そういえばマッティー君がオコッサさんのことを気にしているみたいだから、いっそマッティー君が彼女を引き受けてくれないかなぁと思ったこともあります」


「えっ……」


「押し付けるみたいで悪いですが」


 確かにマッティーにそういう素振りはあったけど、あのオコッサ殿がショータ様以外に目を向けるだろうか……。


 ……ところでここからどう話を広げよう。


「あの、ショータ様」


 とりあえず再び私が割り込む。


「……もしもの話ですが」


「はい」


「もしも……仮に、私が貴方の好みの女ではなかったとしたら、ショータ様はオコッサ殿をお選びになっていたのでしょうか?」


 ……自分で言ってて、そんなこと聞いてどうするんだって感じだが。


「うーん……女王様」


 ごく僅かに悩むような素振りだけ見せて、ショータ様が続ける。


「こんなこと言って悪いんですが、そういう想像はあまり意味が無いと思います。反実仮想っていうんですよね、こういうの」


「うっ……」


 ……いや、まったくその通りで。自分でもそう思ってた所です……。


「僕は女王様が大好きです。愛してます。それはもう事実として決して揺るぎません」


 ……ああもう、声変わりが始まって以前より若干声は低くなられたけど、相変わらずショータ様はもう本当に可愛らしいことばかり……って違う違う。そうじゃない。


「……ショータ殿」


 私の意思がグラついている横で、再度、夫が話に入る。


「貴方は陛下と……その…………結婚をして、そこから一体何をしたいのか、ということは……考えておられますかな?」


 ……結婚の部分、明らかにものすごく言い淀んだな……当たり前だけど。


「女王様の助けになりたいです!」


「……具体的には?」


「そうですね、大陸の各国を侵略していた魔王は、確かに僕とセキーシさん、ブトゥーカさん、ケンジャーさんの四人で倒しましたが、

 あの戦いが終わってからそれぞれの国の平和を守り続けているのは、それぞれの国の王様たちです。


 今の僕はもう勇者をやめた、ただの一人の学生で、まだ世の中のためには特に何もしていませんし、何も出来ません。

 そのことを学校生活や、トコナッツ王国への留学を通じて知りました」


「むっ……」


 あら……思ったより結構しっかりしたお考えをお持ちで……と言うか留学経験ってちゃんと貴方の学びになってらっしゃったんですか……いや失礼な言い方だが。


「だから女王様のお側で何かお役に立つことがしたいです! まだ、具体的にそれが何なのかは決まってませんが!」


 …………大変元気ハツラツとしたご回答である。成程、学校の先生方にもウケが良さそうな優等生ぶりだわ、つくづく。


「ふむ……失礼ながら、それならばショータ殿は剣で国を守る騎士となるのが最も手短な方法だったのでは?

 はっきりと言って、貴方は私などより遥かにお強い。ゆくゆくは私の後を継いで、将軍となることだって容易いだろう」


「僕はもう決して剣は取りません! その道には興味も未練もありません!」


 意志も固い……それに、ショータ様のその決断に関しては、私の最初の願いも踏まえた話だったしね。


「イーテッシュさんも、僕が二度と剣を取らないことこそが平和の証だと言ってくれましたから!」


「……そうだったな。イーテッシュは今では私の義理の息子でもある。息子の意思を踏みにじってまで貴方をこの道に引きずり込むわけにはいかない。

 すまないショータ殿、これはとても迂闊な発言だった。無礼をお許しいただきたい」


「いえいえ」


 ……これはもう駄目ね。こっちが夫婦二人がかりで何を言っても普通に全部言い負かされてるわ。ショータ様は本当にお強い。強すぎるわ。


 …………じゃあ私、やっぱり結婚するしかないんですか?


 ………………この三者面談、結局ショータ様の求愛の強度がいかに無敵かを再確認しただけで終わりですか?


 ……………………どうしよ。


「ごちそうさまです、女王様、将軍さん」


 …………そういえば食事中だったわ今。


「……私達は全然食べてなかったわね」


「そうだな……」


 とりあえず、魚の焼き物を切り分けて口に入れる。完全に冷めきってるけど。


「またいつでも三人でお話がしたいです!」


「……ショータ殿としては、陛下と二人きりの方が良いのでは?」


 いや二人きりにされるのはちょっと困るんだけど。


「将軍さんも大好きだって言ったじゃないですか!」


「…………ショータ殿…………」


「待ってあなた、ときめかないで」


 何、これはショータ様なりの作戦なの?

 夫も上手いこと丸め込んでおけば私にもっと接近しやすくなるだろう、とかそういう……そんな失礼な物の見方ばかりして申し訳ありませんショータ様。




 …………うん。勝てんわこれ。

 ショータ様を学校に通わせて友達作りでもさせておけば自然と無茶な夢からも目が覚めるという見込みだったんじゃないんですかケンジャー殿。

 いやそんなこと責任転嫁したって…………。


 ……ところでオコッサ殿は大好きとまで言えないけど、私の夫は大好きっていう部分はもうちょっとツッコむべきだったのかしら……。




 * * * * * *




 ……由々しき事態である。それはそれは本当に大変に由々しい。


 そう……「第二王女様まで他国に嫁いでしまって、じゃあショータ様は結局一体誰とご結婚なさるの?」という話が町中で問題になる中。


 誰か関係者が口を滑らせたのか、それとも噂の広まりなど元々制御しきれるようなものではなかったのか。


 とうとう……遂に……「ショータ様は女王陛下とのご結婚を望まれている」という話が、市井にまで漏れたらしい。


 …………もうあの一件からそろそろ4年近いし、むしろ今までよく抑え込めたな、と言った方が正しかったのだろうか。いや知らんし……そんなの知らんし……。




「……陛下……」


「セキーシ……!?」


 なんかすっごいげっそりした顔のセキーシが、廊下を歩いている途中の私の下までやって来た。


「あの件……ショータ君と共に旅をした仲間の一人として……町の人々に質問責めに遭いまして……」


「……ああー……」


 これもしかしてブトゥーカ殿とケンジャー殿も似たような事態に遭ってる可能性とかある?


「しれっと私が独身なことまでイジってくる奴とかいたしッ……!」


「それは酷いわね……」


 酷いとか言っても大元の原因の半分は私にあるのが申し訳ないとしか言いようがないが。


「ブトゥーカだけ一足先に結婚してくれちゃってッ……私だってアーニジャー殿下が今もご存命ならッッ……!」


「えっ」


 ……そこで魔族との戦いで死亡した私の長男の名前が出てくるの? そういえばセキーシと同年齢で、騎士としての上官だったけど。


「セキーシってアーニのことを……?」


「え、あぁ、いや……その……」


「……貴女もアーネとイモトと一緒にショータ様を振り向かせようとしてた場面、なかったっけ?」


「いや、あれはー……一年も一緒に戦ってきたのにショータ君が私のことなんか歯牙にもかけてなかったのかなって思うとちょっと納得できなかったんで、

 その場の勢いで王女殿下お二人のノリに便乗しちゃっただけ、と言いますか……」


 ……それは確かに納得し難いか。


「今になってよくよく考えてみたら、こう……ショータ君のお母さんが亡くなった時に私が抱きしめたらすぐ振りほどかれた、って話もしましたよね?

 もしかしてあれも……ショータ君って私なんかには触られたくなかったのかな……普通に嫌だったのかな、って……」


「……セキーシ、言いながら余計に表情が暗くなってるから。それ以上は言わないでおきなさい」


「あ、はい……すみません……」


 なんか……こっちの方こそ彼女に色々と申し訳なくなってくる……。


「……あの、陛下」


 何やら意を決したような表情に戻るセキーシ。


「……こんなことをお聞きするの、すごく、差し出がましいとは思うんですけど……」


「どうしたの?」


 随分嫌な予感がする前振りを置くじゃないの、と思っていたら。


「陛下は……その……ショータ君のこと、お好きですか……?」


「うっ……!」


 セキーシまでッ……!


「……いや、すみません! 忘れてください! 私は持ち場に戻りますんで!」


「あっ、ちょっと!」


「聞かなかったことにしてくださいッ! ほんとにごめんなさいッッ!」


 彼女は慌てて走り去ってしまった。


 ……それにしても、もう本当に後がなくなってきている。ショータ様の18歳の誕生日という制限時間までは、そろそろ残り2年か……。


 …………好きか嫌いかと聞かれたら…………そりゃあ…………。




「ショータよ、せめて一回ぐらいわらわと二人だけで町に……」


「駄目です」


「ぐぅぅッ……!」


 ……私が誘ったら喜んでデートしてくださるのかしら、あれ……いやいやいやいや……何考えてるのよ自分……。


 …………オコッサ殿もあんなに遠い所から頑張って行き来しても尚、あれだけ何年も素っ気なくされて、よく折れないわよねぇ…………。


 と、離れた位置から眺めていると、突如横からショータ様の肩を抱いて割り込みをかけるマッティー。


「じゃあ今日は僕がショータと遊びに行こうかな」


「マッティー君がですか? いいですよ」


「待てェェェェェェいッッ!! この際そやつと一緒でも構わんからわらわだけを置いていくなァァァァァァァアッ!!」


 ……何事?

 ひょっとしてオコッサ殿とショータ様の間に混ざるためのマッティーなりの作戦かしら……。



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