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花邑杏子は頭脳明晰だけど怖くてちょっとドジで馴れ馴れしいがマジ傾国の美女【第43話】

講演の翻訳は、難解を極めた。

もう専門用語しか出てこない。しかもこのJAXAの職員は、わが社をバカにしている!材料の調達もできないアンポンタンが何を言ってるか。と隣に座っているおじさんが憤慨してた。

義範はタイピングを諦め、話を聞くことに徹しようとした。

据え付けてあるヘッドフォンを手に取り、耳にあてた。したら、驚くことに同時通訳をしている。

彼女のほうへと視線を送ると、なんと瀧川美春が!

優秀だとは聞いていたが、まさかここまでとは。

彼女は義範に気づくと、投げキッスを返してきた。

余裕なのか?この専門用語バリバリの講演の翻訳が、イヤミたらたらぬかしてる奴の翻訳が、余裕なのか?驚きを隠せないまま、講演は終了した。

すぐに彼女に声をかけた。

「音声データ貸して!」

彼女の回答はノーだった。

「これには、私の翻訳のノウハウが詰まってるの。だからおいそれと、同業者には貸せないわ」

音声データは、広報のレポートに使うので音声は公開しないからなんとか!と説得したのだが、彼女は首を縦に振らない。

「じゃあ明日、飲みに行こう」

「お酒、嫌いなの知ってるでしょ」

「なら、いらないや」

義範がその場を去ろうとしたらーー

「待って。そんなにすぐに諦めるの?」

「その気になれば、自力でなんとかなるから」

「他にも仕事、ため込んでいるでしょ」

「徹夜で頑張れば、出来ないことないし」

「うおっほん。なんとか協力してあげてもよくてよ」

「最初から言えよ」

「知らない」

「さよなら」

「待ってぇ~!協力するから!」

「そもそも、俺らのことバカにするような奴の講演なんか、採用されるわけないし」

「私も聞いてて頭に来たよ」

「そういうことだからーー」

「それで終わり?私たち終わりなの?」

義範は去っていったーー

瀧川美春は唸っている。

「よくもこの私を・・・見てなさい」


飲み会は過去最大の盛り上がりを見せた。

星深雪は大ジョッキ2杯を飲み干した。

「なーに飲んでるの?あら、カルアミルクだって。あなた女の子~」

そう大声で吹聴されたものだから、たまったものではない。

「ヨシノリ!カモーン!」

スティーブが背中を豪快に叩く。そんな彼はバーボンの瓶を抱えて離さない。飲むときはラッパ飲み(!)。彼の気分は最高潮だ。なんだかんだ言って30人は集まった。しかも殆どが酒好きときたから盛り上がらないわけがない。場は混沌を極めた。義範はハイボールをちびちびと飲む。星深雪はスティーブと一緒にバーボンを空けている。二人は肩を抱き合いイエーイと。それに吊られて周りも騒ぎ出すーー

義範はハラハラしていた。昼間みたくまた、言い合いになるのではないかと、心配した。しかし、それは杞憂に終わりそうだ。

義範の心配は会計に移ったーー

1人頭4000円。ちょっと高いかな?と義範は1人ごちた。

しかし、皆の満足そうな顔を見るのはいいものだ。

「二次会いくひと!」

義則は遠慮しておいた。これから、夥しい翻訳と格闘するからだ。星深雪はというと、スティーブとすっかり意気投合していた。

彼らと別れ、家路につく義範は、電車のなかで、ICレコーダーを取り出し、モバイルパソコンに繋いで、文字おこしをはじめた。

初日の会議の内容は、それ以降の会議や講演と比べて訳しやすいものだった。電車に揺られること30分。それまでに終えることができたのがうれしかった。

改札を出て、てくてくと自宅に向かう彼は、誰かに見られている気がした。花邑杏子か?と思ったが、奴なら勝手に合鍵で部屋のなかに入っているし。じゃあ誰?

部屋の前で鍵を探していると、トントンと肩を叩かれた。

後ろを振り向くとーー

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