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詐欺師の男

「⋯」


「⋯」


「⋯」


さっきまで騒がしかったリビングが嘘のように静かになり、瞬く間に修羅場のような双方バチバチの空気になった

そんな中、リリーは半ギレのナツミと詐欺師顔の男のオーラに体を縮ませながら息を止めて、戦いの行く末を見守っていた


「安心しなよ

僕、お金は持ってるからさ

こんなボロ事務所の扉なんて安く済むさ」


「じゃあ5000万払ってもらうからな!」


「はは、これ以上喋ったら詐欺容疑で警察に連れていくよ」


バチバチ、バチバチ


聞こえるはずのない電気音が、リリーの耳元にはっきりと聞こえた

でも、このまま自分の叔母が警察に捕まってジ・エンドは流石にシャレにならない

リリーはそんな事を頭の中で考えながら、静かにしていると、不意に詐欺師顔の男がリリーの顔を見つめ、ゆっくりと近づいてきた


「⋯で、さっきから気になっていたんだけど君、ナツミさんとどういう関係なのかな」


ソファに座るリリーに膝まつきながら、男は優しげな口調でそう言った


「⋯えっーと、ナツミさんは私のーー」


リリーがそう言いながらナツミの方を見つめるとそこには、鬼の形相で首をもげる寸前まで、横に振るナツミがいた


「わ、私の⋯」


「⋯」


リリーは目を泳ぎまくりながら、勢いよく大きな声でこう言った


「マネーにがめつい、尊敬できる所長です!」


「アァ」


所長です!、所長です⋯!、所長です⋯!

まるでエコーのように、リリーの声は響き渡った

ナツミはマネキンの手で顔を隠しながら、終わった⋯とでも言うような空気を出した


「⋯へぇ、ナツミくん

聞いてた話と違うみたいじゃないか」


「⋯聞いてた話?」


リリーがそう聞くと、詐欺師顔の男は胸元から手帳を取りだし、リリーに見せた


「この手帳はね、魔術探偵にとって命よりも大事な代物なんだ

これがなきゃ、事務所の設立も魔怪の討伐もMARCの加入も、魔術に関する、その他全ての権限を制限されるんだ」


「⋯で、でもナツミさんは所長ですし、ちゃんと持っていますよね!」


リリーが食い気味にそう言い、ナツミを見つめるとナツミはバツの悪そうな顔をしながら目を逸らした


「⋯え、嘘」


「キスメット魔術事務所、所長のナツミ

君は数年前にゴールドプロ級探偵証を剥奪されているはずですよね」


「⋯」


「この事が公に出れば、社会的大問題で即逮捕さ

加えて、魔術管理局に偽の申請書を提出したことにより、詐欺の容疑で軽く数年は警察のお世話になるはずさ」


「⋯軽く、数年⋯!?」


その言葉を聞いたリリーは、顔を真っ青に染めながら、心の底から来るとこ間違えた⋯!と数週間前の自分をぶん殴りたいと思った


「どうするんですか!?私、半強制的に勤め先が確定している事務所の所長が出会って5秒で逮捕だなんてごめんですよ!?」


「⋯まぁ、たったの数年だから」


「私の数年はどうなるんだよ!?この銭金ババァ!」


「節約上手美女と呼べ!!」


ナツミの肩を凄まじい勢いで揺らすリリーとリリーのほっぺを掴むナツミの喧嘩を、呆れ顔で眺める詐欺師顔の男はある、提案をした


「⋯まぁ、どうしても、どぉしても!事務所を続けたいんなら解決法はあるけど⋯」


「!解決法って、何ですか⋯!ハァハァ」


息切れしたリリーに詰め寄られ、詐欺師顔の男は引き気味の顔でこう言った


「⋯リリー、と言ったかい?


ーー君が、ここの所長になるしか生き残る方法は無い」


辺りがしんと静まり返り、ナツミの視線が少し鋭くなった

リリーは顔を下に向け、手を扉の方に向けながら、こう言った


「ーー詐欺師はお帰りください」


「小娘が、!」

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