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少し固めのソファに体を小さくしながら、リリーは目の前にいる女性を見つめた
(只者ならぬオーラがひしひしと伝わる⋯)
そんなリリーの視線に気づいたのか、女性は読んでいた本を閉じ、偉そうに足を組んだ
「一から説明するか、簡潔に説明するか、どっちがいい?」
「うぇ!?」
唐突に聞かれたその問いに、リリーは絞められたカエルのような声を出しながら、あたふたとした
「⋯じゃ、じゃあ!一から説明して、欲しい、です」
自信なさげに答えたリリーに、女性は顎に手を付きながら、面倒くさそうな顔をした
「えー、面倒くさー」
「あんたが選択肢出したんだろ」
咄嗟に出たツッコミに、女性はケラケラと笑いながら、話し始めた
「はー!面白い!いいねクソガキ、気に入った
今日は機嫌がいいから、長々と話してあげるよ」
「⋯」
クソガキと呼ばれ、少し不機嫌そうなリリーを見ながら、女性はやっと本題に入った
「私の名は、ナツミ
このキスメット魔術事務所の所長、兼
リリー、あんたの父親の母親
いわゆる、あんたの叔母さ」
「⋯エイプリルフールは季節外れですけど」
「失礼だなお前!こんな美女が、貴様のような田舎小娘の叔母なんて、天地がひっくり返っても、そうそう無いことだぞ!」
「田舎小娘って、あんたも美女とか調子乗らないでください!」
「小娘風情がぁぁぁぁ!!」
2人が1つの机を挟みながら、熾烈な醜い争いを続けていると、その時
ピーンポーーーン⋯
突然、玄関のインターフォンが鳴った
争いあっていた2人の空気は、一瞬にして冷め、2人は互いの顔を見合わせた
「⋯インターフォン、鳴りましたけど」
「お前が行け、所長命令だ」
「まだ私、この事務所に入所してないです」
「いいから行け!叔母命令だ!」
「⋯ちっ」
「舌打ちしたな!?」
お前ぇぇ⋯と、ナツミが恨めしそうにリリーを見つめた
リリーは、そんな叔母をニコニコの笑顔で背に向けながら、扉を開けた
「はい、何か御用で、す、か⋯」
「やぁ、こんにちは
小さなお嬢さん
ところで、ナツミくんはいらっしゃるかい?」
扉の外にいたのは、ニコニコの優しい笑顔で、リリーを見つめる男性だった
「⋯詐欺師だ」
「え?」
ばたんっ!!!
勢いよく扉を閉めたリリーは、何事も無かったかのように、リビングに戻り、何事もなく、ソファに座った
「誰だったー?」
「ただの顔が取り柄の詐欺師でした」
「え、詐欺師?」
ナツミが不審に思い、リリーにそう聞き返した、その時
バァン!!!
リリーとナツミを挟む、机の真上を流れ星のように通過したなにかに、ナツミとリリーはロボットのように固くなった体で、飛んできた方向を見ると
「⋯随分と失礼な小娘を雇ったようだね
ナツミくん」
「⋯とりあえず、お前
扉代、絶対払えよ?」
ありがとうございました




