プロローグ
寒い日というのは、どうも苦手だ。
小学生の私は春休みに入り、ある友人と遊んでいた。
私は小学生の頃は特に仲の良い友人が二人居て、私を含めたその三人でよく遊んでいた。
今はその中の一人と一緒に居る。
一緒に居たのは、小野寺雪乃という同級生で、小学校に入り彼女は前の席に座っていたという理由もあって、私が最初に仲良くなった人物であり、一番仲の良い友人である。
私はそんな雪乃と公園のベンチに座り、商店街で買ったコロッケを食べながら話していた。
こうしていられるのも、今日で最後である。
私は明日、ここを離れることになる。親の仕事の都合で引越しをするのだ。もちろん、学校も転校することになる。
「たまには遊びにおいでよ」
「うん・・・」
「向こうでもがんばるんだよ」
「うん・・・」
私は、「うん」としか言えなかった。ここで最後に遊べる日だったのに、私は俯いたままで、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
もう時間は夕方の五時、子供は家に帰らなくてはいけない時間である。空はすっかり薄暗くなり、公園には私達以外は居なくなっていた。
「そろそろ帰らないといけないね」
雪乃が座っていたベンチから腰を上げた。
子供ながらも私のことを察してか、明るく振舞ってくれた。本当に感謝している。しかし、明るい雪乃の目からは、薄っすらと涙が見えた様な気がした。
「それじゃ、またね」
「うん」
「ばいばい」
「ばいばい・・・」
それは、この場所で私達が最後に言った言葉だった。