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未定  作者: 悠木サキ
35/66

第35話 砲戦開始!

(でもこれ体力もつか……?)

 弾倉に普段より多めに『心』を込めるように言われたカウルの頭に不安がよぎる。

 ちらりとシーナのほうを見上げるも、シーナは敵艦隊のほうを向いて、抱える対装甲狙撃銃の銃床を肩に当て、射撃体勢に入った。

 弱音を口にしたところで聞く耳を持ってもらえるはずがない──カウルが暗い気持ちになる。これからの戦いが終わるまで、自分はしっかりやりきることができるだろうか。

 海面の上に見える敵艦隊の四つの影は、先程より大きくなっている。

 彼我の距離は刻々と近づいていた。


──ジリリリリリリ!

 突然、『アマネ』甲板上に警報音が響く。

「!」

 この音は、『アマネ』の主砲が発射される際の警報音である。

 とっさにカウルが右側──艦首のほうを見る。

 『アマネ』の二連装主砲塔の一番と二番、計四本の長大な砲身が、左舷──敵艦隊のほうを指向し、せり上がって空を仰いでいる。

 主砲が発射されるときの爆音と衝撃は凄まじい。この警報音は、それを甲板上にいる兵員に警告し、退避させるためのものだ。

 しかし、『鼓動』の能力を操ることができる甲板上の艦上守備隊の兵士は、主砲の発射時でも退避せず戦闘を継続するようになっていた。

 それは彼らが『鼓動』という特殊な能力によって、主砲発射の衝撃から身を守ることができるからである。


「っ!」

 来るべき衝撃にカウルが身構える。 

 特に、耳に意識を集中し、『鼓動』によって──『心』を耳の鼓膜に集中させることで──耳を保護する。そうすることで、耳に重大なダメージを受けないようにするのだ。

──バカン!バカン!

──バカン!バカン!

 僅かな時間差を置いて『アマネ』の主砲がそれぞれ火を吹いた。

 

 (うるさっ!)

 主砲斉射の凄まじい轟音によって、耳が殴られたような衝撃を受ける。

 首を縮め苦悶するカウル。

 『鼓動』によって耳の保護には成功したが、それでもやはり大音響のせいでキーンと耳鳴りがした。

 耳に分厚い膜がかかったように、あらゆる音が聞こえにくくなる。


 ドオン……ドオン……

 だが直後、耳鳴りの向こうからさらに別の轟音が聞こえてきた。『アマネ』に後続する僚艦も砲撃を開始したのだ。

「こほっ」カウルが小さく咳き込む。

 『アマネ』の主砲の砲口から噴出した黒い砲煙が、後方に流れ、カウルたちのいる左舷を覆った。

 だが黒煙はすぐに風に流されて霧散し、靄がかっていた視界が晴れる。

 再び彼方の海上にいる敵艦隊の姿が見えた。

(弾は──)

 砲弾の行方をカウルが追う。

 『アマネ』の主砲から発射された砲弾は、音速を優に超える速度で、すでにはるか遠くに飛んでいっている。

 しばらくして、敵艦隊の艦影の上の空中で一つ、ぱっと黒煙が花開いた。

 同時に、艦影から横の少し離れた位置に水柱が複数立ったのが、うっすらだが視認できた。

 その水柱は着弾した砲弾が立てたものだ。そして上空の黒煙は──

(迎撃された……!)

 空中で砲弾が爆発したということは、敵がこちらが放った砲弾を撃ち落としたということだ。

 敵にも、シーナのような対空迎撃要員がいるのだ。

 すると、間を置かずして、今度は、敵艦隊の艦影の正面に、ぼわっと黒煙が広がって見えた。

──!

「敵艦、発砲!!」

 カウルの周りで誰か──第四分隊の隊員が声を張り上げた。

(撃ってきた!!)

 敵艦隊もまたこちらに向けて砲戦を開始したのだった。

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