第26話 口論
──第二波……。
敵の空襲を幸運にも無事にくぐり抜けたカウルは、セーグネルの言葉に呆然とした。
「空薬莢は海に投棄し、崩れた掩体は組み直せ」
セーグネルは矢継ぎ早に指示を出す。そこに──
「おい」
と、シーナがセーグネルの前に乗り出した。
「……スレヴィアス上等兵、なにか?」
声の調子を落として、セーグネルが問う。
「この作戦は敵の駆逐艦部隊を叩く作戦のはずだ。どうして敵の航空機が出てくる?」
シーナは眉根を寄せ、その三白眼でセーグネルを睨み付ける。
「それは私も聞かされていない」
セーグネルは淡白な口調で返した。
「戦闘に不測の事態は付き物だ。そのために我々は日々訓練をしている。──スレヴィアス上等兵、早く作業に取りかかれ」
「敵に航空部隊がいて、この戦力でやれるっていうのか?」
シーナはセーグネルの命令を無視し、なお食って掛かるように反駁する。自身より階級が上のセーグネルに対し、不適切な口調にカウルはひやひやする。
「……人的被害は出たが、艦自体は被弾していない。作戦続行は可能だ」
セーグネルがシーナから視線を外し、『アマネ』の艦橋を見上げながら答えた。
「答えになってないだろ。こっちには航空戦力はない。制空権を取られて、戦えるっていうのか?」シーナはなおも反論する。
「…………」
視線を戻したセーグネルとシーナがしばし無言で対峙する。
両者の間に不穏な空気が流れる。
「……ここで貴様と論じている暇はない。早く作業にかかれ。」
口を開いたセーグネルはそれだけ言うと、踵を返してシーナに背を向けて歩きだした。
「ノベル、ここを監督してくれ。私は小隊長のところに行ってくる。」
「──はっ」
二人の周囲に立って事態を見守っていたノベルにセーグネルが下命し、ノベルが敬礼して応じる。
「……ちっ」
去っていくセーグネルに、シーナはこれ見よがしに舌打ちをした。




