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第94話 遠方からのお呼び出し(1)

***



 俺は今、馬車に揺られている。

 といっても、いつものように学園に向かっているわけではない。


 青い空。白い雲。

 それらを窓の外からボーッと眺めること――早二時間。



 そう。もう二時間も経っているのだ。


「まだですかぁー?」


「まだまだ、でございますよ」


 気怠さを隠すことなく問いかける俺の言葉とは対照的に、御者のおじさんは元気そうな声色でそう答えた。

 俺は思わず溜息を漏らした。



 なぜこんなことになっているのか。

 その理由は、昨日の夜に遡る――。



***



「――ナリルピス岳?」


「そうだ。急な事で悪いが、明日から向かってもらいたい」


 謁見の間に呼び出された俺は、突然サーロンからそのように言い渡される。


「なんでまた。

 確か、ナリルピス岳って言ったら、今はアレックスが調査に行っているんじゃなかったっけ?」



 ギルドランキング前6位。

 そして、現4位である、大斧使いのアレックス・ケイン。


 確か彼が駄々をこねて、現2位のクロチェティから横取りする形で向かったのが、ナリルピス岳だったはず。


 ナリルピス岳は、幻獣種が好む魔力濃度の濃い土地の一つとして有名だ。

 先日、ロータスの街の近くに突然現れたグリーンドラゴンやワイバーン――それらの()()()()()

 だからこそ、アレックスが調査に向かった山である。



「そのアレックス直々の御指名だ」


「は?」


「久々にお前と一緒に戦いたいんだと」


 ……なんだそのくだらない理由は。



「アレックスはああ見えて、マルヌのことを気に入っていたからな。

 久々に会いたいんだろう」


 サーロンの隣に座るブルーノが、微笑みながらそう言った。

 しかし俺は首を傾げながら再び訊ねる。


「ん? 会ったじゃん。この間。十位会談で」


 そうだよ。

 二回目の十位会談は、3位のナナ、6位のラウダ、そして(くだん)のアレックス。

 その三名は調査に出ていて欠席だった。


 でも、一回目の時には全員いた。

 もちろんアレックスもいた。



 すると、ブルーノとサーロンは苦笑する。


「いや。あの時は……アレックス、前半ほとんど寝ていただろう?

 だからマルヌが円卓の間に入っていった時の下りも聞いていなくて……」


「お前がマルヌだと、気付かなかったんだと」



 ……なるほど。

 そういえばあいつ、俺の氷弾が腕に当たっても起きなかったっけ。


 十位会談も終わる間際になり、目を覚ました時には、()()()()()()()()、くらいにしか思わなかったというわけか。


 だからといって、はいそうですか、と向かうわけにもいくまい。



「――でも! 俺には学校があるし!」


「ああ、安心しろ。学園には既に届けを出している。

 今週一杯までの休みを、な。

 ダーリィは話が早いから助かる! ガッハッハッ!」


 ああ、確かに。

 サーロンとダーリィ先生は旧知の仲だと聞いていたが。



「いや、ガッハッハッじゃねぇよ! 何を勝手に――!?」


「すまない。これも割り込みの()()として、受けてくれ。

 アレックスが君を指名してきたのにも、なんらかの深い理由があるのかもしれない」


 俺の言葉を遮るように、ブルーノが深刻そうな面持ちで静かに言い放った。



 ……いや、ないだろ。アレックスに限って。

 そしてそんな事は、あんたらもわかってるだろ。


 くそう。

 明日からもまた、中級魔法の練習に励まないといけないというのに。

 今日は……レタリーさんの言葉から逃げるように帰ってきてしまった。

 だからこそ、今日の分も取り返さないといけないのに!


 とはいえ、ブルーノにこう言われちゃあ……しょうがない、か。



 俺は渋々了承し、その場を後にした。


 明日からとか、急すぎるだろ。

 急いで荷造りしなくちゃな。



***



 マルヌが謁見の間を去った後。


「ガハハ! やっぱり、ブルーノが言ってくれると、話がスムーズにまとまるな!

 マルヌも、何も言わずに納得してくれたようだ!」


 ニッと白い歯を出して笑うサーロン。

 そんな彼の様子に、眉をハの字にして困り顔を浮かべるブルーノ。


「ううむ。なんだか、嫌がっているのを無理矢理従わせたようで申し訳ないなぁ」



「なーに、余計な心配はいらないさ!」


 サーロンの言葉に、ブルーノは一瞬、明るい表情を見せる。

 ――が。


「もう遅いんだからな!

 文字通り、無理矢理従わせたんだぞ! ガッハッハッ!」


 再び、ずーんと暗い顔になるブルーノ。



 そんなブルーノの心情を察してか、サーロンは笑顔を浮かべたままブルーノに語りかける。


「しょうがないだろう。アレックスの機嫌を損ねると面倒だからな。

 それに、奴の気持ちもわかるだろう?」



 それに対して、ブルーノは顔を上げ、諦めたような笑顔で口を開く。


「……ああ。マルヌは私たち皆の――息子みたいなものだからな」



「そういうことだ!」


 サーロンは腕を組みながら大きく頷いた。

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