第9話 マルヌが征く(5)
「俺もそれに賛成だ!
正体不明の敵にこちらまで姿を隠していても仕方がない!」
アレックスの案に便乗させてもらおう。
「確かにそれも一理あるな……。
正直かなり危険だが、皆やめろと止めても無駄だろう?」
サーロンは半ば諦めながらみんなに問いかける。
それに対して答えるものは居なかったが、俺が見知った面子はみんな、一様に怪しい笑みを浮かべている。
無言の肯定って奴だ。
――いや皆ではないか。
メモリーだけはブンブンと首を横に振っていたが、見て見ぬ振りをした。
一方で、俺がよく知らない者たちの反応は様々だった。
「自分を囮にって。貴方達、イカれてるわ……!」
すっかり縮こまってしまったラウダ。
そしてその横で、最初の嫌味女が青ざめた顔で引いていた。
もう一人の新参の女は、周りの空気感を一切無視して、未だに額をさすっている。
話聞いてる?
リブは呆れたと言わんばかりに頭を抱えている。
「決まりだな!」
俺はパンッと拳を打ち鳴らした。
気合十分。さて、どうしてやろうか……。
「……あ、マルヌは特別任務で明日から『ポポロミート学園』に編入してもらうから。
敵探しは俺らに任せとけ」
決意を固めた俺に対して、まるで膝カックンでもするかのように、サーロンは間の抜けたことを言い出した。
「はあ!?」
「カッカッ! 小僧は大人しく宿題でもしておれ!」
それに便乗するようにクロチェティは俺を茶化す。
「ちょっと待ってくれよ!? ポポロ……なんだって!?」
「あー、詳しくは後で話す。
とりあえずこの場はここまでだな。進展があり次第、また連絡する! 皆も何かあれば知らせてくれ!
じゃ、解散!」
こうして、サーロンの適当な締めの一言で、初の十位会談は幕を閉じた。
***
「どうだった? 新しいギルドランキング上位陣は」
場所は変わり、ここは謁見の間。
フカフカのソファに座り満更でもない俺。
その目の前に座る現国王ブルーノは、両手を口の前で組み、真剣な面持ちで問いかけてきた。
「うーん、実力の程は正直わからなかったけど……。
そこまでレベルが高い、とは思えなかった」
「そうか……」
ブルーノの反応を見るに、俺がそう答えるのを分かっていたようだ。
「だよな。俺もブルーノも、そこを危惧しているんだが……」
ブルーノの横に立つサーロンも、ポリポリと頭をかきながらそう言う。
「そこで、マルヌに特別任務を任せたいんだ」
「そうそう! それだよ!
なんだよ、ポポロなんとかに編入って!」
ブルーノの言葉に半ば食い気味に訪ねた。
「ポポロミート学園。
この国の優秀な学生が通う高等学園だ。通常の学問の他に、魔法、剣術を教えている。
マルヌにはそこの魔法科に編入してもらおうと思う」
「ちなみにリブちゃんもそこの剣術科に通ってるぞ!」
「そうじゃない!
なんで俺がそこに通わなきゃならないんだ!」
「さっき言ってただろう? 今のギルドランキング上位陣は力不足だと」
「それに、俺らが老体になりつつあるのもまた事実。
だが、後任に優秀な人材がいないと引退もしづらくてな……」
「そこでマルヌには、若くて優秀な人材の揃ったポポロミート学園で学生達に刺激を与える存在となってもらい、彼らの育成に協力して欲しいんだ」
「まだ正体のわからぬ敵に対して、戦力はいくらあっても足りないくらいだからな!」
この野郎共、矢継ぎ早に次々と勝手な事を言いやがって。
「それにお前、あの癖治ったのか?」
……くッ!
「その様子だと、まだみたいだな」
サーロンに図星をつかれて引きつっている俺の表情を見て、ふふっと笑うブルーノ。
「学園に行くのは、何も周りの学生のためだけじゃない。
きっと君自身のためにもなる」
――ブルーノの優しい眼差しに、張り詰めていた気持ちが少し軽くなった気がした。
ブルーノ。俺に父親がいたら、きっとあんたみたいなのだろう。
「……わかったよ。王様に言われちゃしょうがないしな」
「茶化すなよ。マルヌ」
――そうだ。ただ闇雲に焦ってもだめだ。
敵の正体はいずれわかるだろう。
ごめんよマザー。
この怒りは、その時まで――。
以上で第一章が終了となります。
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