表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/250

第86話 唐突な招集(3)

「おお! お前が興味を示すとは、珍しいこともあるもんだ!」


 予期せぬ発言者にサーロンは驚きの声を上げた。

 するとそれに続くように、現国王のブルーノが口を開く。



「流石は魔力コントロールの達人『シスズ・アロット』。

 召喚石の魔力にも興味があるのかい?」


「別にー。ただその石、まん丸で綺麗だから。

 アクセサリーにしたら可愛いかなーって。

 っていうか()()ってやめてー。

 なんかダサいじゃん」



 国王であるブルーノの問いかけにも関わらず、相変わらず手元に視線を落とし、爪を撫でながら答える。

 彼女の名前は、シスズというらしい。


 (のち)にわかったのだが、彼女がギルドランキング8位だそうだ。



 そんなシスズの様子に、クロチェティは再び眉間に深く皺を寄せた。


「ちっ! やっと口を開いたかと思えば……下らんッ!

 聖職者らしく、ちょっとは賢そうに振る舞えんのか」


 悪態をつくクロチェティに対して、シスズさんは口を尖らせる。


「うるさいなー。

 つーか聖職者として、身なりを整えるのは基本中の基本じゃん」



 先程の魔石をアクセサリーにしたいという発言や、会談中に熱心に爪を手入れしている行動は、そういった彼女の信条からなるものらしい。

 しかし、クロチェティはすかさず畳み掛ける。



「その前にまずその言葉遣いをどうにかせい!

 外見だけ豪華で中身が空の宝石箱なんぞ、何の価値もない!

 ヌシは正にそれだ!」


「はー? 誰が中身空っぽだってぇ?」


 いがみ合う二人。

 サーロンは困ったように眉をハの字にして「二人ともやめろ!」と、彼等を止めようとしている。


 すると――



 ――バァンッ!!


 突然、机を叩く大きな音。

 ビクッと体を揺らしながらもそちらを見ると、ブルーノが拳を机に叩きつけていた。



「……サーロン、続きを頼む」

「……あ、ああ」


 一瞬で静まり返った室内に、ブルーノの声が響く。

 サーロンは呆気に取られながら、気の抜けた返事をした。



 流石は現国王ブルーノ。

 やり方はどうあれ、一瞬で場を収めた。

 

 彼のその鋭い眼光は、昔の――まだ現役の剣士だった頃のものと変わらない。

 クロチェティもシスズも、未だ不満が残る面持ちながら、ブルーノの眼光を前にして渋々黙った。



「シスズの言う通り、今はこの石に魔力は通っていない。

 魔物を呼び出すと内包された魔力が切れ、ただの石ころに戻る。


 ――で、ロータスに持ち込まれたこの石だが、どうやら街の通りで販売されていたらしい。

 購入者の証言を元に捜索した結果、一人の男を捕らえた。

 ボロボロの布切れを羽織った、とても商人とは思えない風貌の怪しげな男だ。

 こちらの問いかけに対しても黙秘を続けている。


 ただ、今回の件は事が事だからな。

 現在、7位の『ビオラ』がその男から情報を探ってくれている。

 ……少々強引に、な」



 ――なるほど。

 この場にいないあの()()()はビオラというらしい。


 それにしても、()()()()な手段とは、一体――。


 そんな俺の疑問は、次のメモリーとクロチェティの言葉で明らかになる。



「ビオラさんは()()()の使い手……でしたね」


「……とはいえ、あの娘も所詮、使い手の少ない闇属性が多少うまく扱えるからというだけで成り上がってきた()()()()

 あまり期待は出来んかもしれんがの」



 ――闇属性の魔法。

 俺も詳しく知らないが、この属性の魔法は他の属性と異なり、精神に働きかけるような作用があるらしい。


 おそらくビオラは、(くだん)の男に精神攻撃を仕掛けて、無理やり情報を引き出そうと――結構えぐいことやってるな……。


 クロチェティの言うように、闇属性は使える術者もほんの僅かだという。

 かくいう俺は使えない。

 ビオラはその力でギルドランキング7位まで上り詰めたのか。




「……しかし、まさか召喚石とはの」


「ええ。実物は初めて見ました。

 遥か昔に、その全てが消失したものだと思っておりましたが……」


 ふーん。



 ……ん?

 さらりと聞き流しそうになったが、何かが引っ掛かった。

 メモリーの今の一言はどう言う意味だ?



 言葉通りに受け取るならば、『召喚石というものは遥か昔に、その全てが消失した』ということ。

 だがクロチェティは『昔見たことがある』と言っていた。


 いくらクロチェティがジジイだからいっても、メモリーが()()()と言うくらいだから、流石にクロチェティの生まれる前を指しているのだとは思う。


 クロチェティもメモリーと同じく、文献などで見たということだろうか?



 ――いや、クロチェティはこう言っていた。

 召喚石と聞いた、と。

 召喚石を見た時に、何者かから『召喚石』と言う呼び名を教わったんだ。

 つまりクロチェティは『召喚石』という物を文献で知った訳ではない。


 聞いた。誰から?



「ちょっと待った。クロチェティ。

 ……誰から()()()んだ?」


 ――()()()()()()


 そこまで言わずとも、俺の聞きたいことを察したクロチェティは、目を閉じながらゆっくりと口を開いた。



「……クワードが持っていたのだ」


 彼の口から出た人物――それは、ギルドランキング前7位で、先日殺害された大魔術師『クワード・バレイ』だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ