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第39話 森の調査(6)

***



 スケルトン達を全て倒した俺とリブは、青ざめた顔で尻餅をついている男を捕らえた。


 そいつは橙色の玉を掲げていた男なのだが、どうやら後退りしているうちに、木の根か何かにつまづいて転んだ挙句、そのまま腰が抜けてしまったらしい。



 よほどスケルトン達が恐ろしかったと見える。

 もう全て倒し切ったというのに、俺たちが近づくにつれて、男の顔の青白さは増していくばかりだった。

 もう終わったんだから、そんなに怯えなくてもいいんじゃないか?



 いくら犯罪者といえど、こんなに怯え切った男に鞭を打つような真似は気が引ける。

 俺は彼に優しく微笑みかける。しかし、男はそんな俺の顔を見るなり、さらに恐怖した様子でビクッと体を震わせた。

 失礼な奴だ。



「他の二人は……とっくに逃げたようね」


 リブの言う通り、残りの二人の男の姿はすでに見当たらなかった。

 しかし、そんな彼らもこの後すぐにギルドによって捕まるのだが、それはもう少し後の話である。



***



「結局、俺たちじゃ何もわからなかったな」


 ギルドに戻り、密猟者を引き渡した俺は、腕を頭の後ろで組みながらポツリと漏らした。

 そんな俺とは対照的に、リブは口元に手を当てて、なにやら考え込んでいる様子だった。



「……あの橙色の玉、ギルドに渡したわよね?」


「ん? ……ああ、渡したよ。

 つっても、もう橙色じゃなくなってたけどな」



 リブに剣を突きつけられ、恐れ慄いた男が思わず落とした橙色の玉。


 スケルトン達を倒した後に拾い上げたそれは、すでに輝きを失って暗い灰色に霞んでいた。

 ちょうど、密猟者の男達に遭遇する直前に、鹿の亡骸の側で拾った石と似たような色味だったと思う。


 だからだろうか。男の落としたそれは、もう玉というよりは石に近い印象を受けた。



 今回の件に関係するかはわからなかったものの、俺はそれら二つの石を持ち帰り、石のあった状況を簡単に説明してギルドに渡してきた。


 一応、捕らえた密猟者の男にも聞いてみたんだが、怯え切っていてとても会話できる状態じゃなかったので、詳しい事情聴取はギルドに任せてきたんだが……。



「あの男、何かを企んであの玉を取り出した様子だった。

 まるで私たちと戦うために現れたようなスケルトン達。あれらは、あの男が……?

 役目を終えた玉は光を失い、ただの石のような色に……」



 そうやってブツブツと呟いていたリブだったが、やがて思い浮かんだ仮説を口にした。


「――あの玉、『魔石』の一種だったんじゃないかしら?」


「……あの玉がスケルトン達を()()()()()、とか?」



 ひとくちに魔石と言っても、その効果は様々である。

 確かにそういった、一種の召喚術のような事ができる魔石があっても何ら不思議ではない。


 ましてや、今日捕えた密猟者は魔法使いではない。

 そんな彼らが召喚術を使おうと思ったら、何らかの外的要素に補助してもらう他ない。

 その役目を果たしたのが、あの橙色の玉だったという事……か?


 

「それだけじゃない。()()()()()()()()も……ね」


 リブの言葉にハッとさせられた俺は、思わず声を張り上げた。


「まさか、あの鹿の死体のそばにあったやつも!?」


「だってあの石、あの密猟者が持っていた玉にそっくりだったじゃない」


 ……なるほど。根拠なんか無いくせに、そんなに自信満々に言い切られると逆に清々しい。



「というか、魔法の分野はあなたの専門でしょ?

 あの石持ってみて、何か無かったの?

 『特殊な波動を感じる……ッ!』とか」



 眉間に皺を寄せ、怪しげな顔で低い声を出すリブ。

 それ、魔術師の真似か?

 魔術師に対してどんなイメージ持ってるんだか。

 まあ、それは置いといて。


 俺は両手を軽く上げて、首を横に振る。



「いや、なんにも。そもそも俺、そういうの詳しくないし」


「何よそれ?」


「俺、魔法は12年前にマザーから基礎を教わったきり、あとは独学だからさ」


「……う、嘘でしょ……?」



 目を見開き、青ざめた顔のリブ。

 まるで先程の密猟者の男のように――と、そこまでは言い過ぎか。

 とはいえ、なんだかすごく驚いた様子だな。



 独学だから中級魔法も使えないんだ、なんて言い訳にしちゃダメだとはわかっているんだが……。


 確か、中級魔法を使えるようにならないと進級できないって、ダーリィ先生が言ってたっけ。

 得意な事ばっかり練習して、苦手な事から逃げてきたツケが回ってきたのかもしれない。


 ……なんだか、話の流れで何気なく嫌な事を思い出してしまった。



 そんな会話をしていると、遠くから軽快な馬の足音が聞こえてきた。

 徐々に近づいてくるその音の正体は、ギルドまでリブを迎えにやって来たロータス城の馬車だった。



「リブ様、お迎えに参りました!

 ――あ、そういえばマルヌ様もいらっしゃったのでしたね」


 御者のお兄さんに、()()()みたいに言われてしまった。

 こりゃあもう……ほぼ眼中にないんだろうな。どおりで、学園からの帰りには俺を迎えに来ないわけだ。



 少しの虚しさを感じつつも、リブの後に続いて馬車に乗り込んだ俺。


 発進する馬車。心地よい揺れに身を任せ、また明日から始まる学園生活に思いを馳せる。


 俺自身、自分の気持ちに今気づいたが、どうやら学園生活もまんざらでは無いらしい。




以上で第三章が終了となります。

面白い、続きが気になると感じていただけましたら、以下の☆☆☆☆☆にて評価をいただけると嬉しいです。

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