第25話 情報収集(1)
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――翌日のお昼。
俺らは学園の食堂で昼食をとりながら会話していた。
「まずは、ポポロミート杯についてだね!」
そう言いながら、スプーンを目の前の大盛りカレーに突っ込むシエル。
彼女は午前中の合間の休み時間で、既にメロンパンを平らげていたはずだが……。
「昨日も聞いたと思うけど。
この学園で年に一回開催される、魔法科、剣術科合同の武術大会、それがポポロミート杯。
一対一の戦いをトーナメント形式で進めていくんだけど、学年もごちゃ混ぜで、文字通り、その年の学園一位を決めるの」
ここまではだいたいわかっている。
ただ一点、昨日から思っていた疑問があった。
「魔法や剣で戦うの? 危なくない?」
仮にも学園の催し物だ。
その点は最低限考慮されているんだろうが、一応聞いてみる。
すると――。
「ちっちっちっ!
少年、ここをどこだと思ってるんだね?」
シエルがしたり顔で舌を鳴らしたかと思えば。
「……攻撃は全部、吸収されるの」
とレビィが続けた。
大盛りシエルとは対照的に、ミニうどんを少しずつ口に運び、モリョモリョと頬張るレビィ。
この子、麺類を啜れないタイプだな。
かく言う俺は、初めて『らーめん』というものを頼んだ。
俺の好きな『そば』の親戚らしく、最近流行っているらしいが、なかなかいけるなこれ。
「そう! ポポロミート杯で剣術科の生徒が使うのは、魔法で作られた『魔法剣』。
だから、魔法科の攻撃はもちろんの事、剣術科の攻撃も、自動魔法吸収でダメージが伝わる事なく吸収されていくの!
ただ、それでも限界許容量はあるんだけどね」
なるほど。確かに、魔法が吸収されていく様は、昨日の授業でも見た。
広場の芝生や射撃場がそうなっていたはずだ。
それにしても、限界許容量があるとはいうが、それを踏まえても反則級の技。
一体誰が……。
そんな俺の疑問を察したのか、レビィは口に溜まったうどんを飲み込むなり話し出す。
「……あの魔法は。
ここの学園長がかけたんだって」
「へえ。そうなんだ」
と言っても、誰だか知らないけど。
そう思った直後にシエルが言う。
「流石は『マザー・エンブレス』って感じだよねー」
ブッ! と啜っていたらーめんを吹き出した。
そんな俺に「どうしたの?」と、きょとんとした顔で訊ねてくるシエル。
俺はゴホゴホとむせながらも「何でもない」と答える。
――そうか。マザーだったのか。
そうであれば、この高等魔法も納得である。
なんたってギルドランキング元1位。
正真正銘、最高ランクの魔導士だったのだから。
マザーは身寄りのない子供達の世話をしていたと聞いたことがある。
今思えば、学園の創設は、そんなマザーの信念の延長上にあるものだったのかもしれない。
彼女が亡くなった事は、まだ公になっていない。
この学園でも、あくまで表向きは不在であるということにしているのだろうか。
話が逸れかけたが、本題に戻ろう。
俺は次に生まれた疑問を投げかける。
「でも、魔法が吸収されるなら、ダメージはゼロって事だろ?
決着がつかないんじゃ?」
「いくつか負けの条件はあるんだけど。
まず一つは、さっきも言った通り、自動魔法吸収も限界許容量があって、そこを突破するほどのダメージを受けた時は負けになるよ」
「限界許容量を超えたのって、見ててわかるもん?」
「自動魔法吸収の魔力を検知する『魔石』のペンダントがあって、参加者はそれを首から下げて戦うんだけど……」
「……その魔石が砕けたら、許容量オーバー」
――魔石とは、魔力によって何らかの反応を示す石のことだ。
ほとんどは『魔力を検知して光る』などで、指輪やネックレスなどのアクセサリーに用いられることが多い。
中には、持つものの魔力を増大させるなどの効果が得られるものもあるが、そういったものは結構な高値で取引される。
そういう意味では、ポポロミート杯で使われる魔石は、ある特定の魔力に反応するという特別仕様ではあるものの、そこまで高価なものではないのだろう。
「あとは、致命傷を受けた時!
その時も魔石が砕けるの!」
致命傷か。なんだろう。
例えば、首を落とされるような太刀筋を受けたりとか……。
「……頭や心臓部、撃ち抜いたり……とか?」
「昨日誰かさんがやったみたいに、ね」
レビィとシエルが俺を見て含みのある笑みを浮かべた。
少しの気恥ずかしさを感じた俺は顔を伏せた。
そしてそのまま何も答えず、レンゲですくったスープをズズズ……と啜る。
「あとはもちろん、参加者が降参を宣言したら負け、とかね。
例年、16〜20人くらいが出場するから4回くらい勝てば優勝だよ!」
そう言って、カレーを一口。
「うーん!」と言う声と共に頬を抑え、満点の笑顔で味わうシエルを見ていると、こちらまで自然と笑顔になる。
それにしても、やけに出場者が少ないな。
もう少し多くてもいいと思うが。
それこそ、シエルやレビィだって出場してもいいだろうに。
そのことについて聞いてみると、不意に表情を曇らせる二人。
「そこなんだけどね……」
困ったように笑うシエルは、横のレビィに助けを求めるような視線を向ける。
それに応えるようにレビィが重い口を開く。
「……軽減されるけど。
ちゃんと痛いらしい……よ?」
あー。なるほど。
そりゃあ出場者も少なくなるわけだ。
当然か。仮にも武術大会。
しかし、学園の催し物だからと油断していたことは否めない。
……できれば出場を決める前に知っておきたかったな。




