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第16話 初登校(3)

「ねぇねぇ、マルヌス君は何属性の魔法が得意なの?」


「マルヌスでいいよ」



 まだ呼ばれ慣れていない名前に違和感が拭えないが、笑顔でそう返す。


 ――得意な魔法の属性、か。



「……そういえば。

 普通はみんな、自己紹介で言う……ね」


「そうそう。

 マルヌスってば、好きな食べ物しか言ってなかったもんね!

 しかもグルメフロッグって!

 物好きだね! あははっ!」



 無難な自己紹介を心がけたつもりだったんだけど……。

 思えば、自己紹介なんてしたことなかったし。

 それにしても笑い過ぎだと思う。

 グルメフロッグ、美味しいのに。



「……ちなみに私は、雷……だよ?」


 そう言って長いローブの袖から手を出すレビィ。

 バチバチッと鋭い音を立て、人差し指と親指の間で紫電を走らせる。


「あたしは風属性!」


 シエルは人差し指を立てる。

 すると、その指先に小さなつむじ風が立ち昇った。



「で、マルヌスは?」


「うーん、あまり考えた事ないなぁ」



 俺は右手を胸の前に構え、指先一本一本に魔力を通す。

 とりあえず、五つ同時に発動してみるか。



 親指の先で、渦巻くように揺めきながら燃焼する炎の球体を作り出す。


 人差し指の先で、パキパキと音を立てながら氷の結晶を組み上げる。


 中指の先で、サラサラと砂を収束させ、石の塊を形作る。


 薬指の付け根から、植物のツルを生やす。それは意思を持つかのように指に絡みつきながら伸び上がる。


 小指の先で、無重力のように無機質に浮かぶ球体を生成。

 内に強烈な輝きを閉じ込めながら煌々と光るこの球体は、光属性の初級魔法だ。



「――よく使うのは、これくらいかな?」


 途端に、ガタガタッという騒がしい音と共に、周りの生徒達が動揺し始めた。

 なんだ!? 何事だ!?



 急に変わった雰囲気に目を丸くして驚いた俺は、シエルとレビィを見る。

 するとそこには、俺以上に目を丸くしている二人の姿があった。



「――なんだ今の!?」

「すげーー!!」



 一瞬の静寂ののち、すぐに周りの生徒が騒ぎ始め、俺の元に駆け寄ってきた。


 キョロキョロと辺りを見回しながらも状況が飲み込めていない俺に対して、シエルとレビィも身を乗り出して追い討ちをかけてくる。



「同時に複属性出せるの!?」

「……初めて見た……!」



 ……あ、そこか。

 そういえば昔、マザーにこれを見せた時も驚かれたっけ。




 ――魔法の扱い方、最初はマザーに教えてもらったんだ。


 マザーは回復魔法の他にも、たくさんの魔法を使えた。

 でも俺は、マザーみたいに立派な炎は出せなくて。

 だから俺は、俺が使えるレベルの魔法だけを繰り返し練習した。

 繰り返し。繰り返し。


 複数の属性の魔法を同時に出せるようになったきっかけは、覚えていない。

 多分、その反復練習の賜物だったのだろう。


 俺は真っ先にマザーに見せたんだ。それはもう得意気に。

 勿論、これだけなら見せ物の範囲を超えないような下らないものだ。

 それでもマザーはすごいと驚き、偉いと俺の頭を撫でてくれた。


 あの後、こっそりマザーも練習してたの、知ってるんだ。



 ――少しだけ、昔のことを思い出した。



「おーいお前ら、次は魔力コントロールの実習だぞー?

 遅れんなよー」



 一時限目の教科書や資料を揃えるように、教卓をトントンと打ち鳴らして言い放つ先生。

 それを聞くと、俺の周りに集まっていた生徒達は慌ただしく散り始めた。


「そうだった!

 マルヌス、実習は外でやるんだよ! 行こ?」


 そう言って俺の手を引くシエル。

 


 そんな俺たちを横目に、チッと舌打ちをする男子生徒の姿が視界の端に映った気がした。


 ――なんだろう。嫌な予感がする。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど、マルヌくんは自分のすごさをあんまり自覚してないタイプなんですね(*'ω'*) シエルちゃんは男子から人気なのかな……変に妬まれたりしてないといいけど(;´・ω・)ちょっと心配で…
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