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第14話 初登校(1)

***



 チュンチュンと小鳥の鳴き声が響く……って昨日も同じことを思った気がする。

 まあ、記念すべき初登校にはぴったりの日和、といったところである。


 昨日と同じ様に、城を出たところに止まっている馬車に乗り込むと、これまた昨日と同じ様に、先にリブが座っていた。


「……編入試験は無事、パスしたそうね」


 腕を組みながら、少しだけ不機嫌そうに訊ねてくるリブ。



「なんだよその言い草。祝ってくれねーの?」


「……落ちたら面白かったのに」


「素直に祝えよ!」



 別に俺だって、好きで行くわけじゃないってのに。

 

 馬車が学園に着くまでの間、俺たちは一言も話さなかった。

 別に特別険悪な空気だったとかではなく、お互いに話すことがなかったのだと思う。



 今日は、昨日の広場で止まることもない。

 校舎の前に到着し、俺、リブの順で馬車を降りる。

 金髪のロングヘアをサラリと揺らしながら降りるリブは、悔しいが、やはり絵になる。



 そんな俺たちの元に、二人の女子生徒が歩み寄ってきた。


「リブちゃん! おはよう!」


 内一人の、可愛らしく明るい声が響く。

 光の加減で黒にも見えるような、紫色のショートボブヘアが特徴的な女子生徒。


 口振りからして、リブの同級生だろうか。

 そうなると、俺からしてみれば『先輩』ということになるのかな。



「おはよう」


 それに対して、先程までの仏頂面が嘘の様に、穏やかな笑顔で返すリブ。



「ちょっとリブ、この子、誰?」


 続けてもう一人の女子生徒が、俺を横目に見ながらリブに訊ねる。

 こちらはグレーの長髪をポニーテールにまとめている、少しハスキーな声色の女子生徒。

 彼女もおそらくリブの同級生だろう。



「あー。なんていうか……居候(いそうろう)

 そんな感じの子よ」


 相変わらずの穏やかな笑顔は崩さないものの、物凄く適当に返すリブ。



「ふーん」

「えー、なにそれ? 一緒に住んでるってこと?」


 リブの返事に、グレーポニテ先輩、紫ショートボブ先輩は、三者三様ならぬ、二者二様の反応を示した。



 その反応の違いだけで性格が伺えるな。

 グレーポニテ先輩は、割とどうでも良さげ。

 一方で、ニコニコと楽しげに笑う紫ショートボブ先輩は、俺に興味津々……。

 いや、違うな。


 きっと彼女は、リブの反応を面白がっているだけ。

 彼女の笑顔には、そういう嫌らしさが含まれている。そんな気がする。


 なんてことを考えていると、そんな俺の隙をつくかのように、紫ショートボブ先輩が俺の頬をぷにっと人差し指で突いてきた。



 突然の出来事に「わっ」と飛び退いてしまう俺。

 そんな俺の様子にクスクスと笑う紫ショートボブ先輩。


「かわいー!」

「どこが可愛いのよ……行きましょ?」


 そんなやり取りに呆れた様子のリブ。

 溜息をつきながら、ツカツカと歩き、その場を去っていく。

 すると、そんなリブに付いていく行くように二人の先輩達も歩き出した。



「じゃーね、居候(いそうろう)君!」


 ニコッと微笑み、ヒラヒラと手を振りながら去って行く紫ショートボブ先輩。



 そんな彼女達の後ろ姿を、ただただ立ち尽くして見送る俺。


 ――うわぁ、三人とも脚長いなぁ。

 目を見張るほどの美少女達。()()()()()()とはこういう事を言うのかもしれない。


 それにしても、『女子の先輩』かぁ。

 からかわれただけのように思うが……悪い気はしない、かな。



 ……なんて、いつまでもこの満更でもない気持ちに浮かれている場合ではない。

 俺は昨日、制服などと一緒に届いた学園案内書を元に、担任となる先生の事務室に向かうことにした。



***



 担任の先生は、言動こそ適当で軽い印象を受けるが、優しい雰囲気の男性教諭だった。

 そんな彼の後について教室に向かう。


 最初に簡単な自己紹介をしてくれ、と先生から言われている。

 まずは名前からか。

 ……あ! 名前と言えば、今朝サーロンが何か言っていたな。



「―― 仮にもお前は狙われている身。

 お前を襲ったスライムの反応を見るに、どうやら顔は割れていないようだ。

 編入手続きを()()で出しておいてよかった!

 名乗る時はこっちで名乗れよ?」



 そうだった。

 その時、制服のポケットに乱雑にメモをねじ込まれたんだった。


 クシャッと潰れているメモを取り出してシワを伸ばすと、俺の名乗るべき偽名が書いてある。

 さて、この俺『マルヌ・スターヴィン』が名乗るべき新たな名前は――。


 『マルヌス・ターヴィン』


 ……。


 嘘だろ!?

 切るとこが違うだけじゃねーか!


 ……これ、偽名で出したんじゃなくて、編入書類の記入ミスを体よく誤魔化されてるだけじゃね?



 若干青ざめている俺の顔を見るなり「大丈夫かー?」と声をかけ、足を止める先生。


 見れば、既に目の前には、大きな扉。

 どうやら教室に着いたらしい。


 そして、俺が反応する間も無く、先生は扉に手をかけ押し開く。

 どうやら、『大丈夫か』などと聞くだけ聞いておいて、俺の返事を待つ事はしないようだ。



 ガチャリと大きな音と共に開かれた扉。

 目の前には一本の通路。

 その通路の先には、大袈裟なくらい立派な教卓がある。

 そして、教卓を中心に円弧状に生徒たちの座席が広がっている。



 先生と俺は、部屋のど真ん中を貫くような、長い通路を真っ直ぐに進み、その先の教卓を目指す。

 実際には大したことないのだろうが、今はこの通路がとてつもなく長く感じる。

 通路の両脇からの生徒達の目線が痛い。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マルヌ・スターヴィンから、マルヌス・ターヴィンへ!( *´艸`) 自己紹介頑張れ、マルヌスくーん!(笑)
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