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『あんたまだ合格しないの?』
『結婚はいつになるんですかねぇ?』
『非正規なんて働いてるとは言わないんです。今年で合格できないなら、考えないといけないねぇ』
そんなくだらない話をうだうだされて、鬱々とした気持ちで一人暮らしの部屋へと歩く。
鬱憤を少しでも晴らそうと、SNSを開いて長文を投稿するのがここ数年の習慣だ。
【好きで非正規しているわけでも無いのに、非正規全否定の教職両親は何なんだよ。将来の社会を形成する人間を育てる教員が働き方の否定とか政治批判じゃん】
【そもそも教員だって非正規の講師が担任をして正規の連中は療休だ産休だで給料を働かずして受け取ってる連中ばかり。】
【そんな世の中を作って来た現政治家や元政治家は財産全て没収されて然るべきでは無いだろうか?】
そんなどうしようもない不満をSNS上でぶちまける事でしか己を保てない弱い自分に嫌気を感じつつ我が家に到着したのである。
「爆破してぇとか呟いたら捕まんだろうなぁ」
言論の自由と社会秩序の天秤は難しいと考えながら煙草を吸うためベランダへと進む
築40年を超えるボロアパートじゃなければ、安月給で都内へのアクセスのいいところは住めないのはダメだなぁと手をかけた時、
経年劣化したベランダの柵は限界を迎え、俺の体は宙を舞ったのだ。