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02悪役令嬢の兄、乱心する

殿下と学友でもあるエドワード・リンスレットお兄様はそれはそれは私のことを大切にしてくれている。


リンスレット公爵家の後継として立派にお父様のお手伝いをされているし、容姿も整っていて周囲からの評判も良い。たまに不思議な言葉を口にすることもあるけれど、とにかく優秀で穏やかな性格のお兄様は私の自慢だ。


そんなお兄様がある日突然豹変したのだ。


「もう待てない!時間がない!」


サロンで寛いでいた私と両親に向かってお兄様が叫んだ。声を荒げるお兄様を私はたぶん初めて見た。


「お兄様…どうなさったんですか?」

「エド…そんなに大きな声が出せたのねぇ…。」

「エドワード…レディの前で大きな声を出してはいけないよ。」


私たちがのんびりとした態度でいるとさらにお兄様は言葉を強くした。


「3人とも楽観的過ぎる!このままだとイヴが…イヴが…破滅エンドに向かってしまうんだぞ!」

「破滅…何って?」


私たちは揃って首をかしげる。お兄様は時々こうしてよくわからない単語を口にする。


「イヴがとんでもなく不幸になるってことだよ!それはもう世界の終わりみたいなレベルの!」


慣れない大声を出したせいかお兄様の呼吸がずいぶんと乱れている。それを整える間もなくお兄様は続けた。


「一生言わないつもりだったけど、もうなりふり構っていられない。実は僕、転生者なんだ。しかもこの世界とは違う異世界からの。」


お兄様の言葉に私たちは再び首をかしげる。

しばらくしてお母様がよいしょと立ち上がり、お兄様の頬に手を添えた。


「エドはちょっと疲れているのかしら?あなた、あんまりエドに無理をさせないでくださいな。」


少し責めるような口調でお父様に言う。一方のお父様は自身の顎に手をやりながら頷く。


「たしかに最近忙しかったからな。エドワード明日はゆっくり休むといい。」


だが、お兄様はお母様の手を丁寧に払い(お兄様はいつだって紳士なのだ)、私たちの目を順番にしっかりと見つめた。


「信じてもらえないのはわかっている。だけど、聞いてほしい。僕は前世の記憶があるんだ。イヴが殿下の婚約者に選ばれたとき、その記憶が蘇ったんだ。僕は前世であまりいい生活をしてなかった。両親はいなくて施設で育ったし、恋人も友人もいなかった。仕事もあまり長続きしなかったし、本当にしょうもない人生を送ってたと思う。楽しみといえばゲームをすることくらいで、ゲームも元々はアクションゲームとかRPGとかやってたんだよ?だけどやりつくしちゃって。だって暇だったから。それでついそのゲームに手を出しちゃって・・・。最初はどんなもんかちょっと見てやるか、くらいの気持ちだったんだけど、意外とストーリーがしっかりしててバトルシーンとかも凝ってたし、あれは男がやってても全然不思議じゃないやつだったと思うんだ。だから別に僕が変な趣味してるとか攻略対象にマジで入れ込んでたとかそういうわけじゃなくて、一般論として・・・」


「ちょ、ちょっと待ちなさいエドワード!早口だし単語がところどころわからない。どうしたんだ、いったい。」


急に息継ぎ無しにしゃべりだしたお兄様にお父様が待ったをかける。



我に返ったお兄様はコホンと咳ばらいをし、再び話し始めた。



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