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12悪役令嬢一家、作戦の最終確認をする

帰還式典当日。


私が家族と共に会場である城内のホールに到着したときにはすでにほぼ全ての席が埋まっていた。式典では家の序列によって座る席が決まっており、リンスレット公爵家は王族から最も近い席を用意されていた。

ちなみに今日私が着ているドレスはなぜか数日前に殿下から届けられたものだ。もともと用意していたドレスを着るつもりだったのだが、お兄様にこれを着るようにと強く指示された。淡い水色から濃い青へグラデーションしているドレスも、繊細なデザインの靴も、精巧なつくりのジュエリーもすべて殿下からのプレゼントである。サイズが驚くほどピッタリなのが恐ろしい。私の正確なサイズをどうやって知ったのだろうか。


しばらくするとすべての出席者が揃い、王族が登場された。礼を解き、着席するときにちらりと見た殿下のタイは私のドレスと同じ色でグラデーションになっていた。・・・お揃いだったらしい。


式典は粛々と進み、帰還した隊士たちへの勲章授与や陛下からのお言葉を頂戴しつつがなく終了した。


そして、ついにガーデンパーティーへと移る。パーティー会場へ移動しながら私は隣りを歩くお兄様に尋ねた。


「お兄様、例の男爵令嬢は出席されているのかしら?」

「それは大丈夫。さっきこっそり軍の人に確認してきた。欠席者はいないみたいだから出席してる。」

「よかった・・・。でもあれだけギリギリの日程での招待だったのによく出席してくださったわね・・・。」


私がぽつりとつぶやくと少し前を歩いていたお母様が振り返った。


「欠席なんてできるはずないでしょう?招待状は王家の紋章入りだし、届けたのはアヴァンス伯爵家の遣いの者よ。男爵家という立場なら這ってでも出席するわね。」

「男爵家じゃなくても出席するしかないさ。王家からの招待を断れる立場の者はこの国には存在しない。」


お父様も苦笑する。お父様にはこの作戦を決めたその夜にすでに説明はしてある。


「それにしても・・・クレア男爵って不思議な方ね。自分の娘が世にも珍しい固有魔法を持っていたらすぐにでも王家に報告しようと思うでしょうに・・・。そうすればやり方によってはのし上がることができるわけだし・・・。」

「おそらく・・・時間と機会がなかったんだと思う。」


お母様の疑問にお兄様が小声で答える。周囲とは距離もあるので私たちの会話が聞こえているとは思えないが、念のための配慮だろう。


「ゲームの設定では、クレア男爵は爵位を継ぐ前に使用人の恋人がいた。だけど父親に反対され、その恋人は屋敷を追い出される。その後、男爵は別の女性と結婚したが子宝には恵まれず、夫人は病で他界する。男爵は再婚もせずにかつての恋人を探し続け、ついに見つけ出したがそのときにはもう恋人は亡くなっており、恋人によく似た娘だけが残されていた。男爵は魔力を持った彼女が自分の娘であることを確信し、彼女を男爵家へ迎え入れる。それが、彼女が16歳を迎える3か月前だ。つまりちょうど今くらい。」

「エドワードの話を聞いて調べてみたら、たしかに男爵は少し前に庶子を迎え入れたようだった。おそらく王家に娘の稀有な固有魔法について報告したくてたまらなかっただろうが、伝手もなくどうしたものかと思っていたことだろう。この式典の招待状はきっと彼らからしてみれば神からの贈り物だっただろうな。」


お父様は作戦を聞いてすぐにクレア男爵家を秘密裏に調べ上げたようだ。お兄様と同じくらい彼らの内情に詳しそうだ。


「だとしたら、男爵はこのガーデンパーティーでなんとしても治癒魔法のことを陛下の耳に入れたいはずね・・・。」

「我々しては是非とも協力したいところだが・・・残念ながらリンスレット公爵家はクレア男爵家と一切交流がない。それなのに急に私が陛下に男爵を紹介するわけにはいかない。」

「知りもしない方を紹介するのは無理があるものね。男爵が自力で陛下と顔つなぎができればいいけれど・・・序列を考えると難しい可能性が高いわ。」

「そこでイヴの出番だ。」


3人の視線が私に向けられる。私は大きく頷いた。


「陛下と王妃はおそらく設けられた席から移動されないから代わりに殿下が挨拶に回られる。イヴは婚約者として殿下と行動ができるから、さりげなく男爵と令嬢に殿下を引き合わせる。きっと男爵は自ら治癒魔法のことを殿下に言うだろうけど万が一なかなか言い出さないとうならイヴからその話題に触れてあげて。」

「わかったわ。」

「殿下の耳に入れば陛下の耳にもすぐ入る。まあ、殿下は治癒魔法なんてなくてもきっと一目で彼女に恋をするはずだからイヴはそのあとは適当に引き上げてくればいいよ。」


とにかく殿下が彼女と出会ってさえくれれば9割方作戦は成功だ。招待客も普段の舞踏会に比べれば少ないので彼女たちと接触するのはそう難しい話でもない。


「ここは僕たちの未来を左右する分岐点だ。・・・リンスレット公爵家、心を一つに頑張ろう。」


私たちは互いの目を見てしっかりと頷き合う。そして作戦の舞台へと足を踏み入れたのだった。

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