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四話 MMOでの生活、朝編。部屋に一人でいるとどうしても独り言が増える。あると思います

更新しますー

 MMOにログインした。


 スポーン地点は教会の中に用意された俺専用の部屋である。


 かなり広めで、豪華な内装も相まってホテルのスイートルームみたい。ベッドとかふっかふかだし。備え付けの浴室まである。


 時刻はまだ夜。部屋の中は薄暗く、俺は壁にかけられているランタンに火を灯した。……まだ暗いけど、十分だな。


 この世界では現実の八時間で一日が経過する。今は二日目の深夜って感じだな。あと一時間くらいで朝になって、二時間後には教会に人が集まってくるだろう。


 それまでの間、外に出ることはできないけど、やることはある。



「…………取り出しますはペンデュラム」



 アイテム欄から俺が持っている唯一の武器、《初心の》ペンデュラムを取り出し、装備する。


 ペンデュラムは細い鎖の先に蒼いひし形の宝石が付いていて、武器? って感じの見た目をしている。


 調べてみたところ、現実では武器として扱われておらず、ただのダウンジング器具みたいだけど。


 ダウンジング器具でどうやって戦えと? と思ったら、魔力を送ることで鎖を自由に操ることが出来、先端の宝石をぶつけて攻撃したりするらしい。操作にはMPを消費するとか。


 後は鎖を使った捕縛技とか、宝石を触れさせることで魔力を受け渡したりできるらしい。


 まぁ、まだ戦闘なんぞ一回もしてないから、その性能を発揮したことはないんですけどね。


 じゃあ、なんでペンデュラムを取り出したかというと……。



「…………えい、ほれ、せやっ」



 鎖の隅々まで魔力を行き渡らせ、ペンデュラムを動かす。青い宝石が仄かな光を放ちながら部屋を舞う。


 薄暗い空間に青い線が引かれる様子は中々に綺麗だった。


 して、ここまでは準備運動。本番はここからだぜ?


 

「…………お絵描きタイム」



 それっ、と、ペンデュラムに送り込む魔力を多くし、飛翔速度を上げる。


 ほんのりと光っているだけだった先端の宝石が強く光る。それだけじゃなく、光が空間に残る時間が多くなった。


 俺は、宙に残る光の線を利用して、簡略化された絵を描いていく。



「…………ちょいさー」



 動物、乗り物、植物、ファンタジーならではの魔物から、某国民的アニメの青狸まで。壁のランプを消せば、真っ暗になった部屋に光のアートがいくつも浮かび上がる。



「…………うん、なかなかの出来だ」



 一筆書きしかできないのでそれなりに難易度が高いが、それでいい。難しくないと、訓練にならないからな。


 この一見すると遊んでいるようにしか見えない行為は、一応このペンデュラムを使いこなすための訓練なのだ。こうしてるとスキルの経験値も入ってくるし。


 最初は唯の暇つぶし。信者の人が来ない間の時間つぶしにやっていたことだが、これがなかなかに面白い。現実では絶対に出来ないことをやっている、という興奮がある。



「…………おっと、MP切れか」



 浮いていたペンデュラムが急に光を失い、ポトリと落ちた。視界の端に浮かぶMPバーは真っ黒になっていた。


 ペンデュラムを仕舞ってベッドに腰かける。窓を見るとすでに朝日が昇っていた。そろそろ教会が開くなー。


 残りの時間で、ステータスチェックでもしておこうかな? 


 てなわけで、ステータスオープン。



====================


名前:アインス・トゥルーカーム 性別:無性

種族:《大天使Lv1》 職業:《巫女Lv1》


スキル:『武器術:ペンデュラムLv5』『魔法:強化Lv17』『魔法:弱化Lv1』『魔法:回復Lv25』『庇護体質』

種族スキル:『飛行Ⅱ』『加護(下級中位)』『信仰』『天令』


称号:【信仰対象】【人気者】【教会の天使様】【平和主義者】【ひきこもり】【最速進化】


装備:『武器:《初心の》ペンデュラム』『頭:《慈愛の》サークレット』『首:《慈愛の》ロザリオ』『手:《慈愛の》ブレスレット』『胴体:《慈愛の》ヒマティオン』『腰:《慈愛の》ベルト』『足:《慈愛の》ミュール』『アクセサリー:《慈愛の》リング』


セットボーナス:《慈愛》

        三箇所:支援系魔法効果上昇・中

        四箇所:治癒系魔法効果上昇・中

        五箇所:回復効果上昇・中

        六箇所:好感度補正・中

        七箇所:スキル《MP自動回復》 与ダメージ減少


====================



 随分と様変わりしたなぁ、というのが感想。いろいろ増えてるし、装備も変わった。


 今の俺は、質素なシャツとズボンではなく、ギリシア神話の神々が着ている布一枚のワンピースと上着ヒマティオンというらしいを身に着けている。色はワンピースが白で上着が赤に複雑な刺繡がされている感じだ。これにより天使度がぐっと上がっている。


 額には白銀のサークレットが着いており、首には純銀の十字架がぶら下がっている。手首には細い黒銀のブレスレットが。もっと腕にシルバー巻くとかサ!


 足は紐が交差したサンダル……『ローマの休日』のアレを履いている。右手の中指には金の指輪が嵌っていた。なんか嵌める指によって意味が違うらしいな? 調べてみたところ、右手の中指は魔除け的な意味があるみたいです。


 これらを装備した時に鏡で自分の姿を見てきたけど、まんま『天使』過ぎて驚いた。


 装備のすべてに《慈愛》という特殊効果が付いているらしく、なんかいろいろと発動してるみたいだ。


 実感としては、回復魔法で信者さんたちのより大きな怪我が治せるようになったかな? くらいだな。


 ちなみにこの装備、全て貰い物である。


 『ぜひ天使様に我が工房が作り上げし至高の装備を!!』とか言ってこのセットをくれたのは、確かこの街の防具屋さんだったかな? 気前の良いおっちゃんだったよ。可愛らしい娘さんともども、よく教会に訪れている。


 そして、増えたのは称号。なんと六個もある。中にはちょっと引っかかる奴もあるが……。



【信仰対象】

 種族スキル『信仰』の効果によってレベルを5上げた者に送られる称号。『信仰』の効果が微増する。

【人気者】

 複数のNPCからの好感度が一定以上になった者に送られる称号。NPCに好かれやすくなる。

【教会の天使様】

 アーリティア聖教会で天使と呼ばれ、それに相応しい行動を取った者に送られる称号。《天使》系統の種族スキルの効果が上昇する。

【平和主義者】

 一週間の間、一度も戦闘行為をせず、他者に与えるダメージが0だった者に送られる称号。非戦闘時に全ステータスアップ(小)。

【ひきこもり】

 一週間の間、一度も外に出ていない者に送られる称号。非戦闘時かつ室内だと一部のステータスアップ(小)。

【最速進化】

 最も早く種族進化したものに送られる称号。種族経験値微増。



 内容はこんな感じ。【ひきこもり】にちょっとした不満。俺はコミュ障であって決してヒッキーではないのだ。そこを間違えないでいただきたい。


 ああ、そうそう。スキルの詳細も見ておこう。なんか若干変わってるみたいだし。



『武器術:ペンデュラム』

 ペンデュラムの扱いに関するスキル。

 ペンデュラム装備時、一部のステータスに補正(小)。

 アーツ:Lv1【ダウンジング】

『魔法:強化』

 強化魔法を覚える。

 魔法:Lv1【アタックアップ】【ガードアップ】

    Lv10【スピードアップ】【ブレインアップ】【メンタルアップ】

『魔法:弱化』

 弱化魔法を覚える。

 魔法:Lv1【アタックダウン】【ガードダウン】

『魔法:回復』

 回復魔法を覚える。

 魔法:Lv1【ヒール】

    Lv10【ヒーリング】【キュア】

    Lv20【ハイヒール】【キュアリング】

『庇護体質』

 パーティーに入っていない状態で戦闘行為を行った場合、全ステータスダウン(小)。

 パーティーに入った状態で戦闘行為を行った場合、一部のステータスアップ(小)。

『飛行Ⅱ』

 飛行できる。飛行中は高度、速度に応じたMPを消費する。

 MP消費が軽減されている。

『加護(下級中位)』

 他者に加護を授けることが出来る。加護を受けた者は何かしらいいコトが起きる。

 少し効果が上がっている。

 効果は一日。

『信仰』

 一定以上の好感度のある相手から信仰心を向けられると、それを種族経験値に変換する。

 対面している相手からしか信仰心を受け取ることが出来ない。

『天令』

 加護を授けた相手に対して一方的な思念会話を行うことが可能。また、加護を授けた相手に対する支援、回復の効果が少し上昇する。



 ……こうやって改めてみると、俺って戦闘系のスキルなんも持ってないのな。


 まぁ、別にコミュ障を克服するだけなら戦闘する必要はないからいいんだけどさ。男の子としては剣やら派手な魔法やらに憬れる気持ちがないわけじゃないんですよ。


 後は……ああ、一個おっきな変化が残ってたな。


 えー、不詳わたくし、《天使》から《大天使》に進化しました! ……まぁ、だからなんだって話なんだが。


 見た目の変化としては、ちょっと羽が大きくなったくらい。天使の羽(※ランドセルにあらず)は現状ただの飾りなので、あんまり意味はない。


 戦闘行為を一切していない俺が進化できたのは、種族スキル『信仰』とクエストの報酬経験値のおかげだ。


 積もりに積もって一週間でレベルが30まで上がり、そのまま進化しちゃいました。ええんかこれ? って思うけど、運営から何か言われたりしないし、ええんでない? 知らんけど。


 まっ、仮に怒られたとしても、その時はその時だ。気にする必要もないか。


 これでステータスチェックも終わり……おっ、誰か来たみたいだ。ノックの音が部屋に響く。これは多分……。



「天使様、いらっしゃいますでしょうか?」


 

 聞こえてきたのは、アリーゼさんの声。どうやらお勤めの時間がやってきたみたい。


 ベッドから降りて、扉に駆け寄る。かちゃり、と扉を開けば、そこにはもはや見慣れたシスターの姿。


 アリーゼさんは、見事な金髪を揺らしにこりと微笑むと、俺に向かって頭を下げる。



「おはようございます、天使様。そろそろ信者の皆さまがいらっしゃる時間です。本日もあなた様の加護をワタシどもにいただいてもよろしいでしょうか?」


「…………」



 い、何時まで経ってもこの信仰心丸出しの態度に慣れない……。圧のようなモノを感じてしまい、コミュ障は何処までも加速していく。声が出ないので、何とか頷きで意思表明。


 アリーゼさんは察しの良い人だから、それで通じてるけど……何時までもそれにあまえるわけにもいくまい。


 よしっ、今日こそ信者さんとお話をするっ!! 一言でもいいから会話のキャッチボールをするんだ!!


 心の中で決意をし、部屋を出て信者さんたちを待つ部屋に向かう。足取りは大きく、背筋は出来るだけ伸ばし、やるぞやるぞと気合を高めながら。


 尚、ここ毎日ほぼ同じよな決意をして、結局ダメだったことは頭から追い出した。


 ネガティブに考えていたら、出来るものも出来なくなってしまうからなっ! ポジティブシンキングが重要、実際重要。古事記にもそう書いてある。

読んでくれた方、ありがとうございます。

明日も更新できるよう頑張ります!!

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