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九話 世紀の大脱出劇開幕! 美少女怪盗VS欲深き聖女②

ちょっと遅れた……!!

とりあえず、更新です!

side:アリーゼ



 この音は……!? まずい、あちらは天使の部屋がある方向……!!


 くっ、この紙切れに書かれていることは、嘘でもなんでもないと言うことですか……!!


 素早く装備を整え、炸裂音がした方へ向かいます。


 途中で音に反応して宿舎から出てきた神官や、神官騎士と合流し、天使を狙う不届き者が出たと説明しました。


 すると、神官も神官騎士も燃えるような怒りを露にしました。口々に許せないと叫んでいます。


 彼らの天使への信仰心は本物。不届き者などすぐに捕まえてくださることでしょう。


 まずは、天使の部屋に……!


 しかし、そこはもうもぬけの殻でした。天使の姿は何処にもありません。


 くっ……完全に出遅れてしまいましたか……。



「あぁ!! て、天使様がいません!!」


「な、なんだと!? 本当に天使様に手を出そうとする者がいるなんて……!!」


「くっ、探せ! 何としてでも探し出せぇ!! 何としてでも天使様を取り戻すんだ!!」



 神官やシスターが周りで慌てています。……少し暴走気味ですね。天使への信仰心はワタシの想定を超えていたようです。


 まずは、彼らを落ち着かせることが先ですね。



「皆さん、少し落ち着いて……『ドゴー―――ンッ!!』」



 しかし、ワタシが声を張り上げるより先に、もう一度炸裂音が響きました。


 今度は、ここから程近い場所――教会の中庭の方向から聞こえてきます。



「ッ!! 向こうだ! 天使様をかどわした犯人は中庭にいるぞ!!!」


「天使様、今参ります!! 待っていてください!!」


「うぉおおおおおおおお!!!! 天子様をお救いするのだぁあああああああ!!!!」


「えっ、あっ、み、皆さん!?」



 しまった! 天使への信仰心が、彼女の危機という状況で完全に爆発してしまった。


 統率などどこにも無く、烏合の衆と化した彼らは中庭に駆けていきます。


 ワタシの声は……聞こえてないですね。仕方ありません、ここは彼らについていくしかないですね。



「はぁ、まったく……なんでこんなことに……」



 これもすべて、天使を盗み出すなどとふざけたことを抜かした、怪盗とやらの仕業でですね、そうに違いありません。


 すぐに捕まえて、己の行動を後悔させてやりましょう。


 中庭に出ると、神官やシスターたちが散らばって天使のことを探していました。


 ……それにしても、炸裂音がしたはずなのに、何処も壊れていませんね。爆裂の術式が刻まれた魔道具を使った訳ではない、と?


 となると、どうして怪盗とやらはあんな派手な音を立てたのでしょうか? 



「…………ッ、まさか!?」



 まずいっ! あの音が、『ここに誰かがいる』ということをワタシたちに知らせ、ここに集めることが目的だとしたら!? 


 そして、ワタシたちがまんまとここに集まった隙をついて、別のところから脱出する……くっ、やられました……!!


 怪盗とやらの狙いがワタシの推測通りなら、こうしている間にも怪盗はこの場を離れているでしょう。時間が経てば経つほど、追跡は困難になる……!


 こ、こうしてはいられません。何とか、興奮しきった神官やシスター、神官騎士を正気に戻し、怪盗の目論見を説明しなければ……! 


 何か、何かいい案は……!



「あっ、あそこにっ!! 聖堂の屋根の上に、誰かがいますッ!!」



 こ、今度はなんですか!? 矢継ぎ早にいろいろ起き過ぎなんですよぉ!! こっちはまだ考え事をしてるんですからッ!! 


 声の方を見ると、一人のシスターが叫び、教会の中でもひときわ大きな建物――聖堂の屋根を指差していました。


 そこには、夜空に浮かぶ月を背に、こちらを見下ろす人影がありました。


 遠目よく見えませんが、顔に仮面をつけ、バタバタとはためく外套のようなモノを纏っています。


 その人影は、両手で何かを――具体的には、人間が一人、すっぽりとくるまっていそうな布を抱えています。


 中に『何か』が入っているのは明白でした。こいつが……!!


 

『――――おや、どうやら見つかってしまったみたいだね』



 その人影――怪盗が、ワタシたちに言葉を投げかけました。何かの魔道具を使っているのか、老若男女の判別がつかない、無機質な声音をしていました。


 怪盗は芝居がかった仕草でぺこり、とこちらに頭を下げました。なんでしょう、所作は丁寧なのに、こちらを小馬鹿にしている雰囲気が感じられます。



『見つかった以上、名乗らずにいるのはボクの美学に反するのでね。自己紹介をさせてもらおう』



 頭を上げた怪盗は、ばさぁーー! と外套をはためかせ、さらに抱えていた『何か』を覆っていた布を放り投げました。


 布の中から出てきた物……いえ、『者』を見て、その場にいた神官やシスターたちが悲鳴を上げました。


 ワタシも舌打ちをしたいのを必死にこらえます。予想していたとは言え、現実となってしまったそれに、苛立ちが隠せません。


 布に覆われていたのは、どこかぐったりとした様子の天使。


 気を失っているのか……はたまた、あの怪盗に何かされたのか。



「「「「「て、天使様ぁああああああああああああああああああああ!!!?」」」」」



 この場にいる神官やシスターたちの悲鳴を聞き、やられた、ともう一度思いました。


 ワタシの推測は、『この場にワタシたちを集める』という部分以外は間違っていたようです。


 怪盗の目的は、ぐったりとした天使をワタシたちに見せることで、冷静な思考を奪うことでしょう。


 信仰対象として敬っていた相手のそんな姿を見せられて、平然としていられるはずがありません。


 信仰心が高い神官やシスター、そして日頃から天使をお守りすると息巻いていた神官騎士には、効果があり過ぎるほど。


 怪盗のあの一手で、この場にいる人員はほとんど使い物にならなくなってしまいました。


 くっ……!! ワタシがここまで手玉に取られるなんてッ!! とことんワタシの邪魔をしてくれますね、あの怪盗は……!!!


 

『ボクの名はキャロル! 怪盗キャロルだ!! 今宵、この教会に不当に隠されし【秘宝】を頂戴しに参ったッ!! そして――――その宝は、すでにこの手の中にあるッ!!』



 怪盗は見せびらかすように天使の身体を掲げると、挑発的に微笑みました。


 天使を物のように扱う態度に、教会所属の面々は激しい怒りで我を忘れそうになっています……。


 ああ、もうっ、ここからどうやって彼らの統率を取れば……!!



『では、ボクはこのあたりで失礼するよ。……ああ、そうそう。君たちがボクを追うのは自由だが……』



 神官騎士が辛抱できないとでも言うように聖堂に押し掛けたタイミングで、怪盗は言葉と共に『何か』を足元に落としました。


 すると、ボフンッ!! と聖堂の屋根に煙幕が噴き出て、怪盗と天使の姿を隠してしまいました。




『――――そう易々と捕まると思わないことだ。はーっはっはっはっはっはっはっ!!』




 そんな声と高笑いだけが響き、煙幕が風に散った時には……そこにはもう、怪盗も天使も、いなかった。


 逃がした……!? い、いえ、まだあきらめるには早い!


 ここまで来て、ワタシの野望が潰えるなど、あってはならないッ!!


 絶対に……絶対に怪盗を捕まえますッ!!


 そのために、まずは……。



「て、天使様が……あぁ、あああああ……!!」


「くそっ、今すぐに追いかけて……!!」


「ああ、神よ……無力な私をお許しください」



 絶望していたり、勝手に行動しようとしたり、ただ祈ることした出来ないでいる彼らに向かって、ワタシはあらんかぎりの声を張り上げました。



「皆さんッ!!! 落ち着いてくださいッ!!!!!」


「「「「「ッッ!!!!」」」」」



 その場の全員の視線がワタシに向いたのを確認してから、言葉を続ける。



「卑劣な存在により、天使様が攫われてしまいました……。ワタシたちは彼女を守らねばならない立場にいながら、見ていることしか出来なかった。……悔しいと、思いませんか?」


「「「「「…………」」」」」


「ワタシは、悔しいですッ!! 聖女として天使様に一番近い場所で接していたワタシは、彼女の危機に何もできなかった!! それが……それが…………悔しくて悔しくて、仕方がない――ッ!!!」



 無言でこちらを見つめる彼らに悲哀の感情を叩き付けるように叫ぶ。


 その言葉で、徐々に彼らの瞳に力が戻っていくのを確認しつつ、さらに畳みかけるッ!!!



「ワタシは戦います!! 天使様を救うために!! あの怪盗を名乗る不届き者をひっ捕らえ、己のしでかした罪の重さを分からせるために!!! ――――皆さんは、どうしますかッ!!?」


「「「「「――――戦うに、決まっていますッ!! 聖女様ぁ!!!!」」」」」



 異口同音に叫びを上げた彼らに、ワタシは大きく頷きを返しました。

 

 ……これで、準備が整いました。


 動き出した神官やシスター、神官騎士たちを後目に、ワタシは聖堂の屋根を見つめて拳を握りしめました。


 ――――怪盗キャロルとやら、待っていなさい。


 ワタシの野望を邪魔したことを、死ぬほど後悔させてやりますッ……!!



sideout:アリーゼ

読んでくれてありがとうございます!!

次回かその次辺りで決着だと思います。


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